2009年度建築学会大会(東北)農村計画学術講演・一押し梗概

09/12/28 農村計画委員会

 

6001 6005(定住・移住)  司会: 鈴木孝男・津倉真優子

セッション講評:このセッションでは「定住・移住」をテーマとする5偏の研究が発表された。丹念なフィールドリサーチに裏付けられた成果が発表され、人口減少時代の中で農山村地域が生き残っていくための貴重な知見として実を結ぶことを期待したい。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6002 発表者:吉原拓也、有賀隆(早稲田大)

「農山村における世帯の維持と農地利用との相互関係について」

推薦理由:攻めの定住策を打ち出し人口増加を成し遂げている全国的にも希な事例を取りあげ、世帯維持と農地利用の相互関係について丁寧に分析を行っている。暮らしの慣習や土地利用上の様々な制約があるなかで農村地域が存続していくための可能性を導き出していただくことを期待して推薦する。

□講演番号:6005 発表者:高井智仁、有賀隆 (早稲田大)

「集落内外居住者の生活実態解明による山間部の集落維持に関する研究」

推薦理由:中山間地域の維持管理について実態を細かく把握し、類型化された地域別に綿密な分析をされている姿勢を高く評したい。条件不利地域を維持していくために、地域内のニーズと地域外のボランティア力を中間的にマッチングしていく役割の重要性を強く認識した。研究課題としてあげられているボランティア導入後の地域変化に着目した今後の研究に期待したい。

 

 

6006 6009地域活性化    司会:熊野 稔・杉田昌也

セッション講評:演奏会の継続が地域の活性化に果たした役割、地縁組織が経営する酒場におけるコミュニティ財の運用、奥能登キリコ祭りを通した町作り研究等、3例は現場固有の事例調査に基くものである。その土地の事例を明らかにすることは意義があるが、一般的な知見として他地域にも活用できる知見や情報として結論を纏めておくことも重要と思われる。東北3県の地域コミュニテイ再生に向けた支援のあり方は、県の状況を纏めたものであり、研究方法等の記述が十分でないが、動向としての状況は明らかになった。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6008 発表者:津浦真優子・後藤春彦・佐藤宏亮(早稲田大)

「地域組織が経営する酒場におけるコミュニティ財の運用に関する研究」

推薦理由:地縁組織が経営する酒場におけるコミュニティ財の運用に関する研究は、こうした財の運用により、地域住民が地縁共有の場をわたしたちの場と認識し、持続可能なものとする一つのツールとなることを明らかにした。こうした財の運用は、他の自治会や集落においても地域共有の場の形成に寄与し、効果を発揮すると考えられ推薦する。今後、財の運用の仕方の詳細なノウハウの情報提供、課題や方向性を考察し提示していくことが望まれる。

 

 

 

 

6010 6013保全活動  司会:瀬沼 頼子・渡辺真季

セッション講評:いずれも住民(市民)参加型による里山保全活動の実態に関する研究報告である。1篇は前年度報告の継続である参与型研究であり、地域の実情に即した課題と取り組みの方向性を明らかにし、地域特性を活かした保全活動の在り方を提示している。3篇は連続報告内容であり、各地で盛んになっている里山保全活動を首都圏の活動団体に注目して、その活動特性や意識、課題等を抽出・分析し、今後の里山保全活動への示唆を与える研究内容になっている。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:601160126013 発表者:田中圭・山口廣訓・竹内啓介・三橋伸夫(宇都宮大) 「里山保全団体の活動と会員意識に関する研究」

推薦理由:近年の人々の環境問題に対する意識や地域社会活動への参加の高まりは、里山保全活動に対する関心・活動参加にもつながっており、本研究からは、特に首都圏では住民が活動に積極的であることや団体や行政との連携の重要性等の課題、今後の団体の活動内容への知見が得られており、今日的研究テーマとしてさらなる発展が期待される。

 

 

60146019(環境創造・教育・活動)   司会:三橋伸夫・山口廣訓

セッション講評:このセッションでは、小学校における環境教育について、里山ビオトープづくりに関する都内での取組(1編)、学校と地域との連携や組織体制について(2編)、大学キャンパス内での農学、環境科学および建築学の学際融合的研究の取組(1編)、NPO法人が主宰する大学生参加の環境教育実践(1編)、および英国で始まった草の根環境啓発運動TI(トランジション・イニシャティブ)の活動内容と日本での展開、の計6編が報告された。地球温暖化対策とも絡み、各レベルにおける教育・研究の取組が俯瞰できた。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6018 発表者:戸田都生男(財・啓明社)

