建築計画ニュース040

−1999年度 大会報告特集号−

2000.2.22

日 本 建 築 学 会
建築計画委員会


1.建築計画部門・都市計画部門・農村計画部門 研究協議会

「建築計画研究の領域とその研究方法の展望−他領域の研究者とのクロストーク−」

日色真帆(愛知淑徳大学)


2.建築計画部門パネルディスカッション

「家族・個人・社会と住まい―ヒューマンコンタクトの在り方と住宅計画−」

浅沼由紀(武蔵工業大学)

3. 建築計画部門パネルディスカッション

「住まい方のフィールドワークと設計思想」

田中麻里(群馬大学)

4.建築計画部門 研究懇談会

「地球環境問題は建築計画学研究と建築計画・設計をどう変えるか、変えるべきか」

福田由美子(広島工業大学)

5.学術講演各セッション報告

6.学術講演セッション報告の新形式の試行について


建築計画部門・都市計画部門・農村計画部門 研究協議会

「建築計画研究の領域とその研究方法の展望−他領域の研究者とのクロストーク−」

日色真帆(愛知淑徳大学)

 「計画研究の新しい視座を求めて:アジアにおける住居・集落研究の蓄積を素材に」('96)、「実践からみた建築計画研究:新しい研究の方法論を求めて」('97)、「研究方法からみた計画研究の評価:新しい建築計画学の展開のために」('98)と建築計画部門で開催してきた、研究方法から建築計画研究を問うシリーズの4回目である。今回は、都市計画、農村計画と共催し歴史意匠、環境工学の研究者も交えて議論が行われた(敬称略)。司会:西出和彦(東京大学)、副司会:積田洋(東京電機大学)。

 主旨説明として門内輝行(早稲田大学)から次のように論点が示された。(1)物理的機能だけでなく、生理・心理的機能、社会的、象徴的意味など建築現象の多層性への統合的アプローチ、(2)時間とともに変化する建築現象の把握、(3)建築をとりまくコンテクストへの対応、(4)ビジョンの提案と、建築評価を通じて社会的役割を担うこと、(5)研究と実践の多様なリンクの形成、(6)研究成果を良質なストックとするレビュー、他分野との関連づけ、(7)研究方法の革新。

 建築計画分野から柏原士郎(大阪大学)は、実態把握から決定まで統合的に捉えるHolisticな計画学の必要性を述べた。歴史を振り返ると、戦後すぐには大量の住宅要求に応える標準化や型計画、公共建築のシビルミニマムや規模計画など、研究の役割が明確で、ニュータウンはその成果である。70年代中頃以降の、量から質を求める時代になって、目標は多様で使命感が希薄になっている。しかし、研究には中立的立場から「造らない」判断をするブレーキ機能がある。社会システムとの関係、環境倫理などが問われる今こそ、科学的方法、特に計量化の方法と、モデル化し予測する方法を結びつける研究の蓄積が必要との主張がされた。

 西村幸夫(東京大学)は、都市計画の視点から見ると建築計画は、(1)建築空間に閉じている単体主義、(2)研究手法がもっぱら調査中心主義、(3)扱う対象が現実中心主義で歴史的視点にたった提案がない、という指摘をした。

 重村力(神戸大学)は、農村計画の方法を次のように整理し建築計画へのヒントとした。(1)農村環境改善には一定の制度はなく、多様な機会・制度を通じて提案する。(2)既往の空間へのアコモデーションを特徴とする。(3)生活改善運動のように、話し合いながらつくるワークショップ的方法。(4)考現学のように意味の体系としての既存の環境への執着。(5)民家研究のように個別性・場所性の重視。(6)ストックを育てることに重点をおく。(7)自然的環境とそれらと関わる産業を扱うため、エコロジカルな視点が強い。

 鈴木博之(東京大学)は、歴史意匠から見ると計画学は隣接していながら接点がないと指摘する。計画原論から始まった計画学は、規模計画と施設計画であった。その中心的課題である住宅・学校・病院は、住宅・文教・福祉の各政策を担う施設で、基本的性格として政策学なのである。図書館、劇場、ホールなどの専門家が増加したことも文化行政の高まりを映している。政策学としての使命を終え、学問が成熟化すれば、歴史化する宿命にあるだろう。その時、計画学は、建築設計の基礎理論となるのか、建築のあり方についての基礎理論に向かうのだろうかと疑問を呈した。

 中村泰人(熊本県立大学)は、環境工学の立場を、健康性、快適性・利便性、経済性、地域性、生態循環性、精神性の視点から概説し、それらが建築計画にも当てはまると述べた。計画研究は、当初、廃虚からの復興という目標に対して緊張感をもって臨んでいた。学生運動により体制外研究の必要性が言われたが、その終焉以降は政策支援研究となり社会的緊張関係を失っている。そして環境問題こそが、緊張関係をもって取り組むべき新しい建築計画研究の目標であろうと提起した。

 コメンテーターの仙田満(東京工業大学)から、こどものあそび環境という視点で様々な領域を横断的に研究しデザインしてきた経験をもとに、これからの建築計画には、そのような横断的視点が重要になるとの指摘がされた。

 同じくコメンテーターの安藤正雄(千葉大学)から、構法や生産の視点にたって、計画は上流ではなくどの段階にもあること、最適解はなく常に意味や価値に関わり多元的で状況的であること、生産においてはコンカレンシーとストックマネージメントが注目されていることが紹介された。

 門内から、ワーキンググループが行った大会論文と黄表紙(86〜98年)を見直す作業が紹介され、研究動向の整理がされた。(1)住居・住宅地、各種建物・地域施設研究が約6割を占める、(2)アンケートやヒヤリング調査が支配的方法、(3)社会的ニーズへの対応は敏感すぎるほど、(4)計画基礎が新しい地平を開いている、(5)モデル化するアプローチが弱い、(6)新しい道具や方法による実験・観察研究が生まれている、(7)異文化圏を扱う研究が盛ん、(8)時間的変化を考慮した研究が生まれている。

 討論では次のような発言がなされた。

 議論はクロスしたようでもあり、すれ違ったようでもある。記録者には、そこがヌエのような建築計画らしく、可能性のようにも思われた。

 

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建築計画部門パネルディスカッション

「家族・個人・社会と住まい―ヒューマンコンタクトの在り方と住宅計画−」

浅沼由紀(武蔵工業大学)

 本PDは9月17日(金)13:00より、司会:高田光雄(京都大学)、副司会:西村伸也(新潟大学)の担当で開催された。参加者は約150名であった。まず司会から『建築雑誌』1999年7月号に予告されていた内容の変更(パネリスト1名の変更)についての説明と本テーマに関連する過去の研究協議会等の紹介があり、続いて主旨説明、6名のパネリストによる主題解説が行われた。休憩後に会場からの質疑・意見を受けての討議となり、最後に副司会が全体のまとめを行った。

主旨説明:服部岑生(千葉大学)

 家族崩壊に基づき地縁社会は意味を失っている。その変化下、地域の中にある住宅はもっと考え直されるべきではないか。本PDは家族・個人・社会という人間側の変化に応える住宅計画の在り方を、環境心理学的な意味合いまで含めたヒューマンコンタクトを手がかりとして議論することが目的であり、社会規範・住宅設計・住宅計画論の3論点があることを提起した。

主題解説

(1)最近の社会問題を考える:高橋淳子(朝日新聞社)


 子どもの居場所をテーマに、これまでの具体的取材を通して浮上してきた戦後つくられた郊外の住宅地における子どもの姿から、そこに形成された住環境は子どもの居場所をつくってこなかったのではないかと指摘している。また「プチ家出」をする子どもたちは意外と健全で、家族から得ることができない有機的なヒューマンコンタクトを求めている姿がみえてくる。

(2)住宅調査にみる多様な現代家族:沢田知子(文化女子大学)

 少子高齢化やジェンダーフリー意識、シングル単位社会への移行を背景に多様化する現代の家族形態とそれに対応する多様な住まい方、住宅の形を多くの事例から示した。特に家族関係の中の個人に注目し、家族構成員の個人領域が、住宅内で、家族・社会との関わりあいの中でどのよ
うに形成され関係づけられるのかを、子どもが幼少な核家族から高齢期夫婦、多世代家族までライフステージに沿って紹介した。

(3)ヒューマンコンタクトの計画手法:友田博通(昭和女子大学)

 住宅・住宅地は閉鎖化している。ヒューマンコンタクト(=人と人の接触)は計画的対応が可能であり住宅内外でのそれを再考すべき時である。住宅内での家族員同士の出会いをさりげなく促進する計画手法としてLホール型を提案。住宅内外での視覚的交流も地域社会とのヒューマンコンタクトを増やす上で重要である。住宅外でのヒューマンコンタクトは家族形態の変容を背景としてより重要な意味をもってくると指摘している。

(4)住宅市場からみた家族変化と住宅計画:武石英之(リクルート)

 住宅市場は買い手市場が続く。住宅購入条件としてPriceとPlaceでの差別化は難しくPlanが注目されている。現在の市場では購入者により「選べる」「変えられる」プランがよく売れる。家族関係の多様化に伴い複雑化する購入者ニーズに対応するために、住宅を「道具」として捉え、それぞれの家族に合った機能をもたせていく考え方が市場では評価されている。

(5)ハイタウン北方における家族・個人・社会:高橋晶子(ワークステーション)

 岐阜県営住宅ハイタウン北方・高橋棟は「風呂敷」住宅である。水廻り以外を「がらんどう」として可動家具と引戸で分節することで住み手による調整を容易にし、同じプランであっても多様な家族の形を受容し住まい方に差を出せる設計とした。入居者の住まい方実態を通して、畳室の仕切り方や多様な個人と家族の距離の取り方、共用廊下と住戸の界壁のつくり方や両者の緩衝領域となる土間空間の多様な使われ方を紹介した。

(6)コレクティブ・ハウジングにおける家族・個人・社会:小谷部育子(日本女子大学)

 コレクティブハウジングは、自立した個人を単位として成り立つ社会での集住形態の一選択肢である。個人の日常における生活や空間の一部を隣人と重ね合わせ、生活者主体で生み育てる共生型集住であり、参加と共生を理念とする。ヨーロッパでは「食」が重ね合わせの中心となる。そこでのヒューマンコンタクトの質はコレクティブコミュニティの規模と単位、施設との複合、集合形態、共用室配置等の空間計画により変わる。

