企画にあたって

(主旨説明:山崎寿一)



 1999年の大会のメインテーマ「20世紀の記憶と21世紀の予感」を受け、中国・四国地方の農村地域・地方都市で、民家・田園環境・民俗的文化財など集落の伝統的環境資源の再生と活用に取り組む3つの主体の活動を題材に、21世紀の新たな暮しと建築、環境の行方を探りたい。
 20世紀は工業化の時代、都市化の時代で、その発展を担保してきたのが農村の環境と地域社会であった。そして20世紀後半、それまでの「発展」を支えてきた環境や地域社会そのものの存在基盤が危機的な状況に直面 し、環境共生時代の到来が叫ばれている。
 農村計画委員会では、環境共生時代における農村計画の新たな理論大系をこの数年検討してきた。それは都市化時代に対応した問題解決型の農村計画論から脱皮した、新たな計画論構築への模索であった。そして、新たな計画論として、田園環境の魅力を活かしうる計画論、すなわち魅力育成型の農村計画論の必要性を提起した。それは、まさしく「ムラの潜在的資源の発見的創造」を基本的な視座とする、21世紀の計画論への予感を示したものである。
 田園地域には、民家、共同空間、集落や農地・山林・水路等の伝統的な環境資源が存在している。そのなかには文化財や地域資源として顕在的に認知されたものもある。しかし多くの環境資源は、それが日常的な存在であるがゆえに、その価値が気づかれずに埋もれてしまっている。
 近年、伝統的で、日常生活に密着した田園地域の環境資源、農家住宅や伝統的な地域建築などの「生活文化建築」の価値を認識し、さらに現代的に活用していこうという動きが全国的に拡がっている。それは単なる保存ではなく、伝統的な環境ストック自体がもつエコロジカルな価値や生活文化的な価値を発見し、さらに創造的に活用しようという動きへと展開している。このような潮流は、地球環境時代を意識した新たな建築及び生活文化運動でもあり、新たな田園ライフスタイル、町並み整備、さらに地域づくりの方向性を示す糸口でもある。このような問題意識から、今回研究協議会を企画させていただいた。


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