「農山村における「木のものづくり」環境教育の実践効果」

推薦理由:「木匠塾」という1991年に始まり現在全国9カ所で開催されている取組のうち、川上村(奈良県)で行われている大学生参加のものづくり体験(林業体験・木工製作等)に参加した者を追跡し、その卒業後の進路を明らかにし実践効果を論じている。大学教育における地域との連携、インターンシップの必要性、環境問題への関心の高まり、林業後継者の確保などの諸ベクトルの交点に位置するこの取組が、参加者の社会への巣立ちを通じて、何らか社会へインパクトを与える予感をもって聴いた。

 

 

6020 6023(海外事例)   司会:栗原伸治・関野菜恵

セッション講評 6022の発表者が欠席(事前に欠席の連絡あり)であったため、計3題の発表となりました。うち2題は英国のグラウンドワークに関する研究、残りの1題がインドネシア、ボロブドゥールの市民組織に関する研究で、いずれも組織や活動について、現地調査にもとづき分析するものでした。対象とする組織や活動は複数あり、それぞれ多様なため、わずか5分の発表時間でその具体的な様子と分析結果の両方を伝えるのは、とても難しいことだと思います。しかしながら、発表者の方々は要領よく発表され、発表内容のみならず発表の仕方も参考になりました。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号: 6023  発表者: ティティン・ファティマ

The network structure of citizen’s  newly-established organization in Borobudur Sub District, Indonesia」      

推薦理由:上記のように、難しい発表であるにもかかわらず、留学生の方が日本語でとてもわかりやすく発表されたことから、一押し講演梗概として推薦いたします。ただ、質問させていただいたとおり、わかりやすい発表であったからこそ、市民組織の機能による分類の仕方に少し疑問が残りました。今後、その点もご考慮のうえ、研究をすすめていただければと思います。

 

 

6024 6029集落・地域景観  司会:川口 友子・直井 智之

セッション講評:本セッションでは、集落景観の分析に関する2編、漁村の集落分析が2編、こどものスケッチに描かれた風景を分析した研究が1編、銅版画に描かれた屋敷林から樹木構成を考察した1編が発表された。質疑討論では、集落分析の4編に対して、題目が発表内容を的確に表現しておらず、なにを目的としているのか不明という厳しい指摘がなされた。発表者は今回の指摘を受けて、次の課題としてつなげていってほしい。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6029  発表者:不破正仁・藤川昌樹(筑波大学)

「関東地方における南方系屋敷林の樹木構成パターンとその特徴」

推薦理由版画に描かれた風景を分析し、樹木構成を読み取るという手法はこれまであまり見たことがなく、独創性を感じられました。銅版の分析だけでなくヒアリング調査を加えるなど研究手法も丁寧で、さらに所有者の生活様式にまで言及している点に興味を持ちました。今後の展開に期待しております。

 

 

6030 6035景観・環境資源   司会:藤川昌樹・不破正仁

セッション講評 全体的に着実な調査に基づく研究成果が多く、質疑が活発に行われた。景観・環境資源の実態調査から所有者意識に踏み込んで分析を加える発表が多かったのが特徴である。方法的には他分野とも接点を多く持っており、今後の発展に期待したい。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号: 6032/6033  発表者: 橋田祥子・直井智之

「宇都宮市における長屋門の研究」

推薦理由:地域景観の中でひときわ目立つ建築でありながら、これまで集中的な検討が加えられてこなかった長屋門を対象として選定したことがユニークである。分布・規模・構成・建築年代・増改築・所有者意識などについて広く目配りした上で適切な分析を加えており、プレゼンテーションも明快であった。

 

 

60366041(文化的空間・水辺空間)  司会:藤本信義・堀之内祐輔

60426045(景観形成)  司会:村田明久・安楽あてね

 