質疑討論

 前半は家族・個人・社会の展望として、将来の家族像・住まい手像に関する議論である。小畑(都市基盤整備公団)からは日本社会にあるnLDK、標準家族という保守的考え方とジャーナリズムの役割について、新田(岐阜聖徳学園大)からは住宅内の父親・夫の個人空間からみた家族関係の中での彼らの主張の薄さについて、質問があった。これに関連して片岡(九州保健福祉大)より、高齢期の住居をめぐる夫婦の葛藤の中で、男性も拠点をつくり互いの距離を保って住むことが大事ではないかとの意見が出された。また広原(京都府立大)は住み方と世代論との関連性についての見解を述べた。

 後半はヒューマンコンタクトからみた住宅計画の在り方に関する議論である。コレクティブハウジングが議論の中心であった。広原(前掲)からは兵庫県の災害復興コレクティブハウジングの現状と将来像に関する感想、鄭(京都工芸繊維大)からはコレクティブハウジングのアジア諸国における可能性に関する質問があり、本間(神奈川大)からは戸建住宅におけるコレクティブハウジング的要素の組込みについての意見が出された。また、野口(北大)より、北国住宅において再度住まいの外部性、社会性を取り戻す計画論が必要との意見が出された。

まとめ:西村伸也(前掲)

 人間同士が繋がる場所はどこかに必ず必要であり、それを家族で持ち得ない時、人々はその補完場所を求めてさまよう。その結果として今の家族の形、住宅の形がある。建築家はそれに対して柔軟な空間を提供する。そして計画者はどう対応していけばよいのかを議論する場として本PDがあった。

 

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建築計画部門パネルディスカッション

「住まい方のフィールドワークと設計思想」

田中麻里(群馬大学)

 本PDは9月18日(土)9:00から、司会を畑聰一(芝浦工業大学)、副司会を永瀬克己(法政大学)が担当し開催された。

主旨説明:畑聰一(芝浦工業大学)

 本PDは沖縄を含めた海外調査を行っている比較居住文化小委員会によって企画された。わが国ではルドフスキーの'Architecture without Architect 'などをきっかに1960年代に海外の住居や集落に眼が向けられるようになった。この時代の海外調査は建築家への履歴のひとつとして考えられていたふしがある。1980年代以降は海外への行きやすさ、留学生の増加などによって海外調査が「研究」の枠組みのなかで行われるようになり、そのことによって海外居住研究が計画や設計と繋がりにくくなっている状況がある。本PDでは、このような状況と課題を認識しつつ、集落研究と設計の接点をさぐってみたい。海外研究の経験をもつ建築家をパネリストにむかえ、海外調査を行ったことが設計にどう生かされるのか、フィールドワークと設計の関係をどう捉えればいいのかを探る議論を行いたい。

(1)集落構造と設計思想:山本理顕(山本理顕設計工場)

 はじめの海外調査は'Village in the sun' などを手がかりに、ミースの均質空間とは異なった空間概念を模索することではじまった。そこにあるものを全面的に肯定した眼で、そこに集落があるという必然性や住宅という概念の普遍性を確かめていた。しかし、集落をつくっている思想はひとつの仮説であり、我々の眼で、その仮説を検証する必要があると考えている。

(2)フィールドワークと村づくり:内田文雄(龍環境計画)

 我々の生活空間は人と自然、人と人、人と時間の関係の中で成り立っている。建築家や計画者に求められているのは、フィールドワークによってその場所固有の意味を発見し、それを生かした計画をそこに住む人たちと協同で創りあげていくプロセス、そして地域の人たちが管理・運営していくプログラムを設計作業の中に位置付けることだと考える。ある具体的な場所で何かを計画する場合、その場所におけるさまざまな要素とその関係を読みとくならば、望ましい解というのはひとつしかないのではないかと考える。

(3)地形的な不連続点:竹山聖(京都大学)

 海外調査を通して集落は自然の不均質を強調するかたちで築かれ、地形的特異点を際立たせていることを実感し、人は地形的な特異点にしか住まないことを確認した。人間が定住することによって交通が際立ってくるが、集落をみるということは水や風や人間の交通、その流れに対して集落がどう対応しているのかをみることであり、交通の場所をつくることが建築の設計なのではないかと考えている。また、テクノロジーの発展を受けとめて設計を行うが、それがなくなった時の身体の状態を確認するという視点も集落調査を通して得た大きなものである。

(4)比較集落論の視点から:藤井明(東京大学)

 集落調査をすることの意味は、集落が数百年、数千年にわたって存在してきた集落に内在する巧妙なシステム、高度な計画の論理を理解することにある。風土的に似ているにもかかわらず、異なった集落が存在していることから、風土という与えられた条件のもとで、共同体を成立させるための答えは複数個存在しているのではないかと考える。空間的にうまくできているものを数多くみることにより、空間の目利きになれるのではないかと考える。空間をつくる手法、空間概念は無限にあり、それらは設計する人の構想力、想像力に依るところが大きく、フィールドに出て眼力を鍛えることが大切である。

質議・討論

(1)小島(近畿大):電子メディアに乗った情報の流れのなかで建築の役割をどう考えるか。山本:さまざまな情報が高度に発展していくということは、比較する眼を獲得していくことである。我々は様々な情報を持ち、比較する眼をもっているにもかかわらず、それに応じた空間が提案できていない。竹山:建築が情報に対して威厳を誇示したり後押しする役割は小さくなるだろうが、コミュニケーションのツールが速く広範囲になるほど人間は動き、生身の人間が出会うことによって純化された建築の役割がでてくる。(2)横田(NTTファシリティーズ):フィールドワーク研究が計画学の中での方法論として成立しつつあるのか。またフィールドワークの研究により隠れた次元を引き出し、それを適用することが実際に可能であると考えているかどうか。内田:ひとつの集落の調査研究は、他の集落の計画には情報として有益であっても、実際の計画には役に立たない。調査方法としては大体、水系、集落レベルや住居レベルでの境界のつくり方、典型的な住居の間取りなどを調べている。フィールドワークやワークショップによって、その場所の「なりたがっているかたち」の輪郭を浮かびあがらせることができる。竹山:集落に着目するのは計画学の方法論ではなく歴史の豊富化だと思っている。未来は個人の想像力の内に宿っていると思うので、個人の認識を深める格好の素材として、集落という歴史はあると思う。畑:集落では空間は象徴的なものによって決められ、合理的な論理ではつくられない。しかし、それはアイデンティティを持ち、集落の構造を確固たるものにしている。藤井:計画学では最適化によってものが決まり、それが正しいと信じられてきた傾向があるが、果たしてそれでいいのか。集落調査と設計は直接的な関係ではないが、実際に体験を積むというプリミティブな方法が何かを計画する時に反映されて、最適化とは異なる解答を見出すのではないかと考えている。山本:集落は片寄った思い入れでできている。計画学自体も強い思い入れと思想によってできている、そのことを再認識したことが重要である。

まとめ:畑聰一(前掲) 仮説を共有するシステムが大切であると思う。計画学の論理、最適化に基づいてものをつくっても誰にもアイデンティティが持たれないとはどういうことか。フィールドワークとは身体を使って意識をつくりだす行為であるが、近代建築をみるのと同時に集落調査を経験することによって、よい環境が築かれることを期待したい。

 

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建築計画部門 研究懇談会

「地球環境問題は建築計画学研究と建築計画・設計をどう変えるか、変えるべきか」

福田由美子(広島工業大学)

 本研究懇談会は、建築計画部門として中国支部で企画され、9月19日(日)13:00より、司会:森保洋之(広島工業大学)、副司会:岡河貢(広島大学)が担当し開催された。

主旨説明:石丸紀興(広島大学)

建築計画分野には、計画学の研究者と建築家がいるが、それぞれが地球環境問題をきちんと受け止め、変えられるべきことは変えていく、また、地球環境問題の捉え方に対して、建築計画の立場から言えることは何か、さらには、身近なところから出来ることは何か、という論点が説明された。続いて、「地球環境問題をどうとらえるかアンケート」の結果が報告された。

主題解説

(1)地球環境問題の建築計画分野からの把握と要請される課題:太田利彦(地球環境委員会・前委員長)

地球環境問題を根源的に捉えると、最終的には経済社会の問題であり、「私」の利益を追求する市場経済論理を無制限にやってきた結果、破綻が起こっている。だから、現実社会の中での行動倫理が問題となる。ライフスタイルというものを、単なる建物の中の行動だけでなく、社会生活を形成していく人間の生き様として捉えないといけない、との問題提起があった。

(2)建築計画学への要請:尾島俊雄(早稲田大学)

先に報告のあったアンケート結果に対して、学会の地球環境問題に関する取り組みの経緯と、その意味についての説明があった。そして計画学も環境工学も細分化が進んでいるが、そろそろ収斂の時ではないか、学会の情報を開示しながら社会貢献するには、ぜひともこういう場で連立して、参加型、共生型、循環型の、そして国際的なスタンダードに合う形でのモデルを考えたいとして、大都市、中都市、農村型の建築様式の提案がなされた。

(3)建築計画研究の対応事例とその課題:吉田倬郎(工学院大学)

建築計画研究と地球環境との関連について、分野別に考察された。「住居・住宅地研究」は初期の可変型住宅をはじめ内容的には大変関わりが大きい、「各種建物・地域施設研究」では用途変更に関する研究が興味深い、「設計方法」は機が熟してくれば期待される、「構法計画」は直接資源、廃棄物の問題を扱う分野であり、研究より先に実態は改善されていっている、「人間工学」「計画基礎」ではバリアフリーの改築への展開などが意義ある位置づけになる、といった指摘がなされた。

(4)建築計画・設計の対応事例とその課題:林昭男(滋賀県立大学)

UIAで1993年に採択された相互依存宣言について、また、JIAで環境問題に取り組む仕掛けとして刊行している、『サスティナブルデザインガイド』という冊子について、さらには、滋賀県立大学の学部共通基礎科目「環境フィールドワーク」の取り組みについて報告された。理念を具体化していくための提案として、啓蒙普及、情報伝達、表彰制度、優遇制度、教育研究を行っていくことが挙げられた。

