実測減衰データベース(2000年版) ダウンロード

建築物の減衰小委員会では、設計や研究活動において広く皆様方に利用していただけるよう、これまでに収集された建物の減衰実測データを公開しています。ファイルはExcel形式です。

「実測減衰データベース」
日本建築学会・荷重運営委員会 減衰資料作成小委員会 2000年10月

1. データベースについて
 「実測減衰データベース」は,建物の減衰を精度良く評価する観点から,本会減衰資料作成小委員会が,比較的新しく,質の良い減衰実測データを収集・整理したものである。その元となったのは,日本建築センターの「建築物の減衰評価研究会1)」で収集した減衰データベースであり,以下に述べるような関係機関からの提出資料および文献調査の結果が加えられている。 対象は国内の建物とし,民間会社(建設会社,設計事務所など)や大学など40余りの機関の協力を得て収集したデータに,本会減衰資料作成小委員会およびワーキンググループの文献調査に基づくデータを加え,最終的に284の建物のデータを収録した。

 文献調査は以下の文献によっており,主に1970年以降のものを対象とした。
・建築物の減衰評価研究会 報告書1)
・建築構造物の振動実験2)
・日本建築学会 大会学術講演梗概集
・日本建築学会 論文報告集・構造系論文集
・日本建築学会 支部研究報告集
・世界地震工学会議論文集
・日本地震工学シンポジウム論文集
・日本風工学シンポジウム論文集
・構造工学論文集
・関係機関発行の技術研究所報等の報告書
・ビルディングレター(日本建築センター)

 なお,収集された資料の信頼性を確保し,種々の解析評価に耐え得る良質のデータベースとするため,文献の著者やデータの所有機関に対し,以下のアンケート調査を実施している。調査の内容は,収録された固有周期(振動数)と減衰定数などの値の確認のほか,建物諸元(構造種別,建物高さ,階数,平面寸法,基礎に関する情報,設計周期など),実測方法,減衰評価手法,振幅などに関する情報で,文献に記載されていない事項の確認である。アンケート調査は,慎重を期して2度にわたって行った。また,データベースとしての公表の可否についても確認し,了解の得られたもののみを収録した。これらの作業に加え,日本建築センターのCD-ROMデータ3)との照合等によって,誤りのあった実測値の修正や必要な情報の追加を行うとともに,確認が得られず信頼性に乏しい資料の除外を行った。その結果,データベースの信頼性を従来になく高めることができたと考える。
 なお,パワースペクトルや自己相関関数を用いた減衰評価手法では,前提条件として記録の定常性が要求されるが,これらの詳細については確認できていない。また,振幅レベルに関する情報は,減衰評価において極めて重要であるが,正確な振幅値が不明のものも収録している。ただし,実測方法および減衰評価手法がともに不明なものについては,振幅値の大まかな推定が不可能なため,塔状その他の構造物の一部のデータを除き,すべて削除している。これらの点については,データベースの利用者が,資料を目的に応じて適切に判断し,取捨選択して用いることが必要である。

 収録データの内訳および建物数は,次の通りである。
(a)一般建物 205棟
 *内 訳 : 鉄骨造(S造)建物 137棟,鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)建物 43棟,鉄筋コンクリート造(RC造)建物 25棟
(b)塔状その他の構造物 79個
 *内 訳 : タワー 23基(S造20基,RC造3基),鉄塔 24基(独立鉄塔14基,屋上鉄塔10基),煙突 26基(S造独立型9基,S造鉄骨支持型4基,RC造独立型13基),その他(6個)

