農村計画委員長便り 060811  (文責・伊藤庸一)


地井先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます


目次
1.06年6月17日春季学術研究会/近年のアジア農村研究
2.06年6月17日本委員会抜粋
3.06年6月26日学術推進委員会抜粋
4.韓国農村建築学会訪日・日韓研究会
5.06年度技術部門設計競技「自然災害で居住地が甚大な被害を受けた農山漁村集落の再建計画」
6.国土形成計画に向けた提案
7.06年度建築学会関東大会農村計画部門

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1.06年6月17日春季学術研究会/近年のアジア農村研究

今年の春季学術研究会は、『近年のアジア農村研究?フィールドワークからフィードバックへ?』と題し、大阪工業技術専門学校で開催した。
 企画は、斎尾直子先生(筑波大学)にお願いし、宇高雄志先生(兵庫県立大学)、平田隆行先生(和歌山大学)、栗原伸治先生(日本大学)に、「我が国をはじめアジア諸国成熟社会の農村地域においては、都市的な多機能性・多様性を享受しつつも、伝統的な知恵や技術を継承しながら、独自の地域アイデンティティを創出している農村地域が数多く存在する。農村計画分野でも、従来よりアジア諸国の農村計画研究・計画に携わってきた研究者は多く、時代背景に伴いテーマの変化はあるものの、今後とも研究・計画ノウハウを共有しつつ展開していく分野であろう。本研究会では、マレーシア、フィリピン、中国でのフィールドワークを長年行ってきた方々に、研究成果・最終計画では記述しきれないフィールドワークの中での視点、方法、課題、またフィールドワークにもとづく調査研究のフィードバックについての考えあるいは実践内容、さらにはフィールドワーク、フィードバックに関して描いているパースペクティヴの紹介」を報告していただいた。
 会場は近畿支部研究発表会場とし大勢の参加者を期待したが、残念ながら参加はふるわなかった。しかし、木村儀一先生(明治大学)・重村力先生(神戸大学)のコメントや会場からの質疑で盛り上がった。最後に、岡田知子先生(西日本工業大学)に総括をお願いし、閉会した。
 参加者を増やす工夫はなお検討されてよい。しかし、テーマ性や中身の濃い議論も重要である。両立させるためには、企画の時間を十分にとる必要がありそうだ。


2.06年6月17日本委員会抜粋

 春季学術研究会終了後、本委員会(旅費なし)を開催した。主たる議題は国土形成計画への提案に関する議論である。
21.小委員会の公募
 被災集落支援小委員会に3名、農山漁村景観小委員会に3名、集落共生デザイン小委員会に1名、田園空間計画小委員会に3名の応募があり、了承された。
●小委員会は公募委員を含めることが要請されているので、積極的に公募をお願いしたい

22.日韓農村建築交流
→7月2日に開催された。後述

23.代議員による委員活動評価
 「概ねよし」という意見がある一方で、「(建築計画、農村計画、都市計画の各)委員会を統合してはどうか」、「研究会等の参加者がすくないのが気になる」といった意見がでた。
●農村計画としての独自性を打ち出し、目に見えるかたちで成果をだす、という方向で対応していくことが確認された。

24.技術部門設計競技の応募状況と審査方法→7月7日に公開審査。後述

25.国土交通省に対する国土形成計画についての提案
 農村居住小委員会、農山漁村景観小委員会、中山間地域組織小委員会、被災集落支援小委員会から提案メモが出され、これをもとに意見交換をした。
 その結果、重点フレーズ+体系的裏づけ資料の2段構えで構成する。
 6月中に各小委員会で修正提案を検討
 7月7日10:00〜11:00に最終調整をすることにした。
●提案素案は後述


3.06年6月26日学術推進委員会抜粋

31.05年度小委員会活動成果報告

 276小委員会の活動成果が日本建築学会ホームページに掲載された。http://news-sv.aij.or.jp/academic/seika/05seika/inedx.htm

