le Coffre de TISTOU
《京都市役所都市計画局緑化推進部緑政課付属都市ビオトープ研究所》

柳沢 究 君(京都大学)

 

 この提案では「エコロジー」を一つの宗教的なものと考え、その神殿として、有機性廃棄物処理施設、ビオトープ研究所をとらえているようだ。地上のビオトープを一般の立ち入りを禁じた「生息域」とし、一種の「聖域的なもの」と捉えたうえで、地下に埋設された施設群を建築的形態へと還元することで、聖堂のような崇高さを持つ場として提案している。地下構築物のドローイングのずば抜けた密度と造形力がこの提案を魅力的かつ迫力のある提案としているが、地上部分のビオトープは表現の密度が薄く、都市の中にビオトープを設けるという魅力的な提案をサポートするにいたっていない。特に、ビオトープに設けられた三日月型の池は地下の構築物と拮抗するはずのビオトープが中途半端に建築的になってしまい、提案のインパクトを弱めてはいるのではないかと思われる。 しかしながら、社会的提案を持った多くの作品のなかで数少ない建築的魅力を持ったものであること、そして、その魅力を素直にその社会的提案と関連付けていることが高く評価できる力作である。

  (古川)