The Sea Library−海の見える図書館−

堀之内 貴裕 君(大阪市立都島工業高等学校)

 現在の大阪市立港図書館を「海の見える図書館」として海遊館などの集客施設が集積する天保山ハ−バ−ビレッジに隣接する天保山公園内に建て替えようとするもので、表現にコンピューターグラフィックスを駆使した意欲的な作品である。
建築デザインに対する作者の思いも相当なもので、2本鉄骨を建物上部にむき出しにしたり、立面に風を受けることをイメ−ジした扇型の装飾を施したりしている。平面計画においても、主な閲覧室や喫茶室から海が望めるよう、また中央の吹き抜け空間から採りいれられた光は2階・3階に届くようするなど色々な工夫が凝らされている。しかし些か装飾過多のきらいがあり、果たして船が天保山桟橋に近づいて来る時目に入ってくる眺めとして、また周辺環境になじむものとなっているかどうかは意見の分かれるところであろう。
 建築はひとり超然とした孤高のものとして存立するものではないのではないか。この問題は今後とも強い意識で考えつづけて欲しい。敷地の選定にも問題がある。そもそも公園に建築物を立地させることは慎重であるべきで、よほどの理由がない限り公園を敷地に選ぶべきではない。まして天保山公園は大阪の歴史にとって重要な位置を占める。建築物が立地する敷地や周辺環境にはそれぞれ歴史があることも忘れないで欲しい。