32. 06年度内部監査報告
 監事から会長宛に提出された内部監査報告書が紹介された。監査は委員会ごとに、2005年度までに活動を終了した小委員会が、出版、講習会・シンポジウム等の開催、委員会資料の提供を、2002〜2005年度のあいだに(今後1-2年で成果還元につながる活動を含む)どのぐらい行ったかの集計である。
 農村計画委員会は、2005年度までに8小委員会が活動を終了し、成果を公表した小委員会が5であったため小委員会の成果還元達成は63%(全体平均78%)、出版を行った小委員会が2であったため出版成果還元達成度は25%(全体平均49%)、シンポ等の実績が3小委員会であったためシンポ等成果還元達成度は38%(全体平均29%)になった。
●数値だけの還元達成度に異論はなくはないが、目に見える成果を出さないと反論はしにくい。代議員による評価とあわせ、かたちに見える成果を期待したい。

33.デジタルライブラリー大会研究集会ダウンロード状況
 05年度大会で頒布された資料のうち9研究集会の資料集が大会会場と同額でダウンロードができ、現在までに25冊分が頒布された。
 06年度大会分も資料残部が僅かになった場合は、大会と同額でダウンロード頒布することができる。農村計画委では、PD・被災集落再建、協議会・ラーバンが該当する。
●大会時本委員会でご意見をお聞きしたい

34.建築学と本会発展のため中長期計画
 中長期起草委員会による表題の冊子全85ページが配布された。真意を測りかね、質問が出された。中長期計画の起草を報告したということで、議論を終了した。
 アクションプランを見ると、学術基盤の整備に関して学術推進委員会内に複数のwgを組織、社会的ニーズと知的資産の創出のために複数の横断的特別調査研究委員会をおく、また会員サービスの充実や国際化への対応を進めるための活動目標と組織が網羅されている。詳しい内容を知りたい方は建築学会事務局へ問い合わせを。

35.そのほか
そのほか、公募委員(農村計画委は前述を含め10名すべてが承認)、07年度特別研究委員会募集要領、中銀カプセルタワー保存要望書、元町公園および旧元町小学校の保存に関する要望書について審議した。

 
4.韓国農村建築学会訪日・日韓研究会

 今年は韓国農村建築学会が訪日する年で、日本側は金俊豪先生(宇都宮大学)に窓口をお願いし、準備を進めてきた。韓国側との調整に手間取り、会告にのせることができなかったが、清水肇先生(琉球大学)、内田文雄先生(山口大学)の助言、協力をいただき、成功裡に終えることができた。金先生、李さん(宇都宮大学院生)ご苦労さんでした。

41.日韓農村建築計画交流会「東アジアの集住文化と保存」
 7月2日、那覇ぶんかテンブス館を会場に、岡田知子先生(西日本工業大学)の司会で開会、伊藤庸一と韓国農村建築学会長李相正先生の挨拶のあと、清水肇先生・小野尋子先生(いずれも琉球大学)が「現代史の中での沖縄の伝統的集落空間の変遷と継承課題」、朴益秀先生(湖南大学校)が「楽安邑の住居保存」、池ノ上真一氏(九州大学)が「竹富島における文化遺産マネージメントとツーリズムの関係構築」、朴光範先生(韓国技術教育大学)が「天安東部地域民族文化及び郷土食品を活用したまちづくり」を、金先生、李さんの通訳で、報告した。活発な議論で盛り上がり、その熱気のまま、うりずんの懇親会も盛り上がった。

42.訪日団沖縄研修
 翌3日:首里城および首里金城町の細街路の保全整備事例、大城、荻堂集落、中村家、沖縄コンベンションセンター、中城城趾などの見学、4日:備瀬集落、沖縄郷土村、今帰仁村公民館、名護市庁舎などの見学、沖縄在住専門家との交流懇親、5日:竹富島へ、竹富島ゆがふ館、喜宝院蒐集館、島内見学、島人と交流会、6日:那覇経由帰国、と中身の濃い研修を企画することができた。重ねて、清水先生、内田先生、金先生、李さんに感謝申し上げる。


