5.施工図の作成プロセスの現状 −A社の事例
 
ケース1

1)物件概要
  ・病院150床、老険100床
  ・延床19,000u
  ・RC5/0(ホール部混合構造)
  ・請負金72億
  ・設計他社
  ・建築職員6名
  ・工期3年
  ・発注官庁
2)中心となる施工図
 @コンクリート寸法図
   支店作成→現場チェック→支店訂正→監理チェック→支店訂正
 A総合プロット図
   外注→現場チェック→支店訂正→監理チェック→外注訂正
3)施工図に取り込む情報
 【共通事項】
  ・設計図書
  ・共通仕様書
  ・標準詳細図(大臣官房)
  ・品質管理基準
  ・施工計画書(現場)
  ・予算書(現場)
  ・質疑書
  ・定例議事録(現場) etc
 【@に関して】
  ・鉄骨図(ファブ)
  ・タイル割付図(現場)
  ・建具図(サ)
  ・部分詳細図(現場)
  ・設備電気取合図、スリーブ図(設備)
  ・昇降機図(サ)
  ・インサート図(専門,現場) etc
 【Aに関して】
  ・躯体図
  ・部分詳細図
  ・家具図(サ)
  ・内部建具図(サ)
  ・医療機器図(専門)
  ・設備電気取合図(設備) etc

 ※凡例
   現場:現場にて作製
   サ:サブコン作製→現場チェック
   設備:設備電気業者作製→現場調整
   専門:専門メーカー作製→現場調整
   ファブ:ファブ作製→現場チェック

ケース2

1)物件概要
  ・店舗(ディスカウントストアー)
  ・延床11,000u
  ・S6/0
  ・請負金9億
  ・設計当社
  ・建築職員3名
  ・工期4.5ヶ月
  ・発注民間
2)中心となる施工図
 @鉄骨工作図
   ファブ作製→現場,監理チェック→ファブ訂正
 Aコンクリート寸法図
   現場作製,監理チェック→現場訂正
 B仕上図は設計図を一部修正し施工図として使った。(設計図の施工図化)
3)施工図に取り込む情報
 【共通事項】
   ケース1に同じ。
 【@に関して】
  ・躯体図(現場)
  ・ALC図(サ)
  ・建具図(サ)
  ・スロープ、階段、水廻り等詳細図(現場)
  ・昇降機図(サ)
  ・設備電気取合図、スリーブ図(設備)
 【Aに関して】
   ケース1のコンクリート寸法図とほぼ同じ。

ケース3

1)物件概要
  ・テナントビル
  ・延床450u
  ・RC6/1
  ・請負金1.1億
  ・設計他社
  ・建築職員1名
  ・工期10ヶ月
  ・発注民間
2)中心となる施工図
 @コンクリート寸法図
   現場作製→監理チェック→現場訂正
3)施工図に取り込む情報
  ・ケース1の共通事項とコンクリート寸法図の内容ほぼ同じ

まとめ

 中心となる施工図の作製状況は、現場の規模、状況、作業所によりまちまちである。A社の場合一般的に、ケース1が多い。設計施工の場合ケース2の傾向である。
 ケース1は、CADのレイヤーで、建築、設備、電気、空調、衛生の図面管理を行い、情報を共有した。
 ケース2は、設計CADデータに手を加え平面詳細図(施工図)として使用した。
 ケース3は現場作製の手書き図面である。
 *小規模の現場に携わった技術者の方が施工図をまとめる力が有る様だ。


問題点と考察

@ISO、安全管理、品質、環境等業務が増えている。(提出書類が多い)
A種種の製品図、施工図のチェック能力が低い。(要領を得ずチェックの遅い若手)
B施工図の造り込み作業に携わって無い。(大規模現場、短工期の現場、バブル期の慣行)
C官民の違い、建物の用途、また設計事務所により図面の密度(詳細図の内容)に差が有る。(図面化せずイメージを語る設計者もいる。)

 「中心となる施工図」をまとめるには、多くの情報の収集、確認や調整が必要である。施工図の外注化が全て、現場技術者の能力低下につながるのではなく、施工図を書かせるネタの提供、取り合い調整作業を怠る事とに原因が有ると思われる。また、施工図を造り込んでいく業務に若いうちから取組ませる機会をどの様に与えるかが教育の課題である。部分的な詳細納まり図は現場で書き、書き手へ指示を出すトレーニングを積むことが必要でありOJTの役割は大きいと考える。今後は、施工図センター、施工図レス、現場回帰の考えもいれ、A社における施工図は内製化の方向であると思われる。