■万代池公園の概要

 万代池公園は大阪市住吉区にあり、閑静な住宅地である帝塚山と万代の間に位置する。路面電車が走る阪堺電軌上町線と主要道路であるあべの筋に挟まれている。周辺施設として幼稚園や特別養護老人ホームが隣接している。
 公園の規模は面積が約44,100uで中央の池の周りに1周約728mの緑豊かなみちが巡る構成となっている。
 みちにそって49脚のベンチが設置されている。ベンチの形状は背もたれのあるものや背もたれのないもの、円形のものがある。またベンチの設置場所は、みちに対して池側か、外側かに分かれる。
 この公園には子どもから高齢者まで様々な年代の人が近隣から集まる。そして公園のベンチでは設置場所や形状、そこでの着座姿勢との関連から多様なアクティビティがみられる。


万代池


公園のエリア区分
(図をクリックすると大きくなります)
■会話
 公園や広場に面しているベンチ(エリアd・eやエリアg・h)において女性の会話が多くみられた。特に、広場に面した比較的静かな場所(エリアg・h・i)では、夕方の占有率が高く会話が多くなる傾向がある。

 また会話などの人とコミュニケーションをするアクティビティは、みちに向いて座り、他者との交流をとるソシオペタルな関係でされることが多い。
■休憩
 主要入口から多少離れた静かな場所(エリアb・j・k)で、休憩が多くみられる。
 特に高齢者は日常的な散歩のルートとしてこの公園を利用している人が多く、休憩場所としてベンチが利用されていた。

■読書
本・新聞を読むアクティビティも、休憩と同様、主要入口から多少離れた静かな場所(エリアb・j・k)で多い。
 また公園の利用者が少ない時間帯には写真のようにベンチに寝ながら読書をする人もいる。
■飲食
 休日に家族で一緒に食事することも多くみられたが、写真のように平日でも30代のスーツ姿の男性が弁当を食べるためにベンチを利用していた。
 飲食、読書・新聞、体操、たばこなどでは、池の方を向き、みちを歩く他者との交流をもたない、もしくは少ないソシオフーガルな関係になりやすい。
■将棋
 将棋をする人が多く、ベンチの中央に将棋盤を置き両端に跨って将棋を指す独特な利用方法があり、長時間占有している。将棋は公園への主要入口が近く、公園に面しており、人が集まる賑やかなベンチ(エリアd・e)において、よくみられるアクティビティであり、主に50代・60代の男性にみられる。

万代池公園のより詳しい研究報告:
森一彦,西脇智子:池のある公園におけるベンチの使われ方に関する研究―着座向きと行為内容の関連―,日本建築学会計画系論文集,585,71-77,2004



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