これまでのシンポジウムなど

2000年度〜



 シンポジウム:建築保存に対する性能要求 (2010年2月20日)
 シンポジウム:建築保存と現存不適格 (2007年11月30日)
 見学会:旧元町小学校 (2007年9月14日)
 2006 年度日本建築学会大会 建築歴史・意匠部門 研究協議会
-記録-10年経った登録文化財:文化継承のために建築学会の果たすべき役割:「討論」記録[PDF] (2006年9月8日)
-資料-2006研究協議会(歴史意匠)資料編抜刷[PDF]
 公開勉強会:建築史からみた「コンバージョン」−近代建築の保存・再生の事例から− (2006年3月11日)
 見学会:国立科学博物館本館改修工事 (2005年8月26日)
 シンポジウム:国際文化会館の保存と再生にむけた取組みをどう活かすか (2005年3月5日)
 シンポジウム:関東における歴史的建築リストの構築と発展 (2003年12月13日)
 シンポジウム:赤レンガの東京駅保存―どう残すのか、何を残すのか (2002年3月9日)
 見学会:東京大学生産技術研究所 (2001年8月18日)
 シンポジウム:歴史的建造物の保存の技術 (2001年3月7日)
 シンポジウム:インターネットによるデータベース化−文化財建造物リストの作成と公開をめぐって (2000年7月25日)
 見学会:旧小笠原邸 (2000年6月15日)

12.07.07 Updated


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建築保存に対する性能要求

2010年2月20日(金)13:30-17:00
於:建築会館201・202会議室
参加者:50名
<内容>

1.趣題説明:山崎鯛介(千葉工業大・関東支部歴史意匠専門員会主査)

 近年、建築保存の機運は高まってきているが、その性能にはより具体的な提案が求められている。その多くは、建物の安全性・公共性に関わる問題である。わが国では、これまでこうした問題を個別に対応してきたが、諸外国には制度を含めて先進的な事例がある。本シンポジウムでは、現在の建築保存の問題を整理するとともに、諸外国の例を見ながら、わが国の建築保存に対する性能要求を展望する。



2.主題解説
1)保険・性能評価と保存 欧米各国の建築保存を補完するシステムについて
大橋竜太(東京家政学院大)
 文化財保護を補完するシステムについて、イギリスの火災保険制度、フランスの建築物の安全管理システム、ドイツの行政による財政支援制度、アメリカの税制優遇などについて紹介し、諸外国のように関係機関が状況に応じて互いに機能し、建物の情報を整理し、それぞれの立場からアドバイスできるシステムを構築することが重要であると報告した。

2)消防計画と保存 文化財における消防計画の現状と課題
後藤治(工学院大)
 現行の消防法は、人命、延焼防止が目的で、火災時の危険度が高い伝統的な木造文化財特有の燃え方を想定していない。また、設備の設置に重点が置かれ、備えることで安心している。今後は、設備の使用者と使用方法というソフト面での対処と、各々が資産を守るのだという共通の目的を持って、効率的な取り組みが早急に必要であることを報告した。

3)地域防災と保存 地理空間情報を活用した藤野町における考察
稲垣景子(横浜国立大)
 藤野町を例に、地理空間情報を利用して、歴史的建築物、町並みの保全を検討した結果、道路が細く消防車で渋滞が発生することや、消防車が到達できない場所が多いことがわかった。消防と文化財を繋いでいくには、消防団組織が地域の伝統文化継承の担い手を兼ねている点に注目すべき事、歴史的資産の見学会を通じて地域の人たちに地域資産価値とその防災意識の啓蒙を行うべき事、来訪者を防災活動の支援者に組み込む工夫が必要なこと、軽ポンプの設置や自然水利の利用の工夫などが必要で、それを進めることが地域づくりと防災力向上に有効であることを指摘した。

4)耐震改修促進と保存 奈良井の耐震性能と地震対策
腰原幹雄(東京大学)
 奈良井を例に、構造・耐震性能など地震防災計画の基礎データから地震対策の基礎資料の作成について報告した。建築基準法は、最低基準に過ぎず、性能のための構造分類が必要であること、個別でなく街区で安全確保する方法があること、構造的に安全な壊れ方が重要であるなど、地域資産の個性を地域で検討して行くことの必要性を指摘した。

5)バリアフリーと保存 近年の事例を通して
上野勝久(東京芸大)
 重要文化財はハートビル法、バリアフリー新法の適用は除外されるが、活用の実態や社会的な役割を鑑みればバリアフリー対策が必要な場合もある。また、国登録有形文化財では、法律の適用が求められる。設置の際の問題は、多くの場合、設置することではなく、設置時に建物がどのような破損をするかが議論となることを指摘した。

