湖畔の葬斎場

川上 聡

(京都大学)

 

 死者が永の旅路に出るのを見送る最も非日常的な場を、支笏湖西岸に提案する力作である。
 去りゆくものと、残されたものの間の訣別の場という精神性の高いテーマを、空間のシークエンスで見事に展開している。
 マッシブで力強い壁と、エントランスから徐々に下降しながら奥へ奥へと導いてゆくリニアな構成は、ここで行われるひとつひとつの儀式に必要な時間と静けさを感じさせる。空間を移動しながら体験する自然光や、下界と遮断されたなかで突然視野にひろがる風景などが、巧みなドローイングで表現され、審査員の高い評価を得た。

(伊藤)