母の家−BorderlessHouse−

木村恭子

明石工業高等専門学校

 

 「私の母は庭いじりが好きだ」という極めて個人的で身近な動機から、この「母の家」の設計は始まっている。住宅を2.1mピッチのグリッドからなる「ルーフ」、「フレーム」、「レール」の3つの骨格に分け、その中に壁やガラス、床、家具、花壇といった部品を住み方に応じて自由に配置するという、新しい住宅のあり方を示している。こうしたシステム化や可動性といった手法そのものは、決して目新しいものではない。しかしこの作品では、それが実現可能な形で徹底して用いられたこと、また一見素朴な動機や表現を建築的なレベルにまで高めるのに貢献している点で評価できる。個人的な動機から出発しながら、既成の住宅のあり方を問い直すような独創性を有し、さらにそれが建築的現実性を有しているというバランスの良さ、あるいはその落差が、この作品の最大の魅力であり面白さであろう。

 平面図やアクソメ、野外で撮影した模型写真などを巧みに用いた図面上のプレゼンテーションがまた大変良い。平面のバリエーションを示した図に、もう少し説明やプレゼンテーションが加えてあれば、完璧だった。今後の活躍を期待している。

(笠原)