井澗拓也
(大阪市立工芸高等学校)
摩周湖を臨む丘の上に計画された葬斎場である。こうした施設の計画においては、必然的に「死」あるいは「生」が主題化されるが、作者は死にまつわる様々な伝承や、少子化による墓の維持の困難さといった現代の社会状況への考察から、ここを「空葬」のための場とした。深い森林に抱かれるように配置された施設にアプローチすると、まず「空」への回帰と「地」との接合を示す塔に対峙することとなる。炉、展示、空葬、そして管理部門と的確に計画された空間構成に、「魂」の力強さを示す円弧や斜線が導入され、崇高でシークエンシャルな空間の生起が達成されている。
葬斎場という課題自体は特に目新しいものではないし、唯我独尊的な計画に陥りやすいものである。しかし作者の「死」への真摯な態度と卓抜した空間造形力・構成力、さらに徹底した機能分析、鉛筆による精緻なドローイングなど、全体としての極めて高い完成度によって社会性を獲得している。
(末包)