松森 一行 君(明石工業高等専門学校)
JR魚住駅は、まちづくり協議会の結成後、駅の橋上化運動が行われている。駅に対する住民の要望や関心は高いが、協議会の本来の目的であるまちづくり参加はうまく進まない。本計画はこのような現状をふまえ、駅の橋上化とまちづくりの拠点を抱き合わせることで、交通 拠点としての駅が「まち学習・まちづくり活動」のstationに生まれ変わらせることに成功している。現実へのまなざし、具体的なまちづくりへの手法、魅力的な積層空間、プレゼンテーションの的確さなどバランスのとれた秀作である。
プロジェクトとはこの作品のように理想的で良いと断ったうえで、現実に対峙している作品ゆえ、少しだけ小言を記しておこう。1・2階で学習し、3階で学習の成果 を事前に試したうえで、人々は駅から飛び出し、まちで様々な活動を実践していく。明快なストーリーである。しかし、この一元的な明快さが計画を現実から少し遊離させているように思える。3階の曖昧な計画がそのことを物語っている。まちには多様な価値観を持った人々が共存している。だからこそまちづくりは難しいのだと思う。建築空間は多様な場を提示してくれた。まちづくりのストーリーがもう少し多元的であれば、本計画は見事に現実に着地したであろう。今後の活躍に期待したい。
(寺地)