陽の礼拝堂

村田 龍馬

(京都大学)

   


 ドローイングが見る人に作品が語るべきことを瞬間的にイメージさせてしまう、そのような印象をもった。さわやかな作品である。
 
 海抜250Mの断崖に立つ礼拝堂を題材として、建築の力―建築の可能性を追求している。建築と外部自然との関係をダイナミックに組合わせ、陽光をパラメーターとした空間演出が内・外をネガポジの世界で再構成する。礼拝堂を訪れる人は「陽光」とともに空間を体験していく。そこでは建築はイメージの外にあり、光による変化だけが残像として残る。
 
 作者の「死生観」すら感じさせる精神性高い作品となっている。本作品は作品性に偏っているような印象を与えそうであるが、作者が試みたことは、建築は単体で存在するのではなく、人を含めた周辺のことがらとの組合わせのなかから成り立つことの説明である。
 
  出展28作品は大きく2つのグループに分けられる。さすがに選ばれているだけにどの作品も力作である。1つのグループは現実的な課題を取り上げ、建築の社会での役割を説明する。もう1つは本作品のように作品をとおして建築の可能性を追求するなかで本質を語る。前者は作品性、作家性を排除し、後者はその逆を追求することになる。残念なことに前者が圧倒的に多く、今後もこの傾向は加速すると思われる。
 
  さまざま考えさせられた作品でもあった。

(海野)