(5)研究評価や設計評価の視点:船越徹(東京電機大学)

狭義の建築計画研究では環境がすぐにテーマとして出てくるとは思えないが、計画論としては環境のことを考えずに論ずることはできない、として、具体的に3つのプロジェクトを紹介しながら、計画の意味や研究との繋がりについて考察された。その中では、小学校を老人施設と複合化した場合、あるいは高密度の公営住宅計画において免震構造を採用した場合の環境的な意味について、また超々高層の検討についての説明がなされた。

討論

(1)研究の手法について:今までの自然科学的な手法では見える部分をモデル化して提案してきたが、地球環境問題は見えない部分の問題の現れ。倫理などの問題について見直し、生活に対して建築側から提案しうる様があるのではないか。自然科学的手法というのは、現象の中に相関関係をみつけて説明しようとする手法(太田)。→自然科学的な研究自身が発展しなければいけない。相関関係でないものがあるのだろうか(船越)。

(2)モデルについて:設計というのは、具体的な与条件に対して正しい判断をしながら作っていくものであって、モデルは描けない(林)。→計画学というからにはモデルを示されたい。ライフスタイルを確立して、それに対する建築様式を確立する必要がある(尾島)。モデルには、規範と写像という二つの意味がある(太田)。

(3)計画学の功罪:吉武計画学というのは、工業化に寄与してきたが、量産、工業化体制というのは環境にマッチしない(尾島)。→戦後の建物が繰り返し建設される体制とは合っており、肯定されるべきもの(船越)。→21世紀には、違う意味、広い意味が必要となる(尾島)。

 討論の中では、鈴木成文(神戸芸工大)より、かつては、研究をもとにしながら生活像を描いていったが、現在は、生活像がなくても建築ができてしまうところが問題で、やはり研究が何らかの働きをして生活像を描く必要があるとの指摘があった。また、柏原士郎(大阪大)からは、学会の提言は、ディテールについては意見が統一されるはずはなく、市民にできるだけ早く知らせるためには、地球環境委員会の名前で出すべきこと、作品賞は声明と矛盾しないように選考されるべきこと、社会的には医療の次に建築の倫理観が問われていることなどの指摘があった。さらに、斎藤平蔵(東大名誉教授)から、地球環境問題とは本質的に何か、そして建築が物質循環を乱していることへの危機意識について語られ、広島で建築設計に携わる錦織亮雄(建築家)からは、地域での活動を考えると、学問をする人は、貴名性をもってネットワークに参加する役目があるとの意見が述べられた。会場からは、林知子(目白学園女子短大)より次世代のライフスタイルへの危機感に関する発言があった。

まとめ:丹羽和彦(広島大学)

今の地球環境問題は選択の問題、社会レベルをどこに設定するのかの問題になってきており、そこで困るのは、絶対的な価値観が曖昧で、どこに足を踏ん張ったらいいのかということ。その場合、自然科学的な方法によるのかそこから逸脱したところにいくのかが議論されるところである、とまとめられた。

 

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学術講演各セッション報告

■5001〜5009
 地域医療施設計画・各部門計画

■5191〜5200
 老人施設(介護・生活)

■5377〜5383
 知覚・認知(1)

■5566〜5572
 海外居住(3)

■5010〜5017
 医療施設の変遷・空間認知

■5201〜5206
 老人施設(環境移行・絵画反応)

■5384〜5390
 知覚・認知(2)

■5573〜5578
 海外居住(4) 中国・韓国

■5018〜5023
 入院生活環境

■5207〜5215
 痴呆性高齢者(特養・グループホーム)

■5391〜5396
 知覚・認知(3)

■5579〜5586
 沖縄の集落・住居

■5024〜5030
 専門医療施設

■5216〜5222
 高齢者地域施設

■5397〜5402
 知覚・認知(4)

■5587〜5592
 地方性・伝統性

■5031〜5040
 博物館

■5223〜5229
 高齢者施設ネットワーク,コミュニティ・ケア

■5403〜5410
 歩行・行動・群集(1)

■5593〜5600
 伝統住居・集落の変容・再生

■5041〜5047
 劇場(1)

■5230〜5237
 商業・業務

■5411〜5417
 歩行・行動・群集(2)

■5601〜5605
 住宅地の安全性

■5048〜5056
 劇場(2)

■ 5238〜5245
 スポーツ・レクリエーション

■5418〜5425
 歩行・行動・群集(3)

■5606〜5614
 住宅地のコミュニティ形成

■5057〜5063
 劇場(3)

■5246〜5253
 葬祭・清掃・銭湯

■5426〜5431
 地球環境

■5615〜5624
 領域・交流・活動の広がり

■5064〜5069
 図書館(1)

■5254〜5258
 駅

■5432〜5438
 光環境

■5625〜5631
 コレクティブハウジング

■5070〜5074
 図書館(2)

■5259〜5263
 設計プロセス・設計教育

■5439〜5446
 空間モデル

■5632〜5638
 居住者による環境形成

■5075〜5080
 児童館

■5264〜5269
 空間単位・空間生成

■5447〜5451
 内部空間

■5639〜5646
 戸建て住宅

■5081〜5085
 地域施設計画1

■5270〜5275
 空間配置・形態言語

■5452〜5457
 内外部空間

■5647〜5653
 集合住宅の外部空間

■5086〜5090
 地域施設計画2

■5276〜5280
 コラボレーション

■5458〜5463
 ファサード

■5654〜5659
 住戸・住戸まわり空間

■5091〜5095
 地域施設計画3

■5281〜5286
 CAD・シミュレーション

■5464〜5471
 都市・広場

■5660〜5668
 住みこなし

■5096〜5100
 生涯学習施設

■5287〜5291
 設計情報

■5472〜5477
 シークエンス

■5669〜5677
 更新・増改築

■5101〜5107
 幼稚園

■5292〜5297
 FM・POE(1)

■5478〜5484
 街路空間

■5678〜5683
 ライフスタイルと住居(1)

■5108〜5113
 生涯学習・複合化

■5298〜5303
 FM・POE(2)

■5485〜5493
 景観

■5684〜5689
 ライフスタイルと住居(2)

■5114〜5120
 複合化・大学

■5304〜5312
 構法開発

■5494〜5500
 子供・老人の空間認識

■5690〜5696
 ライフスタイルと住居(3)

■5121〜5130
 中学校・高等学校

■5313〜5322
 構法の変遷

■5501〜5506
 空間インターフェイス

■5697〜5702
 高齢化と住居(1)

■5131〜5140
 小学校(1)

■5323〜5329
 構法設計

■5507〜5512
 心理・意識

■5703〜5709
 高齢化と住居(2)

■5141〜5147
 小学校(2)

■5330〜5339
 木造構法

■5513〜5522
 安全計画・法規

■5710〜5714
 高齢者と生活行動

■5148〜5153
 小学校(3)

■5340〜5346
 構法・ディテール

■5523〜5531
 環境行動(1)

■5715〜5721
 高齢者集合住宅

■5154〜5159
 小学校(4)

■5347〜5352
 構法原理

■5532〜5539
 環境行動(2)

■5722〜5726
 高齢者の居住環境

■5160〜5165
 知的障害者・身体障害者

■5353〜5358
 人体・動作(1)

■5540〜5546
 空間認知

■5727〜5734
 集住体の計画(1)

■5166〜5174
 バリアフリーまちづくり

■5359〜5364
 人体・動作(2)

■5547〜5551
 ウェイファインディング

■5735〜5741
 集住体の計画(2)

■5175〜5180
 障害児・障害者

■5365〜5370
 人体・動作(3)

■5552〜5558
 海外居住(1) マレーシア,ベトナム

■ 5742〜5749
 集住体の計画(3)

■5181〜5190
 老人保健施設・特養(施設空間構成)

■5371〜5376
 人体・動作(4)

■5559〜5565
 海外居住(2) アジアの高密度居住と保存再生

 

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■5001〜5009 地域医療施設計画・各部門計画

5001・5002は富山医療圏における病診連携、5003は高齢者の在宅介護をみすえた医療・福祉の連携に関する調査報告である。いずれも今後の医療展開の中で充分に議論されなければならない問題であるが、地域計画への提案につなげるには難しいことを感じた。また、利用者や家族の意識をどうとらえるかとする指摘があった。5003は災害時の受療圏域が平常時と異なることに関する報告であるが、単に圏域の問題としてとらえるのみでなく、そもそもの病院機能の設定として議論すべきであろうとの意見が出された。5005は院外処方に関する調査である。5006は作業療法室の利用実態についての調査であり、利用の類型などを探っているが、研究手法としての観察から分かったことが何かと疑義が出された。5007は物品供給部門について、組織と運用の関連について論じたものである。この報告の中にしめる組織図の意味が大きいが、実態の説明性についての疑問が出された。5008・5009は診療部門における患者の環境評価に関する問題である。療養環境としては病棟を対象にした研究が多いが、重要な視点であろう。そういう意味で、「間取り−分かりやすさ」の果たす役割はもっと大きいのではないかとの質問が出た。

中山茂樹(千葉大学)

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■5010〜5017 医療施設の変遷・空間認知


■5018〜5023 入院生活環境

5018は病棟の平面構成と入院患者の生活行為との関連を明らかにすることを目的として行った研究であり、今後調査対象を広げることにより、研究が深まると思われる。5019は病棟の食事環境のあり方を検証することを目的として実施しており、その対象として急性期病棟を取り上げているが、その対象の選定について会場より疑義がなされた。5020は病棟における長期にわたる患者を対象とした詳細な調査を実施して、病室内の共用空間の使われ方を明らかにしており、調査手法に特色を見いだすことが出来る。5021は外来部門を対象としてサインを立体的な視点から定量化して、サイン計画の指標を提案することを目的とした研究であり、より具体的な提案が今後なされるものと思われる。5022・5023は医学的リハビリテーション施設の生活環境を医療機能として捉え、その実態を把握することを目的として実施した研究である、空間の分類に特色が見いだせる。本セッションの一部の研究において、研究の目的と調査の対象、分析、まとめが一致していないものが見られた。研究目的の設定に対して、実際に行っている研究がその一部に限られているためにこのようになると考えられ、梗概に研究の全体像と発表内容との関係を記述することの必要性が感じられた。

