猪狩雅之
(大阪工業技術専門学校)
No.18「GOROGORO」は、子供たちに向けて「遊びを誘発し、そこで創造性を発揮させる仕掛け」という設定である。移動できる遊具的な小建築5種類を小学校(あるいは保育所・幼稚園)の近くの街路に置き、それによって「街全体が子供たちの遊び場に染まっていく」ことを狙っている。
全体の表題ともなっている「GOROGORO」は、機能としてはトイレである。子供たちが学校のトイレを使いたがらない事態はほとんど社会現象化しているが、家をかたどった移動便所にさまざまな空間的発見を仕込むことで、利用することを楽しくしようというアイデアである。
「WAIWAI」は5m×3m程度のボックス状で、要所に窓やバルコニー状の突起をつけ、「基地」に見立ててもらおうとする。「CHAPUCHAPU」は波型の床面をもったもので、凹部に水を入れて遊ぶ(特に自転車で水を跳ね上げて遊ぶ)ことを想定している。「ZOKUZOKU」は高さ4mほどで底部が曲面をなしており、遊具全体を90度回転させることができる。みんなで立てたり倒したりして遊ぶというものである。「DOKIDOKI」は内部に階段を組み込んで三次元的な動き回って遊ぶものである。
いずれも既存の立体遊具にない新鮮な遊び方が提案されていて、設計者の能力が一般的な建築物においても発揮されるであろうことがうかがえる。子供の気持ちに即した眼差しと、プランナーとしての巨視的な観点のバランスが実によい。実際には危険を伴なうものもあるが、そんなことを問題にされないほど魅力的な提案であった。イラスト調の図面表現も題材とよく合っており、また文章による説明も適切で、すぐれたプレゼンテーションと評価できる。
(石田)