1999年度北陸建築文化賞受賞(業績)04

 旧森田銀行本店の保存復元

 坂本憲男・高嶋猛 (有)赤土善蔵アトリエ
 
村中建設

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概要
1.建物の保存
旧森田銀行本店は、大正9年(1920)に完成した鉄筋コンクリート造2階建の近代建築である。
設計者は当時、横浜市の営繕組織の中心であった山田七五郎である。近年まで福井銀行三国本町支店の倉庫として使用されていたが、平成5年8月に福井銀行から取り壊しの連絡が三国町にあった。直ちに保存に向けての検討が開始され、同年11月には保存が決定された。この間の経緯については、添付の「旧森田銀行本店復元保存工事(以下「報告書」とする)」の第2章で詳述している。
2.保存・復元工事
保存決定後、詳細な調査が高嶋・赤土善蔵アトリエで行われた。平成7年9月〜9年2月に外部復元保存工事、同10年9月〜11年3月に内部復元保存工事が行われ、保存決定から5年半後に新築当初に近い姿で甦った。この間、平成9年12月に国の「有形登録文化財」に登録された。

自薦理由
1.保存までの経緯と保存の意義
この銀行の保存が決定した頃、県内の貴重な近代建築が相次いで取り壊された。その中で取り壊しの危機に直面したにも拘わらず保存された主な理由は以下によると思われる。
(1)日本建築学会の建築歴史・意匠委員会、近代建築小委員会の近代建築の  調査により、昭和57年に全国の重要近代建築620件の一つとして福井銀行、三国町に通知したこと。
これによって、所有者及び三国町は貴重な建築であるという意識を持ったこと。
(2)その後、(1)の調査・選定に携わった高嶋が、建物の調査を行う一方、県内で貴重な近代建築であることを、郷土史、新聞、講演会(三国町など)で機会あるごとに言及し、三国町文化財保護委員会でもその認識を形成していたこと。
(3)そのため、福井銀行は取り壊しを三国町に通知することになったこと。
(4)また、その場合でも通知を受けた三国町や、有志による対策が迅速に行われたこと。
(5)三国町が保存に積極的であったこと。

2.保存・復元工事の実施と活用
(1)三国町の費用負担の理解があり、高嶋・赤土善蔵アトリエの設計監理者も研究・設計に精力的かつ充分その能力を発揮し、また施工者も町や設計者に応える良い施工をしたこと。
(2)当時の素晴らしい技術、技術者と成果を後世伝えることができたこと。
(3)「報告書」第2章第2節で記載したように、「旧森田銀行保存・活用等検討委員会」が今後の活用について真剣に検討し、竣工後の運営にも精力的に取り組み、現在も生き生きと利用されていること。