筧 淳夫(国立医療・病院管理研究所)

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■5024〜5030 専門医療施設

 このセッションは、精神病院、緩和ケア施設、小児長期療養施設など専門病院について7題の発表である。利用者の属性が異なるものの生活支援をテーマに掲げざるをえない計画対象であり、相違と共に共通点もテーマになった。まず、精神病院における入院患者の行動特性に関する研究として発表された2題(5024、5025 横田、阪田、ほか)。特に前半においては建設時の移転時利用を主題にした環境移行の問題を扱っている。季節など時間的な環境変化を含めた今後の継続的調査成果を待ちたいところである。具体的に特徴的な行動特性を主題にした後半は次の岡本ら(5026)と共に畳利用などがテーマとなり、床座、喫煙等、施設運営と生活実態との関わりの観点から質疑が見られた。特に高齢化する精神病院入院患者においては習慣化などその課題も指摘されるが、畳利用についてはそのニーズの高さ。さらには補助基準問題を越えてのユニバーサルな生活支援の可能性の高さが指摘された。今後、裏付けとなるプログラム、計画指針検討の必要性が確認できる。緩和ケア施設に関する5027(近藤、ほか)については検査ネットワークの質問のように、完全独立型における拠点化の可能性とそのためのシステムなどへ向けた特質客観化の成果を期待したいところである。最後の3題は病院、病棟という施設形態が異なるものの、同じく小児を対象にあそび環境(5028・浦添、ほか)、学習行為(5029・永田、ほか)そして共用空間(5026・大前、ほか)に関する内容となった。いずれも詳細な継続的サーベイの報告である。今後、属性によって利用状況が異なる生活機能、空間の具体的提案となると、例えば日常交流、断面検討の視点など包括的アプローチが不可欠となろう。

佐々木厚司(京都工芸繊維大学)

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■5031〜5040 博物館


■5041〜5047 劇場(1)


■5048〜5056 劇場(2)


■5057〜5063 劇場(3)


■5064〜5069 図書館(1)


■5070〜5074 図書館(2)


■5075〜5080 児童館


■5081〜5085 地域施設計画1


■5086〜5090 地域施設計画2


■5091〜5095 地域施設計画3

 地域施設計画3は、研究対象として近代化に伴い行政により意図的に配置された地域施設を取り上げたものと、古くから地域に継承される伝統的な施設を取り上げたものの、大きく2つのテーマで構成された。5091と5092(友清貴和、ほか)は、地域公共施設の整備状況に関する一連の研究に繋がるもので、鹿児島県における地域施設の整備状況と、地域特性との関連性を明確にしようとする試みである。この2題では地域特性を市町村単位の可住地人口密度や財政力を指標として類型化し、それぞれの型における地域施設整備状況の現状を比較している。討論では、市町村の類型化に用いた手法について質疑や提案が積極的に交わされた。5093から5095(無漏田芳信、酒井 要、ほか)は、地縁的領域の形成と生活空間の固有性に関する一連の研究から継続するものである。5093では、備後地方の辻堂の史的考察を行い、5094・5095では備後宜山村集落に継承される神道系祭祀や吹き放し堂の史的変化と現況を、その周辺地域の住宅地開発状況と関連させて取り上げている。これらの施設は近年、宗教的な意味合いが薄れつつあり、一方で、その周辺の住宅地開発に伴う新旧住民の交流を促す仕掛けの一つとして、有効に機能する場合が見られることが示されている。討論では、郊外住宅地における新旧住民の交流に関する取り組みやその方法について、活発な情報・意見交換が行われた。

木多彩子(大阪大学)

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■5096〜5100 生涯学習施設

 本セッションは、最終日の午後ということもあって参加者は目減りしたが、15分間の質疑時間は不足気味であった。各発表や質疑内容を記すと、以下のようになる。5096(松木、ほか)は、地域住民に身近な自治会館・集会所の建設プロセスや利用状況の事例報告で、宅地地域では交流の場として多様な利用がみられるのに対し、農家地域では主に定期的会合に利用され葬儀も禁止しているなど両地域での使われ方や意識の違いを指摘した。行政・公団による施設と地主による施設を同列に扱う狙いや定期的会合を形式的利用と呼ぶことに質疑があった。5097(山本、ほか)は、都心地域において通勤者と居住者に対して生涯学習活動状況を調査し、通勤者も考慮した施設整備の必要性を提言した。生涯学習活動種類の取り扱い方のほかに、地方都市か大都市かにより対応が異なるが、他の行政区に住む通勤者も対象とした施設整備の考え方に行政サービス範囲の問題が投げかけられた。5098(川崎、ほか)は、都内3地区において徒歩圏内の生涯学習活動の実態を住民側と施設側から調査し、活動内容を4種類に整理して施設側の活動機会の提供が自主活動に及ぼす影響などを述べた。しかし、活動種類の移行という主張に対する客観的なデータは見当たらず、調査中に得られた印象が先行し過ぎた感が否めなかった。5099(朝井、ほか)は、博物館の環境学習支援活動に関する実態と都道府県や主要市町村における環境学習拠点施設の整備状況や運営・活動内容に関する報告であった。博物館で特別に施設整備しているのは4%と少なく、博物館と拠点施設との連携もあまり見られないという結果に対し、博物館に注目した理由について質疑があった。5100(井原)は、生涯学習関連50施設の実態調査より、情報提供空間はロビー・エントランス周りか、他階に専用室を設けるタイプがみられ、チラシ類を納めたパンフレットスタンド等がロビー寄り、エントランス方向、主動線側に溢れ出す傾向が認められることを指摘し、情報提供手段を考慮した情報提供空間の再考を示唆した。

無漏田 芳信(福山大学)

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■5101〜5107 幼稚園


■5108〜5113 生涯学習・複合化


■5114〜5120 複合化・大学


■5121〜5130 中学校・高等学校


■5131〜5140 小学校(1)


■5141〜5147 小学校(2)


■5148〜5153 小学校(3)


■5154〜5159 小学校(4)


■5160〜5165 知的障害者・身体障害者


■5166〜5174 バリアフリーまちづくり

5166「アジア太平洋地域におけるバリアフリー推進プロジェクト」(佐藤克志)については、特に視覚誘導ブロックの敷設に関する議論がされた。すなわち、歩行訓練やガイドヘルプや周囲の人々の援助など地域における人的支援が重要であり、材料としての非耐久性や使用上の限界が指摘されている誘導ブロック敷設をアジアに拡げることに対する疑問が指摘された。5167「便器・洗面器と手すりの位置関係の基礎的調査」(岡戸利文、ほか)については、車いす使用者のみでなく、立位の肢体不自由者への対応などについても必要な寸法を明確化すべきという指摘がされた。5168・5169「ひとにやさしいまちづくり総合計画策定のための基礎的調査」(菅野有香、今泉清志、ほか)については、関連する議論の中で、きめ細かな実態調査で障害者のニーズを総合的に捉えることの重要性が指摘された。5170公園出入口の物理的バリア(有賀彩乃、ほか)では、都内の公園出入口にはバリアが多く整備の必要性が報告された。5171「JR駅前における高齢化対策施設対応に関する研究」(石塚義高)では、東京駅八重洲口地下街の評価がされたが、便利な通り方、便所やエレベータ等の配置方法などを含めた評価の必要性が指摘された。5172「住居系建築におけるバリアフリーのディテールについて」(黒田幸司、ほか)では、分析資料の出典明記の必要性等が指摘された。5173「身体障害者対応屋外遊具の供給実態に関する研究」(竹嶋祥夫)では、障害者対応遊具は不十分で、開発面・管理面での充実が必要という報告がされた。5174「障害者の利用を考慮したスキー場計画に関する研究」(小菅瑞香、ほか)は興味深い研究であった。関連意見として、障害者スポーツ施設を支えるシステムのひとつとして、横浜市総合リハビリテーションセンターにおける障害児や障害者用スキー用具のレンタル事業などが紹介された。

野村みどり(東京都立保健科学大学)

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■5175〜5180 障害児・障害者


■5181〜5190 老人保健施設・特養(施設空間構成)[ポスターセッション]

老人保健施設、特別養護老人ホーム関連計10題のポスターセッション(P.S.)を担当。ポスターセッション参加者が自グループの発表梗概のすべて目を通していない状況なので、まず各自に3分程度説明をしてもらい、一巡した後に、それぞれ関心あるパネルに分散し自由討議という方法を取った。結論として、P.S.は教室型の発表に比べて時間が有効に使えることが判明した。聴衆が自分の興味に照らして自由にディスカスできるが、参加者の慣れがP.S.の成否に強く関わる。そのためにも、参加者全員が他者の梗概を熟読しておくことが求められる。発表テーマで興味を持ったのは、5182は老健施設の全国調査の分析で、やや未成熟ではあるが今後の研究次第で客観的な評価が期待できる。5189〜5190は特養の施設設計意図と現場の乖離要因の究明を狙ったもので興味深い。ただし、この種の施設では、最初から事業者が形式的に法的諸室を確保しておく場合もあり、設計者の意図も明確でない場合が少なくないので注意を要する。5185は特養の建設動向調査で一定の分析がなされている。都内施設が決定的に他地域の施設と異なるところを示したい。5186〜5188は丁寧にまとめられているが、やや全体の研究成果をどこにおくか、明確になり得ていないので注意したい。5181、5183〜5184は継続的な研究を期待したい。

高橋儀平(東洋大学)

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■5191〜5200 老人施設(介護・生活)[ポスターセッション]

