『Renovation Kodan Danchi』

藤田 一博 君

(大阪工業技術専門学校)

  


 奈良市中登美ヶ丘に位置し、築35年をむかえた中登美団地の再生・改造計画である。既存建物の構造壁だけを残して空のヴォイドとし、そこに新たなプランの増築ユニットをはめ込むことによって、それまでの建物のスケール感を踏襲し、何よりも建物のまわりに広がる外部空間を変わらずに継承しようとする意欲的な提案になっている。また、ヴォイドとなった一部の住戸は、1階では通り抜けのピロティ、上部では住人が自由に使用できるフリースペースとされていて、増築部分の凹凸あるデザインとともに、外観に変化とリズムを与えている。さらに、スロープ状のブリッジが住棟間を結び、屋上に庭園を配置するなど、立体的な結びつきも作り出されている。そして、単身者から核家族、2戸をブリッジで結んだ2世帯用までヴァリエーションに富む14タイプのプランや、ガルバニウム鋼鈑の外装とナラフローリング、珪藻土の内装との対比も含め、練り込まれた設計に説得力が感じられる。構造壁の残し方については実現性に難はあるものの、既存の団地を現代のデザインによって再生しようとする作者の姿勢に共感を覚える作品である。

(松隈)