5.06年度技術部門設計競技「自然災害で居住地が甚大な被害を受けた農山漁村集落の再建計画」

 7月7日に表題の審査を公開で行った。建築雑誌に審査経過や総評、入賞作選評に掲載されるが要点を以下に記す。

51.アイデアコンペ条件
条件1
地震で大きな被害を受けた福岡県玄界島、新潟県中越またはその他の自然災害を受け、再建計画を立案中、または再建中、あるいはすでに再建した農山漁村集落のいずれかを計画対象とすること。
条件2
地形・風土との調和を図り、地城コミュニティに配慮した居住地再建計画のアイデアを提案すること。

52.審査員(敬称略、50音韻)
伊藤庸一(日本工業大学)
内田文雄(山口大学)
岡田知子(西日本工業大学)
河野泰治(福岡大学)
重村力(神戸大学)
高見沢邦郎(首都大学東京)
林静雄(東京工業大学)
三井所清典(芝浦工業大学)
三橋伸夫(宇都宮大学)
和田章(東京工業大学)

53.審査経過報告
応募作品は45点であった。うち、4点は指定された提出期限を過ぎており、審査委員会で審査対象外にすることを確認した。その結果、41点について審査を行った。41点のうち、福岡県玄界島を対象とした作品は17点、新潟県中越地域を対象とした作品が18点、その他を対象地とした作品が6点(国内4点、国外2点)であった。
審査会は7月7日午後1時から公開で行った。傍聴者は5名であった。
なお、入賞数は、最優秀賞2点以内、優秀賞3点以内、佳作若干である。
@第1段階
審査員が全作品の評価を行ったうえで、入賞候補として、一人5作品を投票した。その結果は、5票・1作品、4票・4作品、3票・1作品、2票・8作品、1票・10作品、0票・17作品となた。
まず、0票・17作品を審査員全員で再確認し、入賞候補として2作品を選考した。
次に、1票・10作品について、1作品ごとに投票した審査員から投票理由を説明してもらったうえで意見交換を行い、選外5作品、入賞候補5作品を選考した。
A第2段階
続いて2票・8作品について、1作品ごとに投票した審査員の投票理由を聞いたうえで意見交換を行った。
3票・1作品、4票・4作品、5票・1作品についても審査員全員で議論を交わし、最優秀賞候補・優秀賞候補5作品を選考した。
B第3段階
最優秀賞・優秀賞候補5作品から最優秀賞候補として、一人2作品を投票した。その結果、7票・1点、5票・1点、2票・3点となった。
7票、5票を得た2作品について議論し、新潟県中越、福岡県玄界島、その他の被災地の再建計画にふさわしい技術を有する作品として審査員全員一致で1点を選考し、これを最優秀賞とした。
残る4作品ついて改めて意見交換し、優秀賞として2作品を審査員全員一致で選考した。
C第4段階
最優秀賞候補・優秀賞の選外となった2作品、第1段階で入賞候補として選ばれている7作品、さらに第1段階の投票で2点、1点の作品を1作品ずつ審査員全員で確認し、佳作として8作品を選考した。
以上を整理すると、
最優秀賞 1点(福岡県玄界島)
優秀賞  2点(新潟県中越、ジャワ島)
佳作   8点(福岡県玄界島・3作品、新潟県中越・4作品、熊本県・1作品)
である。