5191〜5200(5198は未発表)は、高齢者の介護型入居施設に対する生活実態を調査し計画上の配慮について考察している。5191〜5192(林 悦子・林 玉子、ほか)はグループリビング方式を採用している新しい施設に着目し、セミプライベート、セミパブリック、パブリックなど共用利用のスペースの取り方の違い、これらのスペースと個室の繋がり方が入居者の生活行動に影響を与えていることを報告している。5193〜5196は、個室型の老健施設・特養ホームを取り上げタイム・スタディの手法で共用室など居室外の空間を中心に滞留状況を詳細に調査し分析している。5193(黒須)は痴呆度によって身の置き処となる場が異なることを指摘している。5194〜5196(竹宮、芦沢、山田、ほか)は入居者同士の関わり方の多様性と様々な空間との関わり方を共用空間における交流・非交流行動に着目して分析を行っている。交流グループの場の使い分け、非交流グループの他者との関係について検討している。今回、調査対象が痴呆度の比較的軽いグループであるが、今後は痴呆や要介護度の高い入居者を対象にして研究を続け、従来の定型的で自由度の少ない介護型入居施設の空間構成に新たな提案を期待したい。5197(毛利、ほか)は特養ホームの個別介護・処遇におけるスタッフの役割が心理的安定に寄与していることを示し、入居者の自立度の違いによってスタッフに期待される内容が異なることを報告している。入居者の心理的安定度は重要な視点であり、観察や計測方法の問題、ボランティアや地域の知人や家族の来訪などを含めて多面的に研究の発展させるよう期待したい。5199(斎藤、ほか)は特別養護老人ホームにおける車椅子利用者の生活行動を分析し、車椅子がいすとして使われることが多いこと、座位、操作性の良いものは他のものと比べて文化・社会的行為が高いと指摘している。この研究では施設入居者処遇の違い、スタッフ数、生活リハの取り入れ方(いす利用を積極的に進めるところもある)などによって、大きな影響を受けることが考えられるので施設間比較をさらに詳しく分析することが必要であろう。5200(木村)は老人保健施設3施設の高齢者の移動時の転倒・転落事故を比較し、諸室における発生状況を痴呆・身体状況などから分析して、ベッド周りや廊下を隔てたトイレへの移動の事故への安全策に必要性を指摘している。紙面の関係からか身体状況を示す各図に興味深い傾向が現れているが、詳細な検討がなされていないのが残念である。

石田道孝(日本大学)

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■5201〜5206 老人施設(環境移行・絵画反応)[ポスターセッション]


■5207〜5215 痴呆性高齢者(特養・グループホーム)[ポスターセッション]


■5216〜5222 高齢者地域施設[ポスターセッション]


■5223〜5229 高齢者施設ネットワーク,コミュニティ・ケア[ポスターセッション]


■5230〜5237 商業・業務


■ 5238〜5245 スポーツ・レクリエーション


■5246〜5253 葬祭・清掃・銭湯

5246〜5253は葬儀・火葬場・墓という死と清掃工場のデザインという廃棄物処理という嫌悪施設と減少傾向にある銭湯の3つの分野に分けられる。全体を通してよりよい魅力ある施設づくりのため、市民の支持を得るためにどうすべきかの研究といえる。5246「埼玉県における火葬場の敷地決定要因について」(木下、ほか1名)は、周辺住民の同意を得るため個人的な見返りでなく道路、公園緑地整備といった基盤整備など地域全体への貢献という視点が大切ではないか。5249「東京区部の寺院墓地の実態と都心墓地の可能性について」(八木澤、ほか2名)は、公園墓地一基平均4u、都心墓地一基本当たり0.47uは地価と何らかの関係があると思われる。5250「納骨堂・墓苑に対するその設計者の意識とデザインモチーフについて」(山田、ほか1名)は、各々とデザインがどういう方々に支持されているか課題である。5251「清掃工場の建築デザインと立地特性に関する調査研究」(大窪、ほか2名)でも、設計者の魔法により嫌悪施設が魅力施設に変わり、市民にどの程度支持されているのか課題である。5252・5253「東京区内の銭湯数と利用者の動向・経営実態について」(山崎・鈴木)は、銭湯層の必要層に加え、利用者が増加するために魅力ある銭湯は地域毎でどのように異なるか明らかにすることが鍵となろう。

原田敬美(エス・イー・シー計画事務所)

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■5254〜5258 駅


■5259〜5263 設計プロセス・設計教育


■5264〜5269 空間単位・空間生成


■5270〜5275 空間配置・形態言語


■5276〜5280 コラボレーション


■5281〜5286 CAD・シミュレーション


■5287〜5291 設計情報


■5292〜5297 FM・POE(1)


■5298〜5303 FM・POE(2)


■5304〜5312 構法開発


■5313〜5322 構法の変遷


■5323〜5329 構法設計


■5330〜5339 木造構法

内容が曳舞(5330)、架構形式の地域性(5331、5332)、合理化構法(5333)、メーターモデュール(5334)、施工人工数と労務歩掛(5335)、木造軸組の長寿命化(5336)、木造軸組の増改築対応(5337)、木造三階共同住宅(5338)、畳工事業(5339)と多岐にわたることから、発表毎に質疑討論する形式とした。活発な討論がいくつかあり、多少、時間延長となった。他のセッションにもある程度共通する問題であるが、討論で以下のような指摘があった。今後の参考に敢えて再確認したい。
1) 既存文献、類似研究などに対する調査不足の指摘:5330、5332、5336、5338
2) データの出所・出典の説明不足、あいまいさの指摘:5332、5336、5338
この他、特に討論中の指摘ではないが、司会として以下の点にも注意を喚起したい。
3)図中の文字などが不鮮明、図番号のレイアウトが悪い:5331、5339
好印象は相当量の調査集計作業の結果と思われる発表(5333、5334、5335、5337)で、中でも5335は8棟の詳細な人工数調査であり、今後における精確なデータ解析とその成果発表に期待したい。

大野隆司(東京工芸大学)

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■5340〜5346 構法・ディテール

 本セッションでは、類似したものを3グループに括り、それぞれに質疑応答の時間をとった。各発表に対し質問があり活発な意見交換が行われた。最初に国際的視野での2題の発表があった。5340(堀江、ほか):中国雲南省の少数民族の民家の調査報告である。垂木受け等入母屋を構成するための構法の工夫など、既に同類の建物は少数のみしか残っておらず貴重な資料となる可能性がある。5341(中川、ほか):ユーラシア圏における柱礎の形態分類についてまとめたものである。柱礎の多様性・複雑性の特徴が示されている。次ぎに構法の体系化に関して2題の発表があった。5342(菊池、ほか):仮設構法についての全般的なまとめと分析を行い、仮設建築構法の体系的整理を行っている。5343(藤田、ほか):型枠構法についてまとめたもので、型枠構法の基礎データを示しており新構法の開発にも役立つ研究と言える。最後にディテールに関連した研究3題が発表された。5344(奈良、ほか):窓まわりのディテールについて、全般的なことから水に関する具体的な実例まで挙げ注意すべき点を明確に整理している。5345(鈴木、ほか):建築の接合部に生ずる現象をまとめたもので、接合部の概念を再認識するのに役立つ。5346(福田、ほか):床の段差について、基礎的考察を行ったものである。更に進めて、段差の問題を解決させたことで新たに発生する問題点が次の課題であろうか。

小西敏正(宇都宮大学)

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■5347〜5352 構法原理

建築構法計画分野の構法原理に関するセッションである。5347は、建築の可変性の評価についての試論であり、可変性を4種類に分類するとともに、それぞれに属する可変性の項目ごとに、グレード付けのための基準を提案している。客観性のあるグレード案とは必ずしも言えず、それに関する討論も行われたが、より一般的な評価基準確立のためのたたき台になれば、と発表者は述べており、このような研究が組織的に行われることが望まれよう。5348は、発表者が属する研究室が永年進めてきた、構法にまつわる原理を体系的に整理しようとする研究の一環であり、雨水の移動を扱っている。結論として、「雨水表面伝達現象」において、「要求からの構法把握理論」を適用できることが分かった、としているが、適切な説明とは思えない。5349は展示空間における自然採光の手法を分類整理している。この種の研究に見られがちであるが、具体的な建築の設計に資する研究とは考えにくく、研究の目的に疑問を感じるのは私だけであろうか。5350と5351は空間構成システム解釈を試みたもので、建築構法の分野の研究とは言いがたい。発表者は質問に対し、過去に同様の研究を他の分野で発表したところ、反応がなかったため、今回は構法計画の分野に出したと述べていたが、適切な対応ではないであろう。もっとも、建築学会の研究分野と研究者のグループの対応関係は、研究の細分化と境界領域の展開によって、どうにもならないところまで来てしまったといえよう。研究の分類そのものが不可能になってきているということは、総合の学問としての建築学が「正しく」発展しているのかもしれないが・・・。

深尾精一(東京都立大学)

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■5353〜5358 人体・動作(1)


■5359〜5364 人体・動作(2)

 本セッションは、ヒトの動作とモノの関係に着目した人間工学的な実験報告5編及び調
査報告1編であった。5359(綿引、ほか)は、実験住宅において高齢被験者6名の移行動作をビデオ撮影して動作分析を行った。その結果、高齢者にとっては、身体を支える手掛かり(副支持点)の存在が大切であることなどが指摘された。5360(中田、ほか)は、高齢者を対象に入浴動作を想定したまたぎ動作の実験を50名の被験者を対象に行った。その内容は、エプロン高さや床面位置を可変させる条件下で、目視判断による場合と実際にまたいだ場合の身体的負担(安心−不安感の5段階評価)などについて報告した。5361(保崎、ほか)は、屋外における高齢者の休息の実態を観察調査によって行動分析した事例報告である。着座時の姿勢分類、イス以外の着座物の分類などを報告した。5362(横井、ほか)は、成人男性20名を被験者に階段昇降動作時の動作解析や主観量などから新たな階段寸法の評価を試みたものである。階段における昇りと降りの動作の違いをどのように考慮すべきかなどの質問があった。5363(國井、ほか)及び5364(高橋、ほか)は、腰掛け式便器を対象に立ち上がり動作を補助する手すりに関する実験的研究の連続した報告である。本実験は健常成人を被験者として、動作時の手すり反力、床反力の計測や官能検査による評価の結果から、最適な手すりの設置範囲を提案している。

若井正一(日本大学)

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■5365〜5370 人体・動作(3)

