科学・博物館 ARK

木口 礼子 君(大阪市立工芸高等学校 建築デザイン科)

 

 本計画は、大阪天保山のウォ−タ−フロントに科学と博物学の複合ミュ−ジアムを計画した案である。ウォ−タ−フロントの立地から「ノアの箱船」のイメ−ジをコンセプトの骨子とすることで計画はまとめられている。科学と博物学の2つのゾ−ンを海側に設け、管理ゾ−ンを道路側に配置し、明確なゾ−ニングに成功している。建物と海の間に、広場を計画し、船の通 った航跡をモチ−フとしたオブジェの柱が陽の沈む方向を射している。その柱の間を通 ってメインエントランスに導かれていく計画や、海側のファザ−ドを全面ガラス張りにするなど、建築単体にとどまらず海との関係性までを意識した姿勢が評価された。

 ただし、「ノアの箱船」のイメ−ジは、航跡をイメ−ジした柱や波をモチ−フとした広場のデザイン、屋根の形状に垣間見られるだけであり、内部空間や、展示プログラムに反映されていないのは残念であった。また文章を除いて図面 のみで内容をみたとき、作者の意図を理解するのはかなり困難であった。文章に頼らないで、初期のイメ−ジを建築化できるよう、今後の研鑽に期待したい。

(寺地洋之)