54.総評
 本課題「自然災害で居住地が甚大な被害を受けた農山漁村集落の再建計画」は、05年3月の福岡県西方沖地震、04年10月の新潟県中越地震、あるいは04年12月のスマトラ沖大地震とインド洋大津波の大規模災害に対する復興計画、集落再建が背景にある。
 忘れもしない95年1月に阪神淡路大震災が発生し、大きな被害を受けた。建築学会ではこれを教訓に第1次提言「建築および都市の防災性の向上に関する課題」、第2次提言「被災地域の復興および都市の防災性の向上に関する提言」、第3次提言「建築および都市の防災性の向上に関する提言」を出し、さらに05年には第3次提言の検証と所見を公開しさらなる防災性の向上を目指すとともに、「中山間地域等の地震防災と復興対策への提言−新潟県中越地震に鑑みて」を出し、中山間地域における防災性の向上、復興計画の指針を提示した。
 しかし、自然災害は予想を超えたエネルギーで私たちの安全と生活を脅かし続けているのも事実である。ハリケーンカトリーナによる洪水、平成18年豪雪、パキスタンにおける地震、ジャワ島での地震・洪水地滑り・地震と津波、日本や中国での大雨洪水などにより居住地に甚大な被害が及んでいる例は枚挙にいとまがない。
 たび重なる自然災害に、集落再建計画のアイデアに大きな期待がかかった。結果として、45作品の応募が期待に応えてくれた。しかも、17作品が福岡県玄界島を対象地とし、18作品が新潟県中越地域、4作品が他の国内事例、2作品が国外事例であり、身近に多発する自然災害と被災集落再建への高い関心をうかがわせた。
 本課題では、応募要領の条件2で示した「地形・風土との調和」「地城コミュニティへの配慮」とともに、防災性や復興計画にかかわる技術提案、生活再建計画の提示も重要な要件になる。入賞作品は、力点の違いはあるものの、これらの条件・要件に優れた提案をしてくれた。言い換えれば、条件・要件を十分に満たしていない作品が選外になった。
 地形・風土との調和に対しては、入賞作品の多くが綿密な現地調査をもとにして、固有の地形・風土のもとで構築されてきた集落構造を読み解いていた。こうした集落構造の基本を受け継ぐことは美しい風景の継承、合理的な土地利用につながり、ひいては集落の永続性を担保することなる。選外の作品には、固有の地形・風土を読み解いたものの、唐突な景観へと展開した提案もみられた。被災住民の目で景観を検討して欲しかった。
 地域コミュニティに対しては、旧来の集落コミュニティを強く意識した提案と、集落再建を通してコミュニティを形成しようとする提案に大きく分かれたが、地域社会にとってコミュニティが必須であることは共通する。阪神淡路復興計画におけるコミュニティ形成の試行錯誤や検証、あるいは中越、玄界島、その他の被災地で地域コミュニティが支えになっていたことの反映であろう。入賞作品は、加えて活溌な地域コミュニティのための空間的な仕掛けが提案されていた。復興計画、集落再建に有効な資料となる。
 防災性あるいは減災性にかかわる技術、復興に関する計画技術については多様な提案がみられた。特徴的なものは、中越、玄界島ともに傾斜地で地盤崩落が顕著なため、地盤修復・地盤強化・防災壁を考慮した構造体を居住地再建の構造体としても活用する提案で、防災壁を風景の骨格とした作品、フリーフレームによるインフラ・居住空間整備が入賞となった。また、住み続けながら復興・再建する提案、自分たちでできる技術を用いた復興、応急仮設住宅や耐雪型住居、伝統住居の活用に関する技術提案も審査員から高い評価を受けた。
 集落再建とは永続的な生活がイメージされなければ実現性をもたない。被災地の地形・風土にかなった生産空間の提案、土地利用を再編し生産性を高めようとした提案、あるいは地域に伝わる多様な魅力を活かした提案、高齢者が住み続けるためのグループホームを組み込んだ提案、マルチハビテーションなどの中山間型ライフスタイルをも含めた提案など、示唆に富んだ作品も多く寄せられた。これらも計画技術資料として有益である。
 本年度の建築学会関東大会では、本課題入賞者表彰式のあとのPDで、最優秀賞、優秀賞の方のプレゼンテーションと審査員によるコメントを予定している。その後の討論で、集落再建計画について議論を深めたうえで、集落再建計画技術資料の普及、活用についても考えていきたい。