質疑応答
 質疑応答では、イギリスにおける火災保険制度と焼失後の再現の施工精度の問題、ヨーロッパにおける復元の考え方、日本における行政と建築士と住民による地域間の連携の問題、地域の建物や災害時の手助けを行う地域の工務店との連携の問題が議論された。さらに、本会関東支部からも保存要望書(2010年2月2日付)が出されている東京都中央区の震災復興小学校の問題についても議論が交わされた。


建築保存と既存不適格
2007年11月30日(金)15:00-18:00
於:建築会館会議室302および303
参加者:52名
<内容>
1.趣題説明:後藤治(工学院大学)

 建築物に対する性能の要求は、年々高まっている。建築物に対する法律や法的な基準は、この性能要求の高まりに応じて改正される。 こうした改正が行われるごとに、それより前に建てられた建築物は法に適合しない、いわゆる「既存不適格」建築物となる。 歴史的建築物は建築基準法の適用除外措置がある一部のものを除くと、そのほとんどが既存不適格である。 また、話題を呼んだ比較的に新しい建築物でも既存不適格であったりその候補であったりすることも多い。 それらを保存または長期に利用し、将来に向けて継承していくためには、法規が求める性能要求を満たす必要がある。 近現代建築のように不特定多数が利用するものについては特にそれが求められる。 しかし、それを実際に行うことは現行法規のままでは相当に困難を伴うことが多い。 本シンポジウムでは、近年の建築基準法や消防法などの関連法令の改正同行、既存不適格を適法化させた近年の実例、 海外における既存不適格建築物の扱い等について情報交換を行い、現在及び将来の課題と展望を行いたい。

2.主題解説
1)近代の歴史的建造物の内部空間保存・活用のための防災計画手法の可能性
井田敦之(早稲田大)
 近代の歴史的建造物の内部空間保存・活用の際、ネックとなる課題を明らかにし、性能設計による防災計画手法の可能性について述べる。 事例として日本工業倶楽部、旧富士銀行横浜支店が紹介され、また東京中央郵便局をモデルとしたシュミレーション結果が報告された。

2)歴史的建築の保存再生 増築の事例報告他
鯵坂徹(三菱地所設計)
 既存不適格の歴史的建造物を現行法規に則って改修した事例として、国際文化会館、明治安田生命本館の改修工事が紹介され、 それぞれの工事過程で現行法規(建築基準法、消防法)への対応が具体的にどのようになされたかが報告された。

3)英独における既存不適格建築の安全管理
村上正浩(工学院大学)
 既存不適格建築物の安全管理の実態・施策について、英独を対象に行った現地調査の結果が報告された。 イギリスでは「民」を主体にリスクアセスメントによる安全管理を重視しているのに対し、ドイツでは法規制のハードルを低く設定し、 「行政」が主体となって柔軟な制度運用を行っていることが報告された。

4)文化財建造物と既存不適格
梅津章子(文化庁)
 文化財建造物を管轄する行政の立場から、文化財建造物に係る現行法規(建築基準法、消防法、その他関係法令)の現状について概観し、 また指定文化財制度、登録文化財制度、重伝建地区制度の中での具体的な安全確保の考え方・施策について述べる。

まとめ
 今回の報告は、科学研究費補助事業・特定領域研究「建築物・都市施設の保全に関わる法令・基準の整備と技術革新」 (研究代表者:後藤治、2005 年より5 年間)の中間報告を中心に行った。今後残り2 年間の研究では、今回のシンポを踏まえ、 例えば構造というテーマで北米西海岸の調査を実施するなど、より包括的な成果を目指して行きたいと考えている。


建築史からみた「コンバージョン」−近代建築の保存・再生の事例から−
2006年3月11日(土)14:00-18:00
於:建築会館会議室201および202
参加者:約50名
資料集作成
<内容>
趣旨説明:大野敏(横浜国立大学)

1.100事例にみる近代建築の保存・再生の変遷
八木真爾(佐藤総合計画)
 建築誌掲載事例を、手法・用途変更等の複数の視点から統計的に分析し、近代建築の保存・再生の変遷について述べ、今日的課題について論じる。

2.近代建築の保存・再生と「真正性」の問題
横手義洋(東京大学)
 真正性からみた改修事例に見られる問題について述べ、「近代建築に内在する真正性の問題」を提起する。

3.設計実務家からみた近代建築の保存・活用
鰺坂徹(三菱地所設計)
 実際に使い続けための設計を進める場合に、避けられない課題を示し、設計者は近代建築の保存・活用においてどんな点に配慮して立案するのか論じる。

4.近代建築の保存・再生工事における課題
松波秀子(清水建設技術研究所)
 実際の施工段階において後世に伝えていく事柄は何か、どんな点に留意すべきかを具体的事例から論じる。