60466051(空き家利用)   司会:田中千歳・饒村有里

セッション講評:空き家の需要と供給側双方のメリットを踏まえた研究展開の発表で、その意味では大変難しい研究のセッションであった。しかし同時に、より実践的でもあり大変興味深く、午前一番のセッションであったが、質疑応答や意見交換も活発に行われ、大きな意義のあるセッションであった。今後さらにこれらのケースを通して、空き家のみならず農村全体の活性化につながる具体的・実践的研究の発展に期待したい。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6046  発表者:翠勇樹, 浜崎一志, 亀山芳香

「集落活性化のための空き家活用の考察」

推薦理由:地方の過疎地域での空き家活用において、現在、さまざまな取り組みが試行されている中で、本報告は、より実践的に介入した報告であると思われ興味深い。プログラム実践後のアンケート調査結果で、望まれる田舎暮らしは、短期滞在型と定住型という両極端な希望が集中した。今後、集落内で、この相反する二点をどのように位置づけ実践展開していくのか、具体的な個々の課題への考察と解決する工夫や手法等に重点をおき、地方の過疎化に歯止めをかけ、ひいては地域全体の活性化に結びつくモデルケースとなるような追跡介入の展開に期待をする。

 

 

6052 6055定住支援 司会:中田 悟・井上真澄

セッション講評:定住支援をテーマに、前二編の先進事例を踏まえた農村地域の空き家活用システムの分析や転用された福祉施設のネットワーク構築について、ストック活用に併せ有用な報告であった。また後二編の地元住民・出身者から見た意識分析についても、今後の新たな地域社会のあり方や関わり方を考察しており今後の報告に期待する。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号: 6053  発表者: 畑中卓也(山口大学)

「過疎地域における空き家を活用した地域密着型福祉施設ネットワークの構築」

推薦理由:過疎地域をはじめ各地で空き家が増える中で、農山村地域におけるストック活用の課題において、空き家を小規模多機能福祉施設へ転用した地域密着型の福祉施設のネットワーク構築に関する有用な報告であった。

 

 

60566061(高齢者居住環境)  司会:中園真人・山本幸子

 

6062 6066農村都市共生・まちづくり) 司会: 山口忠志・谷内田佳奈

セッション講評:本セッションは、農村と都市の共生を目指した取り組みがテーマであり、福島県田村市(6062)、山梨県早川町(6063)、福島県南会津町(60646065)、石川県河北干拓地(6066)における地域住民や学生が主体となった取り組みが報告された。それぞれの取り組みにより活動の熟度が異なり、地域の将来像づくりと向き合う活動主体の研究や、新たなステップへ向かうために活動主体が克服すべき課題を捉えた研究など、「農村都市共生・まちづくり」が直面する課題を議論するための示唆に富んだセッションとなった。それぞれの活動主体に目を向けた詳細な報告がなされたが、活動全体を持続的に展開するための主体間の連携や、その際の研究対象組織が果たすべき役割などを深めることが、本セッションに関わる研究に求められる課題だと感じた。

[一押し講演梗概]

□講演番号:6063 発表者:跡部崇之・後藤春彦・遊佐敏彦・山崎義人(早稲田大)

「都市・農村交流を継続する地域の課題に関する研究」

推薦理由:都市農村交流が活発に行われている山梨県早川町を対象に、地域住民から見た継続的な交流に対する評価を行っている。都市側の農村へのニーズの高まりに対して、農村側の受入体制の不足が課題となる中で、継続的な交流を経験している早川町における地域住民側からの評価を考察する意義は大きい。また、交流活動は地域住民に対して一定レベルで評価されているものの、住民生活の質を向上することと結びついていないことが課題であると結論づけており、継続的な交流活動に向けた本質的な課題を指摘している。今後は、本地域で活動する中間支援組織の役割や位置づけとの関係を深めることに期待したい。

 

 

6067 6071(市町村合併・地域自治組織)  司会:齋藤雪彦・跡部嵩幸

セッション講評:6067-6069については地域自治組織の実態に関する研究であり、興味深い内容であったが、計画研究としてのアウトプットが明確でない、もしくは一般的であるとの指摘があった。6070-6071について、事例は異なるがいずれも住民参加の手法に関する研究であった。研究課題の設定には意義があり、今後の展開が期待できるが、科学的再現性という点でやや恣意的な論の展開があるというような指摘があった。

 

[一押し講演梗概]

該当なし

 

 

