Old Meets New

加藤 由紀

(中央実務専門学校)

 

 本作品は、市街地の中に埋没した旧来の港町・兵庫県高砂を対象に、消失しつつある街の資源を掘り起こしながら、生き生きとした住環境を回復・形成しようとする提案である。
 歴史、街並み、町家、人々の生活様式などについて、地域の読みとりが充分にされており、図面への表現も良くできている。また、街路や町家の空間構成を継承するといった空間面での提案に加え、産業の衰退と少子高齢化による課題を改善するためのしくみや人の出会い等、社会的な環境形成にまで踏み込んでいる点が、より一層提案の説得力を高めている。
 空間の計画は、堀川沿岸における街の核の形成や、地区内各所での町屋の再利用など、地域全体にバランス良く目を配った拡がりのある構成となっている。さらに、平面図には生活場面や場所の使われ方等が豊富に書き込まれており、高齢者、子ども、職人等の生活支援に対する様々なアイデアを読みとることができて興味深い。
 タイトルにある「New」の要素が何を指すのか理解し難い面もあるが、従来より育まれてきた生活環境の継承が誠実に検討された成果であるとも解釈できよう。より一層の研鑽を期待したい。

(木多)