 このうち(a)の一般建物の対象は,居住用もしくは事業用に供する建物とした。展望塔,管制塔などのタワー,鉄塔,煙突などの工作物については,構造種別によらずすべて(b)の塔状その他の構造物に分類した。また,木造五重塔や組積造などの建物を,その他の項目に分類して収録した。なお木造住宅については,近年実測データが蓄積されつつあるが,今回は対象に含めていない。 収録データのうち,固有周期と減衰定数の実測値は,原則として一つの建物につき,並進2成分(短辺・長辺方向)とねじれの計3成分に対する,1次もしくは高次モード(一般建物は最大6次,塔状その他構造物は最大3次まで)の値を1組としてデータが収められている。
 収録データを振幅の面からみると,常時微動測定,人力加振,起振機実験など微小振幅のデータが多く,地震・風応答観測など大振幅時のデータは少ない。また一つの建物に対して,時期を違えて実測したり,複数の実測方法や減衰評価手法を用いるなどにより,複数の実測データが得られているものも多い。さらに,振幅レベル別に詳細な実測値が得られているものもある。この場合,データベースには最小振幅レベルと最大振幅レベルの値を収録した。

2. データベース収録項目
 データベースへの収録項目は,次の通りである。
(1)建物番号
(2)所在地都道府県名
(3)竣工年
(4)階 数
 *一般建物とS造タワーを対象に地上,地下,塔屋それぞれについて記した。
(5)軒 高
 *S造タワー以外の塔状構造物については,構造物高さとした。
(6)基準階平面寸法
 *矩形または円形以外の形状を有する場合は,その形状を併記した。
(7)用 途
 *複数の用途を有する場合は,主要な用途を記載した。
(8)基礎情報(屋上鉄塔は除く)
 *基礎種別を直接基礎と杭基礎とに大別し,さらに根入れ深さと杭先端深さ(杭基礎建物のみ)を併記した。杭先端深さの欄に*印があるものは,杭先端深さについての情報は得られていないが,地盤調査資料で基盤面深さがある程度判断できる場合に,基盤面深さを杭先端深さの代替値としたことを意味する。また,杭長は(杭先端深さ?根入れ深さ)として求めている。
(9)設計値(1次固有周期および減衰定数)
(10)実測番号
*実測方法別に,また実測年や時期が異なる場合,1から順に付した。また,同じ実測において複数の減衰評価手法が用いられている場合や,振幅レベル別のデータについては,1a, 1b, ...というようにアルファベット小文字を添えた形で番号を与え,データを区分した。
(11)実測方法
 *(10)においてアルファベット小文字で番号を付したデータは,以下(13)まで空欄となる。
(12)実測年または時期
 *同一年に複数回の実測が行われている場合(主に地震応答観測),カッコ内に実測月を表示した。また,竣工半年以内における実測については,すべて「竣工時」と表記した。
(13)固有周期の実測値
 *短辺, 長辺, ねじれモードそれぞれについて,1次から3次までの値を記した。(15)の減衰定数についても同様である。
(14)減衰評価手法
 *ハーフパワー法については,1/√2法として記した。
(15)減衰定数の実測値
(16)振 幅
 *振幅値は短辺,長辺,ねじれモードの各1次の値のみを記した。ねじれモードについては,建物端部での値もしくは回転角を指す。また,*印を付したものはrms値,他は最大値を示す。

 以上の項目において,空欄となっている個所は,値もしくは内容が不明であることを示す。また(13),(15)の項目において,ハイフン(?)となっている個所は,値が得られていないことを示す。

 データベースは,「一般建物」「塔状その他構造物」の2つのセルに,それぞれ以下の順で収録されている。
(a)一般建物
 ・S造建物 ・SRC造建物 ・RC造建物
(b)塔状その他の構造物
 ・S造タワー ・RC造タワー ・独立鉄塔 ・屋上鉄塔 ・S造独立型煙突 ・S造鉄骨支持型煙突 ・RC造独立型煙突 ・その他

▼ 参考文献
1)建築物の減衰評価研究会(代表:田村 幸雄):建築物の減衰評価研究報告書,(財)日本建築センター,1992年度建築に関する研究及び調査助成,1993
2)日本建築学会:建築構造物の振動実験,丸善,1978
3)日本建築センター:CD-ROM版高層建築物(1997年版),1997

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