6072 6075自然災害復興事業の効果  司会:本多友常・多賀麻衣子

セッション講評:災害復興事業に伴う生活再建において、社会的生活環境の激変に対する的確な対応が求められている。当セッションのすべての発表は災害により移転や再建を余儀なくされた地域における物理的な変化と、それに伴い引き起こされたコミュニティの変質、生活満足度に対する課題などの深刻なテーマを扱っており、復興事業の適切な運用において重要な課題を浮き彫りにしている。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6073  発表者:山下香織・山崎寿一・山田啓治・藤井麻理花(神戸大)

「震災復興後のコミュニティの継承・変容に関する地域計画的研究」

推薦理由:発表された研究テーマはそれぞれ共同研究であり、研究内容には優劣を付けがたい調査研究となっている。その中であえて取り上げるとすれば、災害復興における手法の違いによる特徴を明らかにし、それぞれの長所短所を明確にしたことにより、調査内容の結果が新たな方法論に結びつく可能性を持っている点を評価したい。

 

 

60766080(自然災害復興支援・ネットワーク)  司会:山崎寿一・山下香織

 

 

6081 6085自然災害に対する防災・減災意識  司会:神吉紀世子・本塚智貴

セッション講評:集落の過疎・高齢化の傾向に対応した自然災害への備え、漁村や山村集落等の魅力でもあると同時に防災上の弱点ともなりがちな傾斜環境や細街路網を前提とした災害への備え、等に着目した報告が行われた。集落空間の物理的状況と住民の意識や地域社会の活動の両方に関心をもつ研究がなされていることが特徴であると思われる。近年こうした事例調査が各地で蓄積されつつあると推測され、集落の防災・減災力についての一層の研究交流・理論的発展が期待される。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号: 6081 発表者: 菅原 遼・畔柳 昭雄 

「津波防災対策・体制に対する住民の意識構造に関する研究」

推薦理由:若手の発表者のなかからということで選出した。有効回答率86.7%のアンケート調査結果は、貴重なデータであると考えられる。複数地区を抽出して住民意識と防災対策の実態の関係をみる試みである。住民の意識(満足度)と防災・減災の備えの実態にはずれがあり得る。満足評価に留らず、集落の実情に即して適切に備えが進められるよう促す原動力となる住民の認識がいかに形成されるか等、さらなる研究の進展に期待したい。

 

 

6086 6090(集落景観)    司会:工藤和美・本庄博希

セッション講評:民家の外観的特徴を地域分布から捉えたもの2編、集落の縮小に伴う土地利用の変化や特徴について2編、災害後の無住化した集落の土地利用活動を扱ったもの1編、の研究報告が行われた。減少に向かう人口動態に伴う集落景観や土地利用の変化プロセスや活用の仕組みは、何を守っていくかということも含めて重要な課題であると感じた。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6090  発表者:林 哲久・田口太郎・福留邦洋(新潟工科大)

「無住化集落における転出者の土地利用活動」

推薦理由:地震災害により集団移転が行われ、無住化した集落の移転住民による土地利用や管理活動についての報告であった。災害による無住化という特殊な事例であり、一般的な消滅集落に当てはめることはできないが、住民組織による従前集落の土地利用活動は、住まなくなった土地にどう関わっていくかという「仕組みづくり」を示すものであり、興味深いものであった。

 

 

 

60916096(集落空間のなりたち(1)  司会: 平田隆行・中村将之

セッション講評:郊外化した,あるいは過疎化した農村において,かつての土地利用を復元的に考察することで,集落本来の空間構成を分析する有意義なセッションであった。一方,会場からの指摘があったように,土地利用に留まるものが多く,社会階層の存在などへの言及は殆どなく,今後の課題として浮かび上がった。

 

 

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:60916093 発表者:本庄博希,福本遼,内野愛 (明石高専)

「ため池集積地域いなみ野台地の集落空間構成と景観」

推薦理由:瀬戸内気候で雨量の少ない兵庫県加古郡稲美町ではたくさんのため池が造成されているが,土地利用の変化と水道の整備によって,それらため池の役割が忘れ去られている。本研究は,ため池の役割を丁寧に掘り起こすことによって,生活空間がなぜこのような形態に至ったのか,その空間構成と景観を分析したものである。