討論 司会:山田幸正(首都大学東京)

 近年、近代建築を使い続けるための改修例が増えており、一般の設計者が改修設計に携わる機会も生じています。また、コンバージョンの対象が近代建築にまでひろがることも必至の状況と思われます。
 関東支部歴史意匠専門建築委員会は、この状況を近代建築の保存・再生について議論する好機と捉え、公開形式の勉強会を開催します。
 ここではまず近代建築の保存再生事例を概観します。そのうえで建築史分野からみた保存・再生における基本理念を提示します。ついで意匠設計者や施工に明 るい人材により、実務レベルにおける近代建築保存・再生に関する考え方を発表してもらいます。そして参加者からのご意見も交えて、今後の近代建築の保存・ 再生行為のあり方を討論します。
 なお、今回の勉強会ではコンバージョンについて厳密な意味で捉えているのではなく、近代建築を再生するという意味において転用する場合もあるので再生活用(復原・修復・転用)を総称してコンバージョンという言葉をあてはめています。


旧元町小学校見学会
2007年9月14日(金)
参加者:7名
 文京区契約管財課管財係の職員の案内で、約1時間にわたり、旧元町小学校の内部を見学した。当該建物は、歴史・意匠委員会と都市計画委員会の2委員長の 連名で、2006年7月4日付で、保存要望書を提出した対象物件である。当初、取り壊し予定であったが、再検討が行なわれている最中の見学であった。震災 復興小学校としての特徴をよくとどめており、参加者からは、保存して、活用されることを強く望むとの意見が聞かれた。


国立科学博物館本館改修工事見学会
2005年8月26日(金)
参加者:約11名
 国立科学博物館から3名、設計監理担当の香山壽夫建築研究所から3名が出て案内解説に当たってくれた。時間は 2時から1時間程度の予定であったが、最初に仮設事務所で事業概要説明、次いで現場案内、最後に再び仮設事務所で質疑を行い、予定よりも30分超過して3 時半に終了した。


国際文化会館の保存と再生にむけた取組みをどう活かすか
2005年3月5日(土)13:30−16:30
於:読売東京理工専門学校5階503号室
参加者:約50名
資料集作成
<内容>
経過報告: 小林 正美(明治大学)
討論:
 鈴木 博之(東京大学)
 阪田 誠造(建築家)
 兼松 紘一郎(建築家、JIA理事)
 榊原 信一(織本匠構造設計研究所)
司会・進行: 西澤 泰彦(名古屋大学)
主旨説明:山田 幸正(東京都立大学)


関東における歴史的建築リストの構築と発展
2003年12月13日(土)13:30−16:30
於:建築会館 会議室
参加者:約40名
資料集作成
<プログラム>
<趣旨説明>山田 幸正(関東支部歴史意匠専門研究委員会主査、東京都立大学)
<データベースの概要>川向 正人(東京理科大学)
<第一部:海外における文化財リスト>
<シンポジウム>
・フランス文化省の歴史的建築データベース「メリメ」:加藤 耕一(東京理科大学)
・ドイツの登録文化財とリストの公開:堀内 正昭(昭和女子大学)
<第二部:歴史的建築リスト整備の意義と可能性>
・東京豊島区での調査活動:山口 廣(日本大学名誉教授)
・東京23区の近代建築データベース化:三舩 康道(建築家・(株)エコプラン代表)
・川越市における歴史的建築の把握と公開:荒牧 澄多(川越市まちづくり計画課)
・鎌倉をはじめ湘南地区の保存活動を通じて:菅 孝能(山手総合計画研究所所長)
・近代建築探訪メーリングリストを通じて:木野 泰伸(近代建築探訪ML管理者)
・登録文化財制度とデータベース化:西 和彦(文化庁建造物課)
討論・まとめ
 建築学会建築歴史意匠委員会では直属の小委員会のもとで、歴史的建築リストのデータベースの構築を進め、イ ンターネットで公開しようとしている。その一環として、関東地方においてもこの歴史的建築リストのデータベースを拡充し、整備していこうとしている。その ために今求められているのは、建築学会の範囲を越えて、近代化遺産・近代和風・登録文化財などに関連する調査資料などを保有し、歴史的記憶をとどめる建物 を活かした特色ある地域づくり、まちづくりを進めておられる地方行政機関の行政担当者、地域に密着して熱心に活動しているNPOや一般市民、歴史的建造物 にかかわって設計活動している建築設計者など幅広い人々との協働関係である。
 本シンポジウムでは、幅広く学会員以外の方々にも参加を呼びかけ、様々な立場からのボーダレスな議論が期待される。また、こうした議論によって、この歴 史的建築のデータベースに対する理解が深められ、さらなる拡充・整備、活用のために垣根を取り払った人的ネットワークが形成されることを本シンポジウムの 大きな目標とした。


