集合住宅フォーラムの趣旨    198512

生活を取り巻く様々な局面で“量から質の時代へ”といわれて久しくなる。住宅においても一定水準の住空間の確保から、より豊かなライフスタイル実現の場に向けて、ニーズの中味は多様化し、より高度なものが求められるようになってきた。それに対応して、住宅づくりの分野でも様々な試みがなされるようになってきている。
しかしながら、よりよい住宅づくりに向けて解決されなければならない問題はまだまだ山積している。さらに、問題が複雑・多岐にわたるようになってくるにつれ、研究や計画・設計の対象もより専門化・細分化されていく傾向もあり、ともすれば全体像や、より重要な問題を見失う恐れが無きにしもあらずといえよう。さらにまた、住む側からみれば様々な媒体を通して多量に流される住宅関連情報に振りまわされる懸念もある。
こういった状況にあって、よりよい住宅のあり方を見つけ出していくために、関連する様々な分野から情報や各々の捉えている問題を持ち寄り、相互に素直な意見交換や議論を行い、大切な問題の再発掘をし、新しい展開のためのヒントや可能性を生み出せるような素地となる「場」の必要性は高いものと考えられよう。
このような考えから、本フォーラムは、住宅づくりに関係する人々が、できるだけ広い範囲の立場から(研究者、実務者、居住者等)、集まり、話し合うことをねらいとした「場」として設けるものである。そこでは、研究者から見れば研究成果の社会的還元のための一つの機会となるとともに、社会の現実を知ることによって新たな研究の展開にヒントを得ることが期待されよう。一方、実務者あるいは居住者の立場から見れば、現状についての問題を提起し、情報を交換する場となろう。このフォーラムはそこでの議論を通じて、問題を相互に認識し合い、新たな示唆や展望を得、それぞれの立場において住宅づくりに資することが期待されるものである。

集合住宅フォーラムWG