Shesback香港、大澳の水上棚屋被災地区の復興計画

早瀬 ひとみ

神戸芸術工科大学

 

 2000年7月3日の火災による香港・大澳の水上棚屋の惨状は、6年前の阪神淡路大震災の惨状にだぶって心が痛む。人生で最も多感な時期の強烈な体験が、このテーマを選ばせたのであろうか。

 自然発生的な漁民の密集住居地であった水上棚屋のこの復興プログラムは、計画しないことからスタートするところが新鮮である。「帰りたいが資金が無い」という被災者へのアンケート結果と、「再建は元の住人が元の場所にもどる。自費のみの再建で政府は援助しない」との政府方針をもとに、初年度は、基盤となる平面デッキだけを用意して、再び自然発生的に戻り来る人をを待つ。次年度より、地域の核となる公共施設を空いたスペースにはじめて計画、その後、観光地としての立体的展開も導入して、生活との共存を推し進める。築かれたコミュニティーは、最終的に大澳全域から香港へと広げていく。

 5ヶ年という時間軸を設定し、居住地としても、観光地としても魅力ある集落を無理なく復興に導く構成力は、今までにない都市計画手法も暗示し、さわやかかつ見事である。

(松村)