文・写真/松原茂樹(大阪大学大学院)

■黒田庄・ひだまりの概要
 兵庫県西播磨地方にあり周囲は山・川・田畑に囲まれた民家活用の通所介護施設(いわゆる宅老所)である。築80年以上の農家を改修し、テラスなど設けているが内部の雰囲気はそのまま残している。定員は10人、1日あたりの利用者は6名・職員は4名であるが、利用者が活動するスペースだけでも150u以上はあり、他の宅老所に比べてかなりゆったりしている。内部は田の字型の一角にテーブルと畳をしつらえ、それ以外にも作業(織物)スペース、土間スペースなど多様な空間としつらえを用意している。理念は、自分が主体的に何かやれたという誇りにつながるよう気持ちを動かすことである(具体的な過ごし方は写真参照)。何度も訪問しているが、そのたびに利用者の気持ちを察して職員がさりげなく気配りをし、利用者がゆったりと過ごしているのが実感できるところである。

■外観
 左半分を利用者が活動するスペース、右半分を事務スペースとしている。2004年にテラスを設け、中から外に出やすいようにしていている。気候がいいときにはテラスでおやつを食べたりして過ごしている。


ひだまり外観





しつらえ

■内部・基本的な過ごし方
 手前にみんなが集えるようテーブルを設け、奥に畳スペースを設けている。それ以外にもいくつかソファも設け、多種多様のしつらえが整えられている。おしゃべりばかりして過ごす人もいれば、播州織り(この地方に昔から伝わる織物)をする人など職員が利用者の気持ちをくみ取り、利用者が居心地よく過ごせるよう気配りを絶えずしている。


■播州織り
 この地方に昔から伝わる播州織りなどを行う作業スペースである。糸や布などは工場などからいただいたものが多い。ここにやってきた当初は精神的に不安定であったが、機織りを薦めてから夢中になり、1日のほとんどをここで過ごす人もいる。




■職員の活動
 ここで働く職員はもちろん介護を行うが介護ばかりで1日を終えることはない。ここでは高齢者と共に生活することを重視し、介護の能力よりも生活力がある(生活の工夫や気配りができる)職員を採用している。職員はすべて女性で、年齢は30代から60代である。
 他の施設で見られるような職員と高齢者の上下関係はなく、かといって水平関係とも言えないようなお互いがここで生活するパートナーの関係である。
 職員は手があいたときには自分が好きに過ごすことができ(もちろん高齢者の様子を見守っているが)、手芸・織物などして過ごしている。



■読書
 昼食後は昼寝の時間に当てる利用者が多い。しかし生活習慣として昼寝をしない利用者は玄関に出て読書をして過ごす。1人ひとり生活習慣が異なり、1人ひとりに対応できるよう余裕ある面積と多様な空間やしつらえが整えられている。



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