はじめに
一般社団法人日本建築学会は、住まい・まちづくり支援建築会議の活動を通じ、市民の皆様の住まいづくりをサポートしています。その事業の一つとして、「長く使い続けられる住まいのつくりかた、使い方」に関する情報を提供することを目的として、サステナブル住宅分科会を設置し、これまで提供する情報の内容や提供手法について検討を重ねてきました。
なぜ、住まいを使い続けることが必要なのでしょうか?
近年、住宅関連技術が向上し、1世紀以上の耐久性を有する木造住宅も建設されるようになってきました。住宅は、新築するときはもちろん、解体して廃材を処理する際にも多くのエネルギーを用います。せっかく長い耐久性を有する住まいが手に入るのだから、自分の代だけでなく、次の世代にも引き継いでゆきたいものです。そのためには、住まいの建て方だけでなく、大切に使っていくことも重要なのです。実際に、古い建物であっても「丈夫に造られ」、「大事に使われ」、「引き継がれてきた」ことで社会的にも大切な資本となっている住まいが少なくありません。
私たちが心を込めて建てた家、大枚をはたいて買う家ですから、そう簡単に壊れたり潰れたりしてはたまりません。そのような後悔をしないように、また、安心した生活を送れるように、そして子どもたち次世代や、この家に住みたいと思ってくれる人たちに上手に住み継いでいけるように、この場では、私たちの「住生活継続計画(HLCP)」を考えていきたいと思います。
※HLCP: Housing & Living Continuity Plan
私たちの安心・安全な住生活を実現する「我が家」が、良質な住宅として次の世代にも住み継がれ、人やまちにやさしい「循環型社会」を実現していく手順と方法を考えること。
なお、住生活継続計画を考える上で登場する「サステナブル」と言う言葉は、あまり聞き慣れたものではありません。英語の「sustainable(持続可能な)」から作られ、「サステナブル住宅」のように表現された言葉のようですが、狭義では「省エネルギー等環境性能に優れるなど、持続発展可能な社会の構築に資する住宅」というような難しい意味を持っているようです。ここだけに注目してしまうと、単に“モノ”としての住宅の性能のみがポイントのように思われてしまいますが、人が住まない住宅なんてものはいくらたくさんあっても意味がないわけで、あくまでも主役は私たちですから、「安心・安全な住生活」を継続できるかどうかということを併せて俯瞰していきたいと思います。
最後に、もう一つ重要なポイントを示しておきます。
住宅は、新しく建設された直後から「劣化」が始まります。部材によっては、資材搬入段階や建設途中段階から劣化が始まってしまうものもあります。例えば部材が長時間雨に濡れたままだとか、サビが発生しているとか、湿度が高く塗料が乾きにくいなどの苦労もあります。もちろん住宅が完成する前までには適切な処理を施して建て上げますので、よほどの手抜きや欠陥住宅でない限り、ピカピカの状態で施主に引き渡されます。
問題は、引き渡されてから、どのようにその家を可愛がるか、きちんと清掃やメンテナンスするかによって、その家の寿命が決まってしまうということです。私たちの命と同じように、きちんとした家の健康管理を行い、検診(点検・診断)だけでなく、必要に応じて治療や手術(修繕など)を行います。戸建て住宅であれば、所有者とその家族の考えで決められますが、分譲マンションの場合は、みんなで決めなければなりません。適切な維持管理とはなにか、それを私たちがどのように実施していくのかということで、その住宅の命運が決まります。いつまでも住み続けることができるか、いつまでも誇らしい家として引き継がれていくかは、私たちの「心」が答えを出していくことになります。
このサイトでは、「住生活継続計画」をわかりやすく、すごろくのイメージで段階的に説明していきます。
すごろくで言えば、皆さんはコマになりますし、各イベントはマス目になります。皆さんがそれぞれ主人公になり、私たちが安心して住み続けられる、そして大切な住宅を住み継いでいけることをゲーム感覚で学ぶことができれば幸いです。
2017年3月までのすごろくの構成は下の第3ステージまででしたが、今回の改訂「住まいのすごろく-まちづくり追補版」では第3ステージの「住まいを手放す」から「住み替えをする」に変更しました。さらには「まちづくり」のステージを新たに追加しました。
各章とも、住まいや人生に関わる出来事に関連付けたマス目を設け、さらにその中で複数の選択肢について解説されています。ただし、ここで示したマス目や選択肢は一例でしかありません。皆さんは、この世の中では唯一の主人公となり、唯一の道を進むことができる決定権を持っています。ある程度似たような道を進む人がいるかもしれませんが、あくまでその人は他人であり、あなたのコピーではありません。最後にあなたがどのような幸せな住生活を送ることができたかというプライベートストーリーのシナリオを完成させてください。
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