6.国土形成計画に向けた提案

 昨年来より検討を進めてきた国土形成計画に向けた提案は、06年度新たに組織された小委員会からの提案をもとに7月7日に全体を調整し、下記のようにまとめて建築学会に提出した。建築学会では関連委員会に問い合わせをし、7月末までに寄せられた海洋委員会からの提案とあわせ、文言等の整理のうえ、理事会に諮り、国土交通省に提案することになった。農村計画委員会の提案を下記に記す。
■テーマ:
 「安心して住み継げる故郷(くに)づくり」
 「美しさを育む国土(くに)づくり」
■方針:
□「安心して住み継げる故郷(くに)づくり」について

1.3全総などで構想された定住圏・生活圏・流域圏の構想の総合的評価

 新に国土形成計画を検討するにあたって、かつての総合計画とそれに基づき実現した内容を明らかにすることが必要となるが、特に、農村計画分野では、上記の各圏域の構想が、重要な論点を提示していたと思われ、それの総合的な評価を、専門関係者により議論し明確することが求められる。

2.市町村合併後の多元的な主体の自治、及び行政能力のあり方の追求
 それぞれの市町村が、各住民に行政サービスを行った1対1の対応に変わって、平成の大合併による新しい市町村が中心となり提供が可能となる行政サービス、さらに、旧町村を基礎とした自治の形態、もっと身近なまとまりによるコミュニティ活動など、それぞれの主体で、ソフト・ハードのまちづくり・むらづくりのあり方を追求する必要がある。

3.定住空間・定住社会としての農村地域の存続に向けた対応
 低密度居住地域の特性に応じた地域システムの再構築
 定住を担保する生活諸サービスの統合的ネットワークデザイン
 高齢化に対応した生活空間のバリアフリーデザイン
 農村コミュニティの活性化
 集落再編計画の策定(撤退を含む)

4.新たなコミュニティ再編による地域自治組織の形成
 集落の人口減少に伴い、集落毎での自治機能低下や土地利用の維持・管理、伝統文化の継承などが困難になっている。このため、地域の実情にあった区域の見直しを行い、新たなコミュニティ形成の単位と組織づくりが必要である。

5.各農山漁村集落を活かす新しいネットワークづくり
 各集落が自治能力を高めると同時に、お互いを活かす集落相互、さらには集落と都市との共存ネットワークを形成する。超少子高齢社会のなか、減災が求められる社会にあって、新たな形の相互互助を目指す必要がある。

6.市町村の互助ネット構築
・自立地域社会の構築、安全・安心を支える国土形成、都市農村交流など農村に限らず「地域社会」をいかに安定的かつ持続的に発展させていくかの方策は、焦眉の課題である。
・そこで、これまでの多く蓄積されている「自治体間の交流、姉妹都市作り」とは視点を異にする自治体互助ネットの構築を提案する。
・自治体互助ネットのポイントは、自治体の組み合わせにある。
 ここでは地震、洪水、山崩れなど多様な災害のリスクの異なる地域の組み合わせにより、日常的な交流をベースに非常時に助け合うネットワークシステムとする。
・自治体相互のアクセスや相互の特徴の差異などに配慮した個々の組み合わせによるネット作りをまず目指すことになろう。こうしたネットが広域レベルや全国レベルで広がることにより、非常時に迅速に対応できるネットワークが構築されていくこととなろう。 

7.複数(主に2つ)の居住拠点をもつ居住スタイルの社会的認知と支
 住民登録地だけでない2重登録‥・税の分配(「国土維持税」「国土保全税」etc.)
 遠隔居住の親を社会的に支援
 不在地主の準住民化
 限界集落・消滅集落への支援

8.田園空間の計画的なまちづくり
 都市の人口増加による住宅需要に伴い、地価高騰や持家志向により都市近郊の農村部への住宅団地づくりが行われてきたが、今後の人口減少によるコンパクトシティ論や都市再生プロジェクトなどのよる都心回帰に伴い、郊外の住宅団地では過疎化が起こり、コミュニティの崩壊をもたらす可能性がある。
 一方、都市内から田園空間への居住志向もあり、都市近郊地域での優良な住宅の受け皿づくりを進めていく必要もある。
 既存集落をも含めた、住民参画による農業・農村地区のマスタ−プランづくりが必要である。

