平成版寺小屋物語

福田 尚人

(兵庫県立龍野実業高等学校)

 

 この計画は、城下町である龍野を舞台に、街並み保存とさらには街の活性化のその両立を担う核的施設を考えられたものである。龍野は、河川と山並み自然と、瓦屋根と白と黒の壁塀、そして、味噌醤油蔵群など、失われつつある城下町の昔ながらの素朴さと地域性がまだ残る数少ない街である。この計画を見る限り作者は、この街並みに愛着と親しみを持ち、そして、ここで想定された場所の選択や商店街が抱える問題など、この地域の特性と現状をよく理解していることが解る。 問題提起に対し、その建築的解決に正面から挑み、醤油蔵群の保存と景観の再生、さらにはその建物の保存的な形態にだけに終わらず、街の活性化を促す仕掛けを考え、商店街や自然のふれ合い、住民達の地域愛などの大切さを取り戻そうとする、再生に向けたしっかりとしたコンセプトを掲げ、全体計画を見事にまとめ上げている。高校生とは思えないような大人の設計である。

(木村)