5365は、住宅内で介護者が操作する車椅子の移動に必要なスペースに関する基礎的実験を行ったものである。この研究に限らず言えることであるが、既往の研究とどう違うのか、なぜそのような結果になったのかを考察し明らかにしておくことが、今後の研究の発展や結果の応用につながるものと思われる。5366は、ハートビル法の適用を受けた建物での具体的な対応状況を調査したものである。調査事例を必要数増やして統計的な現状分析を行うのか、施設利用者の使用上の問題点を扱うのかなど、明確な研究の視点が欲しい。5367は、キッチングリルの取り付け面の違いを使用状況から比較検討し、従来型と新型のそれぞれの問題点を明らかにしたものである。5368は、高速道路休憩施設におけるペーパーホルダーユニットの使用実態を調査したものである。また、5369は、折り畳み式デスクの操作性と安全性に関する機能評価を行ったものである。多角的な分析で結果の信頼性も高いが、安全性の面から二人の作業が必須の条件とする結論については、製作品の更なる改良を妨げることにはならないだろうか。これらの研究はいずれも、現実的な課題を人間工学的な側面から検討しようとしていて好感が持てる。その反面、問題点が表出しない限り現状維持に止まったり、あるいは問題点が出れば結果対応に止まるのではないかとの危惧も拭いきれない。5370は、昇降動作形態より見た階段・斜路の適切とされる寸法条件を検討したものである。階段の代表的なモデル式の多くは、(2×蹴上げ寸法+踏面寸法=一定)のモデル式と同様に、大腿角度をほぼ一定にさせるもので、斜路についてもほぼ同様のことが言えることを明らかにしている。今後こうした結果を踏まえてどのように研究が進展するのか注目したい。

建部謙治(愛知工業大学)

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■5371〜5376 人体・動作(4)

 本セッションは、いずれも多様な手すりを対象にした類似の実験的研究であったことから活発な質疑応答があった。5371(田村、ほか)は、窓に設置された手すりの高さや形状の違いがヒトの寄りかかり行動に影響があるのではないかということに着目し、大学生を被験者とした寄りかかりの評価実験を行ったものである。その結果、窓手すりの設置条件の違いと寄りかかり行動に相関があることなどが指摘された。5372(布田、ほか)は、手すりの有り無しによる立ち座り動作の違いについて、高齢者と健常成人を被験者にして動作実験を行った。L型手すりの評価が高かったことなどが報告された。次に5373から5375までの3編は、立ち座りを補助する斜め手すりに関する連続した研究報告であった。まず、5373(中島、ほか)は、昨年来報告した実験装置を使って斜め手すりの有効性について検討してもので、手すりの傾き角度の好みが高齢者と若年者でかなりバラツキがあったことなどが指摘された。その報告に引き続いて、5374(田中、ほか)は、斜め手すりの傾き角度の違いによる握り位置、手すりにかかる荷重等への影響について、高齢者を被験者に実験を行った。その結果、傾き角度が大きくなるに従って、握り位置が低くなるなどのいくつかの特性が指摘された。5375(加藤、ほか)は、前報の2編の内容とやや異なり、棚板形状の手すりを対象にして、その使われ方について実験を行ったものである。本実験は、高齢者の男女18名を被験者に棚板状の手すりの幅と設置条件を変えて、立ち座りの動作実験を行った。手すりと壁に間隔があると有効であることなどが報告された。最後に、5376(荒川、ほか)は、駅構内において不特定多数が使用する階段の手すりの太さ(直径)に着目して、まず山手線管内の実態調査を行い、その結果を踏まえて4種類の太さの手すりを巣鴨駅に仮設して、その場を歩行する主に高齢者を対象に昇降時の握りやすさの評価について聞き取り調査を行ったものである。

若井正一(日本大学)

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■5377〜5383 知覚・認知(1)

5377(村川、ほか)は、96年度の実験に続き、限定空間における「対話型」指示領域の三次元的な広がりについて検討している。サンプル数を増やすことによって実験結果の信頼性を増すとともに、指示領域分節における個人差についての分析にも期待したい。5378(伊藤、ほか)は、二人以上の小規模集団が形成する対人距離について検討し、実際の計画に反映させることを意図した積極的な研究である。しかし、通路幅の提案まで試みている点については質疑がなされた。5379(熊谷ほか)は、煙中で照明条件が異なる場合での色光識別閾値について検討したものである。ここでは、実験装置が実際の火災状況をどの程度反映したものであるかなどについての質疑がなされた。5380(吉田、ほか)は、カメラの絞りとシャッター速度によって従来の方法の改善を試み、良好な成果を得ている。黄変化矯正試作色事典の作成という今後の課題に向けての着実な進展と言える。5381(長澤、ほか)、5382(加藤、ほか)の連続研究は、音環境シミュレーションにパーティクルモデルを導入した魅力ある研究である。音の持つ波動的特性とパーティクルモデルの持つ粒子的特性との違い(長短)を生かした今後の発展が期待される。5383(越智、ほか)は、建築外部空間に対する情緒変化の分析に脳波解析手法を応用したユニークな研究である。ここでは、外部空間の評価に脳波を持ち込んだ理由や、研究の視点(対象なのか方法なのか)などについての質問がなされた。

大佛俊泰(東京工業大学)

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■5384〜5390 知覚・認知(2)

<待たれるユニバサルデザイン対応の研究資料>
発表概要:昔から設計者の心得もしくは秘伝等にもある言葉、「目安の寸法ですからゆらぎがあります」、「子供の時の記憶では空間を大きく感じる」、「初めての道は遠く感じる」、「窓を切り開くと空間が広がる感じになる」、「天井が高いと室を大きく感じる」、「家具配置で広さが生まれる」等と空間創出者が会得していた手法を、研究では実験によって確認し、これら知覚現象を物理数値で表出しており、設計の好資料を生み出している。これら論文の研究者はそれぞれに、(5384)森 隆行ほか、(5385)力安 拓ほか、(5386)小島千知ほか、(5387)丹波俊介ほか、(5388)飯田晃子ほか、(5389)橋本雅好ほか、(5390)谷口久美子ほかの方々である。
討論:実験手法につき「小学生に縮尺図を渡しても果して理解しているか」、「実物の街
路では、誘引要素も多様であろう具体的に知りたい」、「ホームページ導入実険は意欲的だが調査画面はどのようか、被験者の属性把握は」等の知識交流があった。今後の希望:被験者の属性を広げて、空間を同時共有している高齢者や幼児にも向くデーターが望まれる。4月から介護保険法施行となり、在宅介護など小さな部屋に納まり、生活圏を縮小していく高齢期の知覚にも反映出来る研究が目下の急務と言えよう。
研究発表:会場で聴覚障害の研究者に何人も出会った。研究協議会では手話通訳がつき、めざましい活躍ぶりであった。研究発表にも補佐があったのであろうか。健聴者に分かりやすい発音に同時に吹替えてくれる人でもよいので、友人なら出来ることであろう。心なしか会場での聴覚障害者は昨年と違い明るく生き生きしていた。障害者同格参加の研究にすれば、確かな進捗も見られるのではなかろうか。

吉田あこ(実践女子大学)

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■5391〜5396 知覚・認知(3)


■5397〜5402 知覚・認知(4)

研究計画の立て方についての態度の差が、実験計画や分析方法に反映され、6題がとも実験による研究であるにもかかわらず、研究自体の意味や有用性を大きく左右する結果になっていた。5397(間仕切り位置と居場所)、5398・5399(格子の視覚特性)、54OO(トンネル空間の期待感)、54O1(壁面後退街路の形状意識)、54O2(ゆらぎ路面の心理効果)でありこれらはすべて実大モデルまたは模型空間シミュレ−タ映像による実験結果の分析であった。特に、5397は研究目的があいまいで問題点が絞れていないため折角の実験結果の意味が弱くなっている。また、5401では綿密な実験計画にもとづく実験結果が、複雑な現実の景観問題を考える際にどのような意味をもつのかなどの疑問が生じた。それに対して 5398・5399の一連の研究は、現実の場面での適用を念頭においた研究計画がたてられており、そうした研究計画に基づいて実験結果が分析されているため研究結果に説得力がある。54OO・54O2は現実場面への適用という意味では研究結果に対する説得力に欠けるが、研究目的が明確で絞られているため、主旨が納得されやすい。以上、建築計画としての有用性という視点から、各研究の目的と研究態度や分析方法などについて比較検討してみたものである。

北浦かほる(大阪市立大学)

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■5403〜5410 歩行・行動・群集(1)


■5411〜5417 歩行・行動・群集(2)


■5418〜5425 歩行・行動・群集(3)

建築計画ニュース大会特集号の新しい執筆要領にしたがって、まずは大会の雑感から。
1999年度大会(中国・広島大学)は、学術講演論文発表題数が6、158題で初めて6千の大台に乗った。10年前(九州・熊本大学)は3、971題、20年前(関東・東海大学)は1、953題、30年前(北海道・藤女子大学)は1、116題、手元に資料があるのでついでに書くと、40年前(近畿・京都大学)は346題、50年前は春(東京)が66題、秋(仙台)が53題の分散開催であった。30年以上も昔のことはともかくとして、多くの現役会員の記憶にある20年前以降をとってみても、発表題数の増加はすさまじい。そろそろ頭打ちかとも思うが、2000年度(東北・日本大学)は20世紀最後の大会で、西暦2000年の魅力、企画の魅力、開催地の魅力の三拍子が揃い、長引く不況を乗り越えて記録を更新するのは間違いないと思われる。
 このままでは、いずれ大会が開催できなくなると長年言われ続けながらも、何とか無事開催できているのは、関係者各位の涙ぐましい努力があってのことであろうが、その苦労は察するに余りある。また会計上は、参加者が多いほど都合がよいかもしれないが、会員サービスの点からはすでに限界に来ているように思う。発表時間が今ほど短くなると、制限時間内に発表が終わる人がほとんどいないのは、もはや発表準備不足のためとは言い切れまい。また、自分が参加したいセッション・協議会・PDが裏で重なることが半ば常態化しつつあるのはご承知の通りであるが、個人的に毎年困っていることがある。私の専門である安全計画(特に避難関係)は、防火と建築計画の両部門にまたがっているが、当然ながら親委員会が異なる両部門間の調整は行われないし、発表場所もたいてい全く別の建物になる。特に1999年度大会では、会場中央にある「ぶどう池」をはさんで両部門の会場が数百mも離れていたため、一往復しただけで防火部門への参加をあきらめてしまった。また、大会でしかお目にかかれない方々と最後までお会いできないまま、大会日程が終了したことにも悔いが残る。
 ずいぶん脱線してしまったが、最後に、本来この欄に書くべきことにも少しふれておきたい。私が司会を担当したセッション(歩行・行動・群集)関連の研究は歴史が古く、かつ今も重要なテーマである。ここ数年、発表メンバーが固定する傾向があるが、見方を変えれば、昨年までの継続研究や参考文献を読み返すことで一段と理解が深まると共に、新たな発見をする喜びもある。また群集の研究者にとっては、大規模化した大会は混雑や待ち行列を体験できる貴重なフィールドである。そう考えれば(positive thinking)、大会もまた楽しではないか。