9.地場産業空間としての農村地域の活性化をめざす対応
 農林漁業・地場産業・「環境型産業」の育成支援
 農林漁業・地場産業・環境型産業の担い手・後継者の育成
 中山間地等直接支払制度などの継続・充実
 耕作放棄農地、放置林への対処

10.施策展開のための行政システムの提案
 農村集落のモニタリング(定点観測)体制の構築
 農林漁業統計(センサス等)における地域振興の観点からの調査項目設定
 行政施策効果の評価検証体制の充実・精緻化
 補助金の運用方法の見直し
 NPO、ボランティアに対する支援組織(中間セクター)設立への支援
 水源税、環境税等の動きと直接支払い等既存制度のリンケージ

11.社会資本としてのむらづくり・むらおこし情報の整備
 様々なレベル・主体によるむらづくり・むらおこしの活動が広く展開しているが、そのなかで国土形成に関わる情報収集とそのデジタル化の整備が進むと国民各階層に、その情報をより広くアピールでき、国民に理解を求めることが可能となる。これは、一種の社会資本と見なして整備することが求められる。


□「美しさを育む国土(くに)づくり」について

1.農山漁村景観の掘り起こし

 保全すべき農山漁村景観は、既に著名な地域のみではなく、多く潜在している。生態学的、水門学的、美観的、歴史的、地域史的、民俗・生活史学的、建築的、生業史的、等、多様な観点からの評価が行われることで、貴重な景観の価値をもつ(または、まだ取り戻せる)地域を掘り起こす。

2.自然と共生する知の学びと継承
 農山漁村の景観の保全は、その成り立ちと個性を十分把握して行う。農山漁村の景観の中から学びとれる、自然条件と応答するための暮らしの知・経験の蓄積(例えば、適地適作、適地蔵木、等を実践する知)を重視する。

3.担い手の拡大と知の伝授
 農山漁村の景観は、人手をかけることで保全できる景観であるので、「景観保全のための労働」を諸施策に位置づけ、担い手の拡大を図る。新たに育成された担い手が、経験豊富な担い手から知と経験の蓄積を学ぶ機会を重視する。

4.二次的自然空間としての農村地域の環境保全に向けた対応
 循環型農村社会の形成
 自然空間の保全と利活用の促進
 源流エリアとしての中山間地域の生態系保全
 文化的景観としての二次的自然景観の保全と創造

5.伝統社会としての農村地域の保全的開発への対応
 伝統技術・文化の保全
 伝統的地域景観の保全
 伝統文化・景観と産業振興・交流のリンケージ
 環境資産を活用したビジネスモデルの構築

6.地場産業空間としての農村地域の活性化をめざす対応
 農林漁業・地場産業・「環境型産業」の育成支援
 農林漁業・地場産業・環境型産業の担い手・後継者の育成
 中山間地等直接支払制度などの継続・充実
 耕作放棄農地、放置林への対処

7.地域資源の維持管理や地域を支援する新たな枠組みの形成
 平成の市町村合併や農協の合併などに伴い、行政機能の集約化や地域施設の統廃合が行われているが、逆に、農山村地域においては高齢化に伴い国土管理や地域資源の維持のためにも、旧村や小学校単位での地域コミュニティを支える人的配置や最低限のシビルミニマムを確保する必要がある。
 また、地域資源等を活かしたグリ−ンツ−リズムや都市農村交流等により地域の再生を行い、活力を取り戻すことも検討すべきである。
 更に、景観形成や景観保全を通した美しいまちづくりを推進し、地域資源の育成や確保、技術の伝承や人材育成、産業の連携などにより、豊かな地域の魅力づくりを行っていくことも必要である。

8.施策展開のための行政システムの提案
 農村集落のモニタリング(定点観測)体制の構築
 農林漁業統計(センサス等)における地域振興の観点からの調査項目設定
 行政施策効果の評価検証体制の充実・精緻化
 補助金の運用方法の見直し
 NPO、ボランティアに対する支援組織(中間セクター)設立への支援
 水源税、環境税等の動きと直接支払い等既存制度のリンケージ

