Trace Memory
_追憶の路をたどって_

白波瀬 智幸 君(神戸大学)

あの震災から5年の月日が流れた。神戸の街も一応外見には復興したかの様子を呈している。それに連れて人々の忌まわしい記憶も忘れ去られようとしている。この作品は三宮センター街の地上の“日常の雑踏”の床板一枚捲った地下に、震災犠牲者の魂との対話により、彼達の鎮魂と取り残された精神の復興の重要性に警鐘を鳴らしている。被災地の傷痕をトレースした道路の裂け目から落ちる物言わぬ 光や、逆に夜間地中から漏れる光が造る被災地の形に、鎮魂のメッセージを託している。

建築空間の社会性、精神性や象徴性を十分に計算し尽したプログラムの構成や、CGを駆使した魂の危うい表現技法に、卒業設計として卓越した技量 を示し、建築家としての将来性が嘱望される。リベスキンドのユダヤ博物館の手法を十分消化し、独創性の高いメッセージを発信している。

(香西)