4.3 施工図等に関する某社でのディスカッションの紹介 | ||
■施工図について 「施工図を書けるようにする」ということについて、以下のように考える。 目的:現場職員が施工図を読めて、チェックでき、その中の問題点、潜在的不具合を検出できるようにすること。すなわち、施工図をただ大工さんに渡すだけでなく、施工図の不足情報を補って説明、理解させることができる。 この目的達成のための手段の一つが施工図を自分で書いてみることで、書いた経験がなければ読むこともチェックも問題点の検出もできない。現場で内作する(自分たちで書く)ことを目指している訳ではないと理解します。内作は多くの時間を必要とし、ほかにやらなければならないことが山ほどある現在、決して得策ではない。 施工図研修は、書くことの研修ではなく、書くことを通じて施工図が読め、理解し、チェックし、不具合の検出ができるようにする。この納まりはなぜ良いのか、または悪いのかが理解できるようにする。さらに、レベルアップをするためのきっかけと位置づける。 施工図研修の手段は、施工図作成だけでなく、標準図、ディテール集を使って性能、適用範囲などを勉強する、それを実際の現場で確認する、などがある。また、設計者の知識、技術もそれ以上に重要で、設計段階で潜在的不具合の無い図面ができれば、あとは施工の不具合防止である。 ■施工図作成の重要性 昨今、品質云々が声高に取りざたされて、特に若い現場管理者の管理能力低下が危惧されております。 これは、「書類を充実」させたりとか、「チェック体制を強化」したりとか、表面上の改善ではもはや対応できないほど根深い問題であると思われます。若い管理者が能なしかと言うと決してそんな事はなく、優秀な人材も大勢います。 しかしそうはいっても多くの若い管理者が能力を発揮出来ていないことは認めざるをえません。どうしてこんな事になってしまったか? 多くの人が既に気がついているように、施工図作成業務を現場から取り上げてしまった事に問題の核心があるのではないでしょうか? 確かに施工図作成はめんどくさいし手間もかかります。しかし納まりとか品質に直接関係する重要なポジションである事も事実であります。(実際に自分で施工図を描いて現場を納めた人はこの意見に大方賛成であると思います。) つまり何が言いたいかと申しますと、施工図作成業務を現場のそれも社員の手へ戻して頂きたいということです。すなわち我々が当たり前の業務を当たり前にやっていれば品質はおのずから確保出来るのでないで しょうか?(効率ばかりを優先し現場からもっとも大事な業務を奪った会社の上層部?には猛省をうながしたい。時代の潮流?といえばそれまでだが、、、) もし施工図作成業務を再び現場に戻すと一件あたりのコストが上昇するのはさけられないでしょう。しかし後々の損害を考えると今時間とお金をかけて対処しないと大変な事になると思います。事実大手のある企業では実際に施工図作成は現場にシフトしているそうです。これも危機感がつのり実行に移したからでしょう。 語学の学習では読んで聞くだけでは絶対にマスター出来ません。その他に「書く」という行為が絶対に必要なのです。これは我々の業務にも相通ずるのではないのでしょうか?今はまだ施工図を知っている人間が会社にたくさんいるので重大な問題とは気が付きにくいかもしれない。しかしその人たちもいずれ退職するのです。 外注に頼んだ方が安上がりなのは充分承知しています。外注に頼んでいい加減な施工図で失敗した経験もあります。そうであればこそ、施工図の重要性をますます認識するのです。特に今の30代前半の人たちが会社を引っ張る年齢に達した時、この問題が他の様々な問題と一緒になって噴出してくるのではないでしょうか?今会社の舵取りをやっている人にはこれからすぐ行動を起こして頂きたい。日常業務へ施工図作成をシフトさせて下さい。施工図研修を開催しただけでは解決出来ないほど問題は根深いのです。今まで放置されてきた問題であるので解決するのは相応のエネルギーを要すると思われます。 しかし、発想の転換をはかれば、おそらく同業他社も多かれ少なかれ似た傾向でありましょうから、今先手を打って社員の施工図能力をレベルアップする事は大いに重要な事かと思われます。いかがでしょうか? その時になって事の重大さに気が付いても遅いのです。 ■建築生産部門の抱えている問題点 《1.なぜ瑕疵工事が無くならないか》 瑕疵工事をなくすための品質管理の基本は単純である。設計図書をベースとして仕様を確認しチェックして施工計画書にまとめる。技術者は多くの正しい知識を持ち、これらを正しく実践する。ほとんどの職員が大賛成であり又当たり前のことでさえある。ところがどうして当たり前の事が出来ないのか。 限られた現場経験の範囲ではあるが、私を含めて作業所職員が各部署それぞれ個別の事情から発信される仕事に追い回され、今一番に何をしなくてはならないかを見失っているように感じる。以前よりはるかに少ない人数で現場を管理することを要求されているが、現場での若手職員の日常業務はそれほど効率化されていない。 職員の数が減った分専門業者の自主管理で補うというが、会社が求めているレベルまで十分に管理できる業者は余りいない。専門業者の責任範囲として自主検査項目を定めても、実際には彼らの検査は満足出来るレベルにない。かといって、職員が全数立会検査するにはマンパワーが足りない。専門業者もリストラ、コストダウンで人材が不足し、かえって以前より手間が掛かり、彼らの都合に振り回される場合が多い。 次々に新しい施策・書類が会社各部署から要求され、休日も無く現場泊り込みで仕事をしていても、それらの全てはこなしきれていない。