9.環境管理公社の設置:地域再編と市町村レベルの環境管理組織の確立
 町村合併後の対応
 地域の生態系−と地域社会の持続性
 集落と市町村の中間規模(大字程度−地勢の単位)
 エコロジカルな計画ユニット

10.社会資本としてのむらづくり・むらおこし情報の整備
 様々なレベル・主体によるむらづくり・むらおこしの活動が広く展開しているが、そのなかで国土形成に関わる情報収集とそのデジタル化の整備が進むと国民各階層に、その情報をより広くアピールでき、国民に理解を求めることが可能となる。これは、一種の社会資本と見なして整備することが求められる。


7.06年度建築学会関東大会農村計画部門

71.セッション講評・一押し発表推薦
 今年度もセッション講評と一押し発表の推薦をお願いしたい。司会の方には負担が増えるが、発表会の活性化と若手研究の支援になる。昨年度、セッション講評・一押し推薦を回答されなかった司会者がいた。ご協力をお願いしたい。

72.農村計画部門+特別研究委員会パネルディスカッション
 自然災害で居住地が甚大な被害を受けた農山漁村集落の再建計画
 日時:9月7日(木)9:15〜12:00  場所:16号館セレスとホール
 司会:三橋伸夫(宇都宮大学)、内田文雄(山口大学)
 記録:後藤隆太郎(佐賀大学)
  第1部 2006年度技術部門設計競技表彰式
   審査経過報告 伊藤庸一(審査委員長・日本工業大学)
   挨拶 村上周三(本会会長・慶應義塾大学)
  第2部 パネルデスカッション
   主旨説明――伊藤庸一(前掲)
   入賞者プレゼンテーション
  報告
   新潟県中越における復興計画 三井所清典(芝浦工業大学名誉教授)
   福岡県玄界島における復興計画 岡田知子(西日本工業大学)
  コメント
   建築設計の立場から 重村 力(神戸大学)
   都市計画の立場から 高見沢邦郎(首都大学東京名誉教授)
   防災計画の立場から 林 静雄(東京工業大学)
   構造計画の立場から 和田 章(東京工業大学)
  討論
  まとめ 河野泰治(福岡大学)

73.農村計画部門研究協議会
 ラーバンデザインが切り拓くもの−混在・混住から共生の環境へ−
 日時:9月9日(土)13:00〜16:30
 司会:神田徳蔵(東京理科大学) 川嶋雅章(明治大学)
 記録:佐久間康富(早稲田大学)
  主旨説明 斎尾直子(筑波大学)
  主題解説
   都市内における農的自然的環境を活用したラーバンデザイン 加藤正之(加藤正之建築 研究所)
   アーバンフリンジの生活環境の可能性 蟹江好弘(足利工業大学)
   小市街地とその周辺部の計画・デザイン 浦山益郎(三重大学)
   ラーバンデザインに関わる法と制度 
  討論
  まとめ 鎌田元弘(千葉工業大学)
●本委員会、懇親会、共催PDなどは下記スケジュールを参照


8.スケジュール  (●農村計画委員会 ○学術推進委員会・建築学会)

 9月 │●9/7 9:15〜12:00 PD:農山漁村集落再建計画
    │●9/7 13:00〜17:00一般講演・オーガナイズドセッション/ポスターセッション
    │●9/7 大会懇親会場にて農村計画懇親会
    │○9/8 9:00〜12:00 PD共催:住宅まちづくり研究の新動向と新たな潮流
    │●9/8 午前:農村計画部門一般講演         
    │●9/8 昼休み 本委員会  
    │●9/8 午後:農村計画部門一般講演
    │○9/9 9:00〜12:00 PD共催:地域資源としての木造廃校舎の可能性
    │●9/9 午前:農村計画部門一般講演
    │●9/9 13:00〜17:00 協議会:ラーバンデザインが切り開くもの
 10月  ○10/17 14:00〜学術推進委員会

以上