福田 勇気君
(京都市立伏見工業高等学校)
京都らしい風情と街のにぎわいが共存する木屋町通りにある旧・立誠小学校を敷地とする貸し店舗と文化資料館からなる複合施設の提案である。ここでは、周囲に残る京都の町屋と共存できる現代建築のデザインが試みられている。中でも、横を流れる高瀬川沿いに遊歩道を設けながら、1階部分の大半をオープンスペースとして開放し、ミニ庭園と枯れ山水の庭、ライブ活動も行える野外ステージ、露店が並ぶ広場などを上手に配置している点が特に目を引いた。また、上部にも空中庭園や中庭を設け、小さなスケールの空間を随所につくるなど、ここを訪れる人々の見る―見られる関係があちこちに生まれるような工夫が施されている。全体の空間構成やドローイングのセンスについても、高校生とは思えないほどレベルが高く、審査員のほぼ全員の支持を得た作品である。敷地に対してシンメトリーな建物であること、立面のデザインがやや単調で周囲に対して寡黙に閉じ過ぎている点など異論もあるが、京都の町をより身近な施設によって少しでも開こうとする問題意識に共感と敬意を覚える作品である。
(松隈)