吉村英祐(大阪大学)

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■5426〜5431 地球環境


■5432〜5438 光環境


■5439〜5446 空間モデル


■5447〜5451 内部空間


■5452〜5457 内外部空間


■5458〜5463 ファサード

 5458〜5462までの5編は東京電機大学船越研究室のグループであり、長期にわたる心理量分析・数量化理論を基調とした報告である。シリーズ研究のため、その研究のスタイルは似ており、定式化された様相を持っており、それなりの研究の構えを見せているので評価できる内容となっている。いささか被験者の数が少ない事や、無理な推論等が若干伺えるが、基本的な方向性は認識できる内容となっている。しかし、シリーズ29にもなると当初の研究のスタイルとはかなり異なった内容となっているだろうし、対象となる事象についてもその形態は違ったものになってくるのではないかと予想される。
 次の都市広場のセッションではシリーズ53というのも見受けられるが、ある程度の長さのシリーズを組んだら、シリーズ名も変えていって良いのではないかと考える。シリーズが長いとそれだけ蓄積のある研究と見られるはずであるが、必ずしもそうでないものもありそうである。なお、研究自体の内容では、日本的感覚のシリーズ研究で日本的な要素と非日本的要素を指摘していく実験は興味のある内容である。最終的にその実験の結果から、日本的感覚を与える要素を5つ抽出していく過程は評価できる内容となっている。5463の地域にあうドーム・スタジオの外観イメージを作り上げていく研究は、いろいろな分野で今後活用できる方向を示したものであると感じられた。

芦川 智(昭和女子大学)

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■5464〜5471 都市・広場


■5472〜5477 シークエンス

 5472〜5477は建築空間のシークエンスに関連する発表であった。すべて、意欲的な論文であり、今後の発展が期待されるものであった。5472は、美術館を対象とし、開口部をもつ内部空間におけるシークエンスの記述方法を、「広がり」と「方向」の指標をもとに提案している。調査は、対象空間を歩行しながら注視したものを連続的に発言しテープレコーダに録音するプロトコル調査、CAD上での対象空間の連続的視点変化にともなった連続パースによるアニメーションを使用したアンケート実験等によって行われたものである。5473〜5475は集合住宅地の歩行空間の研究で、近年建設された8地区を対象に、人間が感じる雰囲気と空間構成の両者のあり方を数量的に明らかにしようとするものである。5473で歩行空間の物理量を把握し、5474では心理量と物理量との関係を求めている。5475で、各歩行空間について変化点間ごとの心理量変化に、物理量の変化をグラフに布置し比較することで、心理量と物理量とのシークエンシャルな相関関係を把握している。5476〜5477は時刻の推移に伴う建築景観の図と地の反転に注目し、「東京国際フォーラム」を対象に、反転現象の実体とその現象の起きる要因を述べるとともに、視点遠方と視点近距離の両視点について、隣り合う2つの構成要素が図と地としてどのように見え方が分化するかを調べている。

熊谷昌彦(国立米子工業高等専門学校)

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■5478〜5484 街路空間

5478〜5480(太田、三戸、小島、ほか)は、街路空間を構成する店構えと看板の評価構造について考察している。調査対象の神楽坂通りを被験者に歩行させ、「神楽坂らしい」と「好きな」店構えと看板をデジタルカメラに撮影させる評価実験を行っている。5478においては、撮影された写真数の分布から、その評価特性について考察している。5479〜5480では、数量化。類によって、評価と物理的要因との関係について分析している。個々の店構えと看板に関する分析が主で、まちなみに対する考察が希薄であるとの指摘があった。5481(木村、ほか)は、講演者が欠席のため発表されなかった。5482〜5484(恒松、松沢、菊田、ほか)は、街路景観の「ゆらぎ」度について考察している。5482では、街路景観を構成するエレメントの属性によるクラスター分析から、対象地区を選定している。5483は、街路のエレベーションを構成するエレメントの物理量から「ゆらぎ」度を算出することで、街路空間を定量的に分析している。5484では、街路のエレベーションに対して行った評価実験によって得られた心理量によって、考察を行っている。前半の物理量と後半の心理量の関係について、未だ分析されておらず今後の発展が望まれる。

越田益生(東京理科大学)

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■5485〜5493 景観


■5494〜5500 子供・老人の空間認識


■5501〜5506 空間インターフェイス

 本セッションでは、テーマにとらわれずに、様々な内容の研究が発表された。そのため、質疑・討論は各研究発表に対してなされ、セッション全体での討論は特になされなかった。
 5501(苅谷、ほか)は、構成面からの評価値と立体角比(既報)によって、黄金分割の意義を考察している。その結果、黄金比を形成しうる心理量判断の状態、黄金分割が効果的な状態を示している。5502(佐々木、ほか)は、空間の動きへの欲求と、欲求の解決策としての建築の動きとの関係を導き出している。変化させたい・させたくないという欲求と変化の期間(長期・短期)の組み合わせにより、それぞれ何を対象に操作しているかを整理している。5503(吉田、ほか)は、集合住宅の窓の対面状況を調査し、視線によるプライバシーの被害意識との関係を整理している。5504(石川、ほか)・5505(岩田、ほか)は、逐次建替計画進行期間中の建物総立面面積と総床面積との関係をシミュレーションし、建替計画の様々な条件に対する最適解を検討している。5506(青木)は、「計画行為の責任」という概念についての基礎的な検討を行っている。責任追及理由の論理形式を整理し、責任追及理論の根底条件を得ている。この基礎的知見によって、責任追及の困難点を明瞭に指摘している。

山口 満(信州大学)

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■5507〜5512 心理・意識

本セッションの6題の発表論文には、内容的に「心理・意識」と括るべきでないものが3題もあり、プログラム作成段階で各論文の内容を理解することを怠っているように思えた。その結果、討論が大変しづらいものとなった。今後改善されたい。
5507は設計行為の説明記述に関するもので、その研究フレームを整理したもので今後に期待したい。5508は服装とインテリアとの相互作用を検討したもので、空間設計を物理的空間のレベルだけではなく、空間内の人間や服装との相互関係のレベルまで視野に入れて設計すべきことを示唆している。会場から都市空間でも同様の発展を期待したいとの発言があった。5509と5510は、伝統的食物と空間との関係を、発話の名詞・文の集計分析から検討したもので、食行為ないし食文化と建築空間が対応していることを見いだしており、建築設計の枠組みを食文化との関わりで理解すべきという新たな視点を提供しているように思える。5511と5512は、地球環境的視点に立って「共用空間」と通風の関係を、伝統的空間、近代建築空間、コンペに現れる未来志向空間の3タイプの空間事例から分析・把握し、新たなデザイン論を提案したもので、グローバルで骨太なデザイン論への発展が期待できる。
 以上、6題の発表論文は、それぞれ関心・方向性が異なるものであるが、内容的にはいずれも優れた研究である。こうした新たな研究を位置づけ受け入れる能力が、学会という組織にあるのか無いのかが問われているように思える。

青木義次(東京工業大学)

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■5513〜5522 安全計画・法規


■5523〜5531 環境行動(1)


■5532〜5539 環境行動(2)


■5540〜5546 空間認知


■5547〜5551 ウェイファインディング


■5552〜5558 海外居住(1) マレーシア,ベトナム


■5559〜5565 海外居住(2) アジアの高密度居住と保存再生


■5566〜5572 海外居住(3)


■5573〜5578 海外居住(4) 中国・韓国


■5579〜5586 沖縄の集落・住居


■5587〜5592 地方性・伝統性

このセッション6題では、地方性・伝統性をどのように捉えるのか。いずれも現代的視点によって考察がなされている。大都市やその近郊の景観変化が激しいのに対し、歴史的な町家や農山村においては、機能的諸要求の変化に増改築されながらも空間構成には確固たる地方性、地域性を残していることが顕れている。農山村では、備中地方の草葺き民家を対象に、時間軸と空間軸から間取りの在り方を追い、そこに文化性や地理的条件がどのように働いたのか、そしていまだ生きている「家相」というインビジブルな禁忌や限定によって、間取りの大きな変化を抑制し地方性や地域性を残していることを確認している(5587と5588)。町家の例では、三条の町家の職変化に対し、どのように間取りが追随し使い勝手が変化したか調査・分析があり、職変化によって改装が行われても空間の伝統性を壊すほどの変化はせず、機能的な対応によってその空間を住みこなしている。ここでは「空間の許容性」、「公私空間の区別」が様々な変化に対応でき地方性を保持できることが解る(5589と5590)。独立住居では、人が住んだままでの文化財としての古民家がどう生き続けられるか、数事例からの考察により「すまい手の伝統理解(非物的)」や「私的空間の補償(物的)」などが必要であることを指摘している(5591)。形態として「地方性を残す」ことは、日本各地それぞれの風土に適応し、延いては現代的要求のエコロジーに繋がる(5592)。
このように地方性・伝統性をめぐっては上記「 」のようなキーワードが抽出され、その存続に関っている。伝統的な重層が、現代生活をも包含し続ける力をもっていることに注目したい。

永瀬克己(法政大学)