やりたくても時間切れで出来ない、又は形式上の書類をでっち上げてつじつまを合わす。そんな事よりもっとしなくてはならない仕事があるのに、実効性の低い仕事に追われた挙句に混乱して重大なミスを犯してしまう。後輩をOJT教育し仕事を与えなくてはならないのに、出来る人間にさせないと間に合わない。 職員の技術レベルの低下が指摘されているのも、様々な施策が浸透しないのもこんなところに大きな原因があるのではないか。もちろん職員一人一人の意識意欲の不足、業務処理能力の不足の問題もあり、これらを向上改善させる努力を忘れて人のせいにしてはいけない。努力の方向が違うのではないか。ISO9001始め様々なシステム・施策が実施され、改善された部分も多々ある。しかし作業所と専門業者がこの様な状態であるため、仕事を造り込む最終段階で破綻し効果が現れてこない。それぞれの部署がそれぞれ結果をもとめて努力したが、現実とのギャップがここに来て悪さ加減として露呈している。 《2.問題解決の為の提案》 @全ての部署で目標を同じにして、仕事の優先順位をはっきりさせる事 QCDS全てに100点を取る優等生の仕事を狙うのではなく、目標を絞り込む。。 A重要度の高い仕事は作業所職員が直接行う事 重要度の高い仕事は、作業所職員自身の目で確認し、判断する。専門業者自主検査、外注施工図、社内技術支援部門を最大限に利用するが、決して任せっぱなしにせず、自分が納得するまでチェックし最終決断する。 B攻めの姿勢を持つ事 職員それぞれが攻めの姿勢で、出来る所から行動したい。若手職員に対しては、彼らの仕事の動機付けとなるように、作業所内や近くの作業所の先輩が少人数・短時間でも教育していきたい。例えば以前は実施していた近くの現場との勉強会を復活させ、「他の現場の仕方を見る」「先輩の失敗談を後輩に話す」「工事をして感動をした事を話し合う」等はどうだろうか。 ■建築の生産性を強化するには 問題点■組織 @近隣対策、対応がすべてゼネコン任せ(契約時に不明確) A試算、積算時に現地の把握がされていない(敷地状況、GL設定、水位等) B当社責任でない施工の遅れに対する対応が悪い C営業担当者の方針が不明確 D施主の要求事項と予算が合わない E積算図面と契約図面の差が回収できない F設計変更が現場だけの対応になっている G反省会がフィードバックされていない(何故良かったか、何故悪かったか) H引継会議が充実していない(嘘、偽り、隠し、上層部同士のみ等) I追加発注時のバックアップがない 問題点■予算管理 @現場での実行予算を作成する為の積算データが不十分 A積算の数量間違い、拾い落としがある B図面の仕様と積算が合致していない C積算単価があまりにも安価で、現場だけで対応できない D積算時に無理なVEがされている(割付的) EQCDSに割付したコストダウンの方法が不明確 F仮設の安全基準と予算が合致していない G設計費、施工図、仮設図(社内)が高い Hコスト面で合わない為、取決が遅れる I仮設機材の納入に制約がある(種類が少ない、施工図、積算をしない) 問題点■手戻り・ミス @現場職員の人手が不足し、十分な現場管理が出来ない A現場職員の経験が不足で、十分な現場管理が出来ない B少額の予算外工事が多発する C着工時の乗込み遅れによる、後手の計画及び取決 D着工時に完成図面がない E社内施工図の仕上がりが遅く、手直しが多い F製作物の早期折衝が間に合わない(コスト、時間) G職員のコスト意識が少ない HVE提案の水平展開がされていない(パソコンで内容まで検索出来ない) I着工時の仕事量が多く、コストダウンの検討及び積算チェックが疎かになる Jクレーム処理に追われて、現場が疎かになる K突貫現場の組織的なフォローが無い L現場のパート社員ばかりしわ寄せが来る(費用対効果を考えていない) これらの問題点の内容から下記の3点に大別されます。 ●各部署の連絡調整、協力体制の希薄さ 工事が着工すると、やはり作業所長を中心にその工事は進められて行きます。 工事中のバックアップ体制も重要ですが、一番大切なのは工事着工前に各部署がチームを組み、選任された作業所長を中心に問題の芽を1つ1つ摘み、各部署でノルマを持つ事だと思います。その為には、ある支店で計画されている住宅に対するプロジェクトグループなどは最も効率的であると思います。 @プロジェクトの役割 住宅市場に特化して、競争力を付けると共に、受注活動、設計・施工、引き渡しの支援・指導をする。 Aプロジェクトグループの活動 (1)グループでコストダウンの方策を研究 (2)具体的物件に早期の介入指導支援 (3)施工物件、施工計画に介入して指導支援 (4)設計段階から意見を具申 (以上の@Aはプロジェクトグループ資料より) ●早期に計画及び着工が出来ない こちらもプロジェクトグループの役割が大ですが、まずは早期に作業所長を選任する事と会社組織自体が「計画を早期に行い、工事の着工を一日でも早くする」と言う認識をもう一度本気で考えるべきだと思います。入社してから、この件に対しての認識は「分かっちゃいるんだけどなぁ」のレベルから全く変わっていないように思われます。 早期着工するためには.... @早期の問題点抽出−各部署からの情報の集約 A早期計画−各部署の共同作業/各作業所長の経験と知恵(工事部会議等)/専門工事業者の参画/工程の把握と工程表の作成 B申請書類(88条申請等)の早期作成 C近隣問題の早期解決 D作業所長の早期辞令発令 ●職員の教育不足 会社は若手社員の教育には熱心ですが、その教育を毎日職場で行う側の教育はどうなのでしょうか。「うちの若手は仕事を知らない」「今まで何を覚えて来たのか」等よく聞きますが、本当にこれで良いのでしょうか? |