林 真一郎 君(兵庫県立神戸工業高等学校)
都会の公園に隣接した敷地に、図書館を建てるという計画である。作者の提案は、建物全体を地下に沈め、クレバスと名づけられたサンクンガーデンを中心に、都会の喧騒から切り取られた空間を作ることにある。作者が設計趣旨で語っているようにサンクンレベルの水盤に流れ落ちる水音が都会の騒音を打ち消して、非日常の静謐な時空を形成すると言う趣旨がこのスケールでどれほど意図通 りの効果を発揮するかの疑問もあるが、水盤に反射した光が時間とともに移ろうさまが想像できるなど、設計のねらいがはっきりと伝わる作品であり、その点が評価された。プラン上の問題とかいろいろ未消化な部分もあるが、そのような点は今後の経験次第であり研鑚を期待したい。さらに作者の将来を考えて、審査段階で話題になった点をあえて述べておきたい。一つは、この作品が某有名建築家の作風にあまりにも似ていることであり、それを指摘する意見も出たが、「「学ぶ」ことの原点は「まねぶ(上手な人の真似をする)こと」との言い方もあり、優れたところを学ぶ過程で自分独自なものを見つける努力を願いたい。もう一つは、図面 によって図面密度にばらつきが見られることで、若者らしくこれでもかとの思いを全図面 に叩き付けるぐらいの迫力を期待したい。入選おめでとう!
(設楽貞樹)