火災に関する素朴な疑問 Q&A

質問一覧

 

Q1:エレベータ、エスカレーターは避難に使えますか?

 

Q2:建物からの避難計画を考える際に、特に注意すべき要因は何ですか?

 

Q3:現状の日本の耐火設計では、地震などにより構造体が損傷していない状態で、火災に耐えうる架構にするための部材や被覆を計画しますが、地震などによる損傷を想定した耐火設計手法はありますか?

 

 

質問および回答

 

Q1:
エレベータ、エスカレーターは避難に使えますか?

 

A1:
火災時におけるエレベータ、エスカレーターの利用は、例えば、煙の流入・火災階に停止する恐れなどが懸念され、必ずしも安全性が約束されないため、基本的には避難経路として使用することはできません。 その一方で、エレベータによる避難は、高齢者・車いす利用者などのいわゆる災害弱者が、高層化した建築物から避難する方法としての期待が高まっています。

 
そのような背景のもと、火災時のエレベータを利用した避難について日本建築学会で検討が行われ、同様に、国交省、総務省消防庁ならびに日本建築設備・昇降機センターにおいても検討委員会が設置されました。検討結果は、例えば「火災時のエレベータを利用した避難計画指針(案)」(日本建築学会、2009)としてまとめられています。また、201310月には、東京消防庁より「高層建築物における歩行困難者等にかかる避難安全対策」が策定され、消防隊が到着するまでの間、歩行困難者等の避難誘導に非常用エレベータを活用するための基準が示されました。このような流れの中、近年、病院
1)や分譲マンション2)等で安全対策を施した非常用エレベータを避難誘導に活用する計画が実現しています。 エスカレーターによる避難は、地下駅について「解説 鉄道に関する技術基準(土木編) (別冊)地下駅等の火災対策基準・同解説」(国土交通省鉄道局 監修)で、運転停止時の踏段下降防止の措置が講じられていることを前提に避難経路として見込むことが許容されています。

1)
野竹宏彰、「順天堂醫院B棟高層棟の避難安全計画の概要」、建築防災, pp2-7, 2014.10
2)
大知啓介、「一時避難エリアの活用により歩行困難者等の避難安全性を高めた超高層分譲住宅」、建築と社会、pp422016.2

 

Q2:
建物からの避難計画を考える際に、特に注意すべき要因は何ですか?

 

A2:
避難計画において特に配慮すべき点を、以下に示します。
 
・出口に至る通路が2つ以上、偏りなく設置されているか。(一方が火災で塞がれていても、他方から避難できる)
 
・避難経路上のボトルネックや段差への配慮ができているか。(過度の滞留は、事故や煙に曝される危険性を避ける。)
 
・滞留スペースの不足はないか。(滞留の間に煙等に曝されないようにする。)
 
・避難経路は単純明快か。(避難経路を熟知していなくても避難できる。)
 
・避難経路において煙や放射熱に曝されないための配慮ができている。
 
・見通しの悪い空間構成を避ける(火災覚知の遅れを避ける。)
 
・在館者数、特性に見合った附室や階段の容量となっているか。(滞留解消の遅れを避ける。)
 
・災害弱者がいる場合には、一時待機場所の整備、介助や誘導方法の整備等に配慮した計画となっているか。
  これらの条件は、個々の建物特性により異なります。建物特性をよく考慮して適切な避難ルートを計画しましょう

 

Q3:
現状の日本の耐火設計では、地震などにより構造体が損傷していない状態で、火災に耐えうる架構にするための部材や被覆を計画しますが、地震などによる損傷を想定した耐火設計手法はありますか?

 

A3:
近年は地震などの被災後の耐火性能に関する研究も進められていますが、まだ十分に設計手法は確立されていません。今後、さらに研究が進めば将来的には反映される可能性もあります。

 
地震などによる火災の事例としては、阪神淡路大震災のとき地震後3日間に火災が多発したといったケースや、東日本大震災のとき地震後火災だけでなく津波の影響による火災も発生したケースがあります。また、構造体に損傷がない場合でも、耐火被覆材や防火区画壁などが損傷するケースもあります。地震などの被災後に火災が起きることを想定して耐火設計をすることは理想的でありますが、そのような要求は法律等では求められていないのが現状です。

 

 

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