田中 耕治 君(大阪工業大学短期大学部)
バランスのとれた作品である。プレゼンテーションパネルの構成は古典的であるが,適切な写 真・図面等が選択されている。
一部を造成されてしまった斜面地を計画対象地とし,この計画を契機として地形全体を再整備するという方針がいい。立面 で,建築物を一部ピロティー状にして視線を抜いたことも成功していると思う。伝統的な茅葺き屋根を採用してこれと直交系の造形との組み合わせを試みたことも,前向きな取り組みとして評価したい。
不満なのは既存の棚田に設けられた階段である。この場所の棚田の面積に対してギザギザの振幅が大きいし造形は強すぎる。作者本人が評価している美しい棚田の風景をどちらかといえば壊している。[既存の棚田はそれほど美しくないという前提からスタートするなら話は別 だが。]
既存環境を読み取り活用することが求められている時代である。保存と撤去の間には多様な解がある。既存環境をひきたてる新しい構築物があり,その逆があり,それ以外のさまざまな方法もあって,それらはひとつの計画の中に混在する。いずれにしても,結果 として出現する地上の空間がある美しさをもってたち現われることに我々の目標があるのだと思う。入選おめでとう。
(長坂)