意見公募

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地域性、多様性を生かしたアカデミックスタンダード

MessageType: 意見
Username: 絵内正道
UserAff: 北海道大学大学院工学研究科
UserEmail: enai@eng.hokudai.ac.jp
日付: 99/07/27
時刻: 12:07:43
リモート名: 133.87.160.138

Comment

1.室温をアカデミックスタンダードに取上げるとすれば 室温をアカデミックスタンダードに取上げるとすれば、温感を専門とする研究分野では、至適条件として、居住者の活動状態に合わせて各室の温湿度・放射・気流の所要条件を提案するかも知れない。しかし、住宅の断熱・気密性能が満たされていたとしても、部分・間欠暖房を生活常識にしていては、結露害やカビ害に遭うことも珍しくなく、至適環境の入手は至難の業となる。室温が建物性能と建物を取り巻く地域条件・生活意識と建築設備の結果の反映したものであるならば、熱的至適条件の提示よりも諸室が結露しない保温性能(例えば、窓面が結露しない断熱と暖房による地域の生活意識に密着した基礎室温)を指し示すようなアカデミックスタンダードでありたい。 2.環境条件の多様性と希求される性能の多様性 我が国は北緯45度から20度にまたがる気候的に多様性を有する大国である。効率を求める余りに一律の尺度で拘束してはならない。アカデミックスタンダードはその地域毎の環境条件や希求される性能の多様性を否定することなく、各々の地域で培った知恵と工夫を採り入れた建築文化の創造に寄与するものでありたい。 3.地域性を生かす日本建築学会支部活動の活性化 昨今の情報化社会を鑑みれば、支部活動の位置付けは情報伝達機能を果たす端末ではない。むしろ、地域に開かれた、独自の価値観を共有する活動の組織体と考えたい。アカデミックスタンダードとしての整合性は必要であるが、その規準は支部毎にその地域の価値意識の醸成を助けるものでなければならない。その取り組みは支部会員の総力活用と活性化の契機になる。 4.価値意識の普及こそ性能規定の礎となる アカデミックスタンダードは本来経時的に変更されるべき性質のものであり、提示された数値そのものに価値がある訳ではない。努力目標値、推奨値、最低規準値という理念の異なった性能規定を通じ、これからの地球環境時代の生活や文化に働きかけることに意義を見出したい。先にも触れたが、生活空間には基礎室温が欠かせないという意識改革こそアカデミックスタンダードの役割であり、その普及が性能規定の礎となるのではなかろうか。


最終更新日: 2000/07/21