お知らせ

「建築学からみたあるべき構造設計」に関する若手討論会のご案内  

A-2-4 構造設計者と耐震設計(pdf)

 日本建築学会では2005年11月に起きた耐震強度偽装事件を踏まえて「健全な設計・生産システム構築のための提言」を2006年9月8日に行い、その本文は2007年1月号の『建築雑誌』に発表されています。
 このはじめの部分を下に転載しますが、ここには「建築の安全性は、本来建築に関わる関係者の高い見識と真摯な努力によって担保されるべきものである。確認制度の厳格化など法令を強化することでは必ずしも安全性の担保につながらない。安全性の担保のためには、まず下に示す「品質確保のための自助努力」(A)が健全に機能し、これを補完する形で「法令規制」(B)が機能することが必要である」と書かれ、建築に関わる者の自助努力が必要なことを述べています。
 (A)は個々の技術者・研究者や企業・団体の問題であり、(B)は国などの組織
の行う問題であります。後者(B)は国民の声、メディア、国会の力の中で、国土交通省の組織が全勢力をかけて進められたため、2007年6月にかたちができ、色々問題が指摘される中で動き出しています。これに対し、前者(A)は個人・団体の問題であり具体的に目に見えた変化があるようには思えません。
 (A)の問題について考えを纏めるため、日本建築学会では「社会ニーズ対応推進委員会」のもとに「建築学からみたあるべき構造設計特別調査委員会(準備会)」を昨年11月に設置し活動を開始しました。
 委員は以下に示しますが、これからの日本の建築を支えていく若い構造設計者、建築家、研究者および教育者等による討議が必要と考えます。今回は特に多くの若い構造設計者の方々に集まっていただき、討論会を行うことにしました。是非皆様のご参加を期待します。
 日時:2008年3月24日 18:00〜
 場所:建築会館会議室(東京都港区芝5-26-20、TEL03-3456-2051)
 旅費:特に用意しておりませんので、自費でお願いします。
 参加:メールにて、日本建築学会・小野寺(onodera@aij.or.jp)までご連絡ください。
 定員:100名(申込多数の場合はお断りする場合もあります。)討論の主要テーマ:
 1)我々は構造設計や耐震設計の発展・普及に関してなにをすべきか。
 2)構造設計や耐震設計の意義を社会と共有するために何が必要か。
 3)構造設計者が主体性を発揮できる環境はどうあるべきか。
 4)日本建築学会に期待すること、進めるべきこと。
 その他
 参考:上記の提言の中で、「構造設計者と耐震設計」の部分の解説文を添付ファイルに示しますので、事前にお読みください。
  委員会委員:
  和田 章(委員長・東京工業大学)
  斎藤公男(会長・日本大学)
  新谷真人(早稲田大学/オーク構造設計)
  金田勝徳(芝浦工業大学/構造計画プラス・ワン)
  金箱温春(金箱構造設計事務所)
  小堀 徹(日建設計)
  高山峯夫(福岡大学)
  広田直行(総務理事・日本大学)
  藤田香織(東京大学)
  細澤 治(大成建設)
  最上公彦(竹中工務店)
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「健全な設計・生産システム構築のための提言」日本建築学会 2006年9月8日

1.提言の背景と位置づけ
 今回の耐震強度偽装に関わる一連の不祥事は、建築の安全に対する国民の信頼を著しく毀損し、多くの国民に深刻な不安を与えている。安全な建築を国民に供給するための知的基盤を整備することを使命とする日本建築学会としては、この不祥事の発生を極めて遺憾な事態と受け止めるとともに、本会で蓄積した知見が事件を未然に防止するために十分実効に結びつかなかったことに関して深く反省する。
 今回の事件発生の背景として、1)技術者倫理の低下、2)経済・産業・技術システムの構造的変化、3)建築基準法などの制度疲労を指摘することができる。
 これらを踏まえ、日本建築学会は学術団体としての中立的かつ俯瞰的な立場から、不祥事の再発を防止できる健全な設計・生産システムの構築をめざし、一般市民も含め産官学の関係者に向けて包括的対応策を示すとともに、その対策を実効あるものとするための活動を展開する。

2.提言にかかわる基本認識
 建築の安全性は、本来建築に関わる関係者の高い見識と真摯な努力によって担保されるべきものである。確認制度の厳格化など法令を強化することでは必ずしも安全性の担保につながらない。安全性の担保のためには、まず下に示す「品質確保のための自助努力」(A)が健全に機能し、これを補完する形で「法令規制」(B)が機能することが必要である。
 A.品質確保のための自助努力:技術者倫理に則り、建築の設計・生産にかかわる関係者自らの努力とそれを社会に還元する仕組み〜
 B.法令規制:建築基準法など諸法令に基づく建築に対する規制 建築の設計は個別的で、その生産には多様で高度な技術が用いられていることから、設計・生産行為のすべての内容を定型的な法令基準だけで規定することは難しい。B.の法令規制だけで担保できる安全性の範囲は限定的であり、品質確保のための個々の建築の生産を担う主体の不断の自助努力なくして、安全性確保のための必要十分条件は満たされない。
 また今回の事件の教訓として、A.B.に加え、次に示す「被害者救済のための仕組み」(C)の確立が必要であることが明らかになった。
 C.被害者救済のための仕組み:建築の瑕疵の回復や、生じた損害の救済を円滑に行うための仕組み
 西欧諸国では保険制度を通じたこのような仕組みが充実していること、さらにこの仕組みが被害者の救済に加え、建築の瑕疵発生の事故予防策としても機能していることに留意すべきである。
 今回の事件は、発注・設計・生産の当事者が、優先させるべき国民の利益をないがしろにし、自らや直接の利害関係者の利益を優先させてしまったことに起因する。これは、A〜Cの建築の安全性を確保する仕組みが、国民からの信頼に応えるために有効に機能していなかったことを意味する。建築の設計・生産システム健全化のためにA〜Cの仕組みが有機的に機能していくことを目的として、本会は以下の包括的対応策を広く社会に提言するとともに、学術団体として取り組むべき調査研究や情報発信の具体的活動を展開する。(以下、省略)

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