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■5593〜5600 伝統住居・集落の変容・再生


■5601〜5605 住宅地の安全性


■5606〜5614 住宅地のコミュニティ形成


■5615〜5624 領域・交流・活動の広がり


■5625〜5631 コレクティブハウジング


■5632〜5638 居住者による環境形成

7編のうち6編(5632〜5637)が、住み手参加による居住環境の形成手法を扱った論文、1編(5638)が、住宅共同再建事業におけるまちづくり協議会の役割と効果に関する論文(鈴木・京都工芸繊維大)である。さて延藤(千葉大)らのワークショップによる環境共生型戸建て住宅地づくりの方法はユニークである。そこには住み手に加えて、環境形成のもう一方の担い手となる専門家、業者等のつくり手が同次元で参加している。都合10回に及ぶワークショップ(街づくり・家づくり塾)を通して、住み手とつくり手が意識の共有化をはかれる意義は大きい。しかしその一方で、住み手側とつくり手側の環境形成に対する意識のずれが目立つこと(そのこと自体を互いに理解することが大事でもある)、またワークショップの回数を重ねるごとに参加者が入れ替わり、知識の共有化に阻害を生じた、などの課題もあることが報告された。会場からは、完成後のフォローアップについて、一般居住者とワークショップ参加者との間でのちがいなど、今後の郊外型住宅地の新しい供給方法を期待しての質問がいくつか続いた。横山(熊本大)らの領有(自分のもの意識による土地の長期的自己管理)の考え方による集住環境の形成は、集合住宅居住における良好な環境形成のあり方に本質的に関わる重要な概念である。筆者らは集住居住者の共有空間における発達した自分のもの意識が、環境に対して上手に働きかけることによって、快適な集住生活、コミュニティ環境が形成される可能性が大きいことを仮説としてもち、集合住宅地のさまざまな場面でその検証を試みている。下手をするとだらしない使い方や安全性に欠ける状況を作り出しかねない側面をも合わせ持つ概念なのだが、それを出過ぎることなく上手くコントロールしながら、居住者の自分のもの意識を今後どのように育てて良好環境の獲得に結び付けていくのか、注目したい。

野口孝博(北海道大学)

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■5639〜5646 戸建て住宅


■5647〜5653 集合住宅の外部空間

このセッションでは集合住宅地における外部空間をテーマにした様々な研究発表がなされた。中庭の意味(5647)、年齢層別の利用状況(5648)、プレイロットの実態(5649・5650)、こどもの遊び空間(5651〜5653)が具体的な研究対象に取り上げられている。集合住宅研究には単位としての住戸の計画、住戸密度と相互の関係を体現する住棟の計画、コミュニティーのあり方を規定する住区の計画といったようにそれぞれの研究分野が設定できるが、ここでの研究はみな集合住宅の居住者が如何に心地よい人間関係を保ちながら生活ができるかをといったる住区のあり方を考える際に有効な情報を提供している。都市居住者の人口が今後急速に増加する傾向は、先進国と開発途上国共に地球規模で重要さを増してきている。そのなかでも、集合住宅は都会人の住環境を左右する大きな役割を担っている。大会の研究発表セッションでは、この様な広い視野の討議をする時間的、心理的な余裕はないが、それぞれの研究発表が次世紀の住環境のあり方を常に見据えたものであることを信じたいものである。

長澤 泰(東京大学)

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■5654〜5659 住戸・住戸まわり空間

 本セッションは、中高年夫婦の就寝空間、女子大生の自室における家具配置、住戸内のごみ置き場、庭の使い方と意識、集合住宅のベランダ植栽、と多岐にわたる内容であった。それぞれに興味深い報告であったが、残念ながら討論はあまり活発化しなかった。
5654(山崎)は中高年夫婦の就寝空間に関する質問紙調査をもとにその実態と希望の関係から分析し、夫婦の同室就寝・別室就寝は、異変時対応と平常時安眠、コミュニケーションと自律的時間、の相互バランスの結果であると指摘している。今後の住居計画への展開に期待したい。5655・5656(関口・古賀・槙)は女子大生の自室を想定した家具模型配置実験により、家具配置理由と家具配置パターンを家具種類別に分析している。'97年からの継続研究であるが本年度報告には研究の目的についての記述がないため、得られた知見を室空間計画とどの様につなげていくのかが不明瞭であった。5657(松田・中尾)はインターネットユーザーを対象とした住宅内のごみ処理に関する調査から、ごみの置き場とその問題点を明らかにしている。ごみ処理の自治体対応が一様でない状況下、家庭におけるごみ処理を空間的にどう対処していくのか、詳細な研究への進展を期待したい。5658(藤田・梅津)は八戸市の都市住居における庭の空間構成に関する'93年からの継続研究である。その面積構成割合に近年変化がみられるテラスと外部常設物干しスペースの使い方や住居内外空間との関係から、庭空間の変容は住宅内部の変容や居住者の意識変化が一因であることを明らかにしている。対象住居の敷地や庭の規模等の物的データや世帯属性に関する情報もほしかった。5659(野口・仙田・矢田)は集合住宅のベランダ利用を植栽の点から捉え、ヒアリングと観察調査から作成したベランダ平面図を用いて分析をしている。植栽面積とベランダ面積及び形状との関係、べランダ広さの満足感と植栽可能面積の関係を考察している。植栽と他のベランダ利用(洗濯物干し等)や住戸内空間との関係等、ベランダの計画・設計のための、今後の発展が期待される。

浅沼由紀(武蔵工業大学)

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■5660〜5668 住みこなし

 まず、全9題の研究発表が梗概に沿って行われ、その後、質疑討論へと進んだ。主な内容は以下の通りである。5660〜5661「戦前横浜『洋館付住宅』の住まわれ方に関する研究」では、「洋館付住宅」の敷地面積はどのようになっているか、また、洋館と続き間との接客内容の違い等に関する質問がなされた。5662〜5664の「計画された居住環境の変遷」の一連の研究発表に関しては、増改築に対する捉え方(否定的・肯定的)、居住者のプラン選択に際してプロトタイプを使った意図等に関連した質問がされた。5665〜5666の「住宅営団・三和町住宅地の変遷と居住プロセスに関する研究」については、土地・建物が居住者に払い下げられた後の移管・管理先に対する質問がなされた。5567〜5668の「戦前公営集合住宅における住みこなしに関する研究」に対しては、幅広の敷地内通路としての外部共用空間形態の利点と今後の可能性に関する質問、増築のルールの内容に関して、などの質問が出された。
全体として、「住みこなし」に関する様々な角度からの研究発表が行われ有意義なセッションであった。しかし、大会最終日の午後のセッションということから来るせわしなさも手伝ってか、個々の発表に対する質問と応答に終始しがちとなり、あまり議論を深めるほどには至らなかった。また、会場が明るかったせいか、OHPの文字をはっきり映し出すことが出来なかったようで残念であった。

山崎さゆり(調布学園短期大学)

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■5669〜5677 更新・増改築


■5678〜5683 ライフスタイルと住居(1)


■5684〜5689 ライフスタイルと住居(2)


■5690〜5696 ライフスタイルと住居(3)


■5697〜5702 高齢化と住居(1)


■5703〜5709 高齢化と住居(2)


■5710〜5714 高齢者と生活行動


■5715〜5721 高齢者集合住宅


■5722〜5726 高齢者の居住環境

5722(大塚、ほか)はシルバーピアを、5723(李、ほか)は高齢者居住施設を、5724(仁瓶、ほか)はシニア住宅を対象として、共用空間の使用実態と居住者相互のつきあいの形成状況との関係について、運営方法と空間計画の内容から検討している。5722、5724では、居住者向けのアクティビティの企画・プログラムを行うことが共用の場が活性化するうえで有効であることが述べられた。同時に、アクティビティへの参加に消極的な層も存在することに注目し、自然発生的なつきあいを誘発する共用空間のあり方も大きな課題であることが指摘された。そのための共用空間の計画手法としては、位置は居住者の住戸・居室に近く(5722)、構成としては、小スケールで、半閉鎖的な空間が望ましい(5723)という方向が提示され、議論を行った。5725、5726(田中、老田)では、今後高齢社会となるニュータウンの居住者を対象とした意向調査を通じて、既往のニュータウン計画では日常的な生活施設は充足されているものの、医療施設、福祉サービスが不足し、供給課題であるという実態が報告された。継続的な検討と、その成果が今後の地域整備計画に反映されることが期待される。

小川 正光(愛知教育大学)

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■5727〜5734 集住体の計画(1)


■5735〜5741 集住体の計画(2)


■ 5742〜5749 集住体の計画(3)


学術講演セッション報告の新形式の試行について

 建築計画部門における学術講演の司会者の方々には例年、御担当いただいた範囲の発表に対して300字以内でコメントの執筆をお願いし、それらを建築計画ニュース大会特集号として発行してまいりました。しかし、ここ数年は原稿の集まり具合が思わしくなく、一部未入稿のまま発行したり発行が遅れる、字数の制約から踏み込んだコメントが書きにくい、内容が目次化している等の問題点が指摘されております。このような状況を少しでも改善すべく、1999年7月14日の建築計画委員会におきまして大会特集号のあり方を検討しました結果、今回は特集号の執筆要領を以下のように見直して、試行することになりました。

●執筆要領

  1. 形式・内容とも自由とします。大会の研究発表に対する御提案や御意見を書いていただいても、また従来の形式(各発表に対する短いコメント)を踏襲していただいても結構です。
  2. 字数は600字を基準としますが、字数制限を気にせずお書き下さい。
  3. 書きたい人に書いていていただくという趣旨から、締め切り後も原稿の督促はいたしません。
  4. 原稿は、建築計画ニュース大会特集号として従来通り建築学会図書館に配備するとともに、建築計画委員会のホームページにも掲載いたします。
  5. お名前と御所属を必ず明記してください。また、タイトルが必要でしたら適宜付けてください。
  6. 原稿は建築学会事務局・榎本和正氏宛にフロッピー(テキスト形式)で郵送、または電子メールでお送りください。
  7. 原稿締切は10月末日とします。締切日を過ぎても督促はいたしませんので、掲載を希望される方は各自で締め切り日にご注意願います。

 その結果、下記のように多くの方々から原稿をお送りいただきました。字数制限が昨年までの300字から600字へと倍増したため、かなり踏み込んだコメントをいただけましたが、その一方で、昨年までよりも抜けているセッションが多くなっております。今回の試行に対しまして、皆様のご意見を賜れば幸いに存じます(事務局enomoto@aij.or.jp)。

建築計画委員会
委員長 柏原士郎

 

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