ため池から浮かび上がる空間構成ネットワークの緻密さとその精巧さ,それが景観や生活に反映されている様を美しい図面やわかりやすいプレゼンテーションによって示した本研究は「一押し」に相応しい発表であるといえる。

 

 

60976102(地域空間と生活環境)  司会:小野尋子・山本航一

 

 

6103 6107(地域空間と生活環境)   司会: 黒野弘靖・大月拓也

セッション講評:このセッションは,独立した5編の発表であった。棚田景観の別府市内成,限界集落としての三原市小佐木島,50年後の土浦市,在日米軍により土地接収された8集落,伊根浦の漁村と、対象もテーマも方法論も異なる。現代の農村集落が直面する厳しい状況に、発表者を含む少数で取り組んだ報告には、迫力を感じさせるものがあった。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号: 6104   発表者: 八木健太郎(西日本工大)

「小佐木島における島民の生活パターン」

□講演番号: 6106   発表者: 小野尋子・清水肇(琉球大)

「土地の接収を受けた集落の民俗空間の変化と移転、合祀からみた意義の研究」 

推薦理由: 質疑討論の中で、梗概には記載されていない、発表者の立脚点や取り組み姿勢やそのもととなった事実が明らかにされた。自立した研究者として、クリティカルな状況にある集落の計画に実際に関与し、よりよい方向を見いだそうとしている。同セッションの大学院生の発表者にとっても、学ぶところは多かったと思われる。

 

 

6108 〜6112(漁村集落) 司会:山崎義人、伊坂 春

セッション講評:  近年、漁村の空間構成に関わる研究が増えている。しかし、セッションでも議論されたように、神代氏や地井氏らなどのかつての研究成果が踏まえられていないことに危惧を覚える。『図説集落』の再販など、あらたな集落に関する本など、何らかの対応が必要ではないだろうか。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6111  発表者:八島健介・宮崎隆昌・懸真之介

「沿岸域集落における空間構成に関する研究」 

推薦理由:密集居住域における防音について、収納に着目し、その地域空間的特性について調査していることは、独創的な視点であり、今後の研究の展開が期待される。

 

6113 6118地域施設 司会:宮川智子・藤井達也

セッション講評:人口減少・高齢化が進むなか、地域施設のあり方も変化してきている。本セッションでは、小学校施設や廃校となった小学校の利活用、農産物直売所、リゾート施設、交通手段をテーマに、縮小が進むなかでも、快適な生活を続ける取り組みや施設をとおして来訪者との交流が行われていることが伺えた。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:6114  発表者:溝口裕規 他(早稲田大学)

「廃校舎の利活用促進が住民活動に与える影響に関する研究」

推薦理由:6114では、廃校となった小学校がその後も、木造校舎が建替えの対象となる一方で、その建物が評価され利活用が行われる理由になっていることが明らかにされた。また、転用後も行政、住民、転用者が参加して運営主体となるなど、多様な人々の連携が重要であることが示唆された。

 

□講演番号:6118  発表者:、川口彩希 他(八代高専)

「地域コミュニティの維持発展を目的とした交通手段の導入に関する研究」

推薦理由:6118では、アクセスが困難な地域において重要な課題で、コミュニティによる自主的な協力が行われていることが多い交通手段をテーマに、新たなルートの提案・社会実験をふまえて実務面からも今後の交通手段への提案が検討されており、大変興味深い内容であった。

 

 

6119 〜6124(海外集落、住生活) 司会:金木 健、松本歩子

セッション講評:6119はどのような観点から空間変容を把握しようとするのかについての質問があった。6120は複数の民俗について、帰属意識と集住態の関係を考察した

ものであるが方法論についての質問があった。6124は民族名・宗教名・人口

規模・近代伝統指向傾向など民族的背景の質問があった。

 

[一押し講演梗概]

□講演番号:61216122  発表者:伊坂 春・稲垣淳哉

「下沈式窰洞住居の空間構成と地上部の役割に関する研究」

推薦理由:ヤオトン集落の住居および地上部を含む全体性に着目したユニークな観点の研究と考えられる。綿密な実測実地調査により、住居の物理的実態がくわしく報告されている。さらに集落住民の社会生活のありよう、時間的なくらしの流れなどを含めて、生活文化のなかでの住空間の位置づけとして報告されることを期待する。

(以上)