REVERSIBLE SITE IN 50%

松尾 健治 君

(明石工業高等専門学校)

  


 松尾くんの作品は、30年前は田畑に囲まれ光を十分に取り込めたが周囲の開発によって光を奪われてしまった祖父母のための家の計画である。

 タイトルが示すものは、建ペイ率50%という敷地を二分割し、その分割された形状がそれぞれそのまま住宅となるべくスタディがなされ、その中の一対が主として提示されている。敷地の外縁から内側に凹凸をもったドーナツ状のものとその内側とに分け、どちらの住宅も凹凸部を生かして住居内の各機能を入れ込んだワンルームの構成である。

 この作品の優れた点は住宅作品としての評価よりもむしろ同比率の図と地の反転というシンプルな企ての中での多様なケーススタディと、さらなる展開を考え得るアイディアを提示した点にある。一定のかたちの中に二つの住戸を埋め込む際のケーススタディとして興味深いものも多く、これらは集合住宅としての展開も考えられるだろう。ただ、最終形として提示されたものも含め、スタディされたものがほぼワンルームの構成であり、もう一歩そこで生活する姿にまで踏み込む必要を感じる。今後これがアイディアにとどまらず、現実感をもった生活像を描きうるものとしてさらに昇華されていくよう期待します。

(中江)