共生の郷

三浦 恵子 君  及川 由紀 君
(大阪市立工芸高等学校 インテリアデザイン科)

 

 老人ホームと幼稚園をひとつの施設に融合しようというプログラムと空間の再考が、建築設計の社会的側面 と美学的側面双方に対する問いかけとなっており、卒業設計として十分な内容を持った作品であると評価された。しかし一方、空間の性格を表現するのに「ワクワク工作室」、「ノビノビ温水プール」といった擬態語に頼りすぎていないかという批評も出された。また「共生の郷」と銘打って自然環境との融合を目指している点も他の作品にはない個性であるが、それゆえに、アプローチの空間など建築と外部の接点の空間づくりにいま一つの工夫がほしいところであった。 何より評者たちの眼を引いたものは、表紙一面を用いて描かれていた鳥瞰図である。優しい色使いとタッチそのものが独特の雰囲気を醸し出しており、それだけでこの設計が提案しているプログラムと空間の方向性を示しえたところに、優秀作品に選ばれた理由があるであろう。

(三谷 徹)