Re─Kodan Danchi

大槻 薫

(明石工業高等専門学校)

  

 

 明石市と神戸市の舞子地区にまたがって広がる「明舞団地」の中の一つの住棟をモデルとした「再生計画」である。スラブや壁など既存の建物の骨格を残したまま、そこに新たに細長い住宅の「ユニット」を差し込むことによって「再生」が行なわれる。「ユニット」はコア配置の違いによって、7つのタイプがつくられている。また挿入される「ユニット」と「ユニット」の間には「ヴォイド」が設けられて、半屋外の小さな公共広場として使うことが提案されている。
 ここでは、均質になりがちな団地での生活や住居プラン、風景に対して、一定のシステム化を通じながらも多様性を与えようとしていることに特徴がある。「再生」のあり方として明快なビジョンが提示されていること、詳細で具体的なプログラムが設定されていること、さらに卓抜なプレゼンテーションに支えられていることなどの点で、非常に高く評価できる。
 ただ、いくつかの問題点も指摘できる。まず、この計画は既存の建物については最低限の骨格以外には何も残しておらず、ほとんど「建て替え」に近いものとなってしまっている。もう少し既存のものを視覚的、空間的に残しながらの「再生」を提案した方がよかったと思われる。また既存の建物の骨格の残し方が構造的に不十分だと思われることや、挿入された「ユニット」の長い突出を支える構造的な技術が具体的に示されていないなどの問題点が指摘できる。「ユニット」の間に設けられた「ヴォイド」には、必要以上に大きい部分も見られ、具体的な利用方法もわかりにくい。
 いくつかの問題点により、実現に向けての「リアリティ」に欠けた計画になってしまっていることは否めない。しかし、問題設定の明快さと様々なプログラムの設定、優れたプレゼンテーションによって支えられており、団地の「再生」としての新たな「可能性」を感じさせることにおいて高く評価できるものである。

(笠原)