2000年度北陸建築文化賞受賞(作品)01

 「 Ig 」

 長田直之(ICU)

   
   
 50年前の既存住宅の一部分を改築することで、全体の機能を再構築した計画である。
現代美術作家のアトリエと生活のための場の付加という行為を通して、それまでは積極的な関係が結ばれていなかった個々の建物を、内部あるいは外部空間の配置によって、連続性と断絶性が同時に存在する状態を作り出している。
そのような効果は、開口部の配置や扉の開閉、求心的な空間と回遊的な空間による構成などによって実現している。農道によって分断された二つの敷地が、「縁側」の様な空間によってつながれている点など、単なる増築や新築という範疇を超え、生活と芸術の場としての質を獲得している。
さらに、プライベートな住宅ながら、このアトリエでは数々の展覧会が行われ、既存の公共性とは異なる文化的な広がりを感じさせる建築となりつつある。
20世紀に主要な問題とされてきた、「生活と芸術」という問題へのひとつの試みが、この北陸において実現されたことは意義深いと考えている。
31回中部建築賞住宅部門入賞