赤レンガの東京駅保存―どう残すのか、何を残すのか
2002年3月9日(土)13:30−17:00
於:建築会館ホール
参加者:約150名
資料集作成
<プログラム>
<主催者あいさつ>星 和彦(関東支部歴史意匠専門研究委員長)
<音と映像による東京駅>兼松紘一郎、桐原武志(JIA)
<スライド>明治時代の東京駅建設写真から戦災復旧まで:内田青蔵(文化女子大学)
<シンポジウム>
<コーディネーター>福川裕一(千葉大学)
1.前野まさる(東京芸術大学名誉教授・赤レンガの東京駅を愛する市民の会事務局長):
        1987年の東京駅建て替え計画と市民運動の今日まで
2.北澤 章(JR東日本):
        東京駅復元計画案と今後のスケジュールについて
3.・鈴木博之(東京大学):
        本物の保存とは何か、なぜオリジナルを残すことにこだわるのか
4.横河 健(建築家):
        都市全体の計画と意志を持った上での歴史的建造物保存の必要性
5.林  望(作家・書誌学者):
        歴史的アイデンティティの源である古い建物や景観を努力して残す必要性
<閉会挨拶>山口廣(日本大学名誉教授)
 現在、復元保存計画が進められている「東京駅丸の内口駅本屋」の復元保存の意義を考え、歴史的建造物を「ど う残すのか、何を残すのか」その手法、コンセプトなどを検証し、多くの市民が納得できる復元保存のあり方を探った。150名を越す参加者があり、会場から は、創建当初への復元ではなく戦災にあったという歴史性をも含めた保存計画が必要ではないか、との意見や、建物の保存に要する経済的な負担をどうするの か、という質問がなされた。


東京大学生産技術研究所見学会
2001年8月18日(土)午後2時〜
参加者:約70名
 建築学会より保存要望を行った東京大学生産技術研究所の見学会を行った。この建物は、学会の要望書に対する回 答では、記録保存、模型作成などは行われるものの、全面的に取り壊されるとされていた。その後、一部(外壁30mほど)が残されることとなった。見学会 は、JIAとの共催で、70名ほどの参加者があり、盛況であった。


歴史的建造物の保存の技術
2001年3月7日(水)13:30−16:00
於:建築会館会議室
参加者:約50名
資料集作成
<プログラム>
開催挨拶・趣旨説明:中西章(支部歴史意匠専門委員会主査)
司会:星 和彦・大橋 竜太
 1.建築保存における構造技術者の役割と考え方:田中 禎彦(文化庁建造物課)
 2.煉瓦造建築の保存について:後藤 哲郎(国土交通省建築研究所)
 3.ゼネコンの取り組み:林 章二(清水建設技術研究所)
 4.実例報告 ― 工業倶楽部:野村 和宣(三菱地所)
 昨今の歴史的建造物の保存においては、対象となる建造物の種類も、また、その手法も多様化してきている。そ のため、これまでとは異なった技術的問題もしばしばとりざたされるようになってきた。そこで、主に近代建築の保存・再生にあたり、構造補強等の技術的問題 に関して、現状の問題点等を報告していただき、今後の歴史的建造物の保存に関して検討した。定員を超える参加者を得て、活発に質疑・応答が行われ、歴史的 建造物の保存に対する関心の深さが感じられた。


インターネットによるデータベース化−文化財建造物リストの作成と公開をめぐって
2000年7月25日(火)18:00-20:30
於:建築会館ホール
参加者:約80名
資料集作成
<プログラム>
開催挨拶:中西章(支部歴史意匠専門委員会主査)
趣旨説明・司会:川向正人(文化財建造物総目録作成WG主査)
 1.文化庁における文化情報のデータベース化:西和彦(文化庁文化財保護部建造物課)
 2.文化財建造物関係の情報公開に対する市民からの提案と要望:前村敏彰(”近代建築メーリングリスト”;日本実業出版社新メディア局)
 3.文化財建造物リストのデータベース設計:池上重康(北海道大学)
 4.データベースシステムの公開と管理−情報システム管理の観点から:小林永幸((株)ソフトパーク代表)
 本部歴史意匠委員会の文化財建造物総目録作成ワーキンググループの成果報告を兼ねたシンポジウムであり、約80名の参加者があった。参加者からはさまざまな面からの意見が多数だされ、予定の時間を超えて活発に質疑・応答が行われた。


旧小笠原邸見学会
2000年6月15日(月)
参加者:約15名
 東京都によって民間資本導入の事業計画がされている旧小笠原邸の見学会を行った。急な見学会であったにもかかわらず、約15名が参加し、この建物の価値を再確認するとともに、東京都に事業への慎重な対応を要請した。