日本建築学会 住まいづくり支援建築会議
住まいづくり市民セミナー
 
住まいづくり市民セミナー@富山「楽しく、やりがいのある住まいづくり」開催報告


日本建築学会大会(北陸)関連行事住まいづくり市民セミナー@富山「楽しく、やりがいのある住まいづくり〜住まい手とつくり手をつなぐ〜」 が開催されました。88名の参加者があり、盛況のうちに終わりました。

■主催 (社)日本建築学会北陸支部、(社)日本建築学会住まいづくり支援建築会議
■共催 とやま住まいとまちづくり推進懇話会、(社)富山県建築士事務所協会
■後援 富山県、富山市
■日時 2010年9月12日(日) 13:30〜16:45
■会場 富山明治安田生命ホール
■内容
 住まいづくり支援建築会議では、日本建築学会が蓄積してきた、総合的な研究成果をもとに優良な住まいが建設されることを支援しております。今回は「楽しく、やりがいのある住まいづくり〜住まい手とつくり手をつなぐ〜」と題し、富山にて講演会およびシンポジウムを開催しました。
 第1部の基調講演では、都市工学の研究者でもある異文化コミュニケーター マリ・クリスティーヌ氏をお迎えし、「心地よいわが家を求めて」と題して、お話いただきました。
 また、第2部のシンポジウムでは実務で活躍されている建築士による実例紹介をもとに、パネリスト4名が「家づくりに必要な知識とは〜プロが教える住まいづくりのツボ〜」について話題提供を行いました。
■第1部 基調講演
 「心地よいわが家を求めて」/マリ・クリスティーヌ(異文化コミュニケータ)
■第2部 シンポジウム
 家づくりに必要な知識とは〜プロが教える住まいづくりのツボ〜として、4名の講師が話題提供を行いました。
 ・荻原幸雄(建築よろず相談主宰者・翔建築設計) ◆講演スライド◆
 ・山本洋史((財)ベターリビング) ◆講演スライド◆
 ・橋本頼幸(建築よろず相談員・こま設計堂) ◆講演スライド◆
 ・近江吉郎(富山県建築士事務所協会会長・おおみ設計) ◆講演スライド◆

住まいづくり市民セミナー@富山 記録

総合司会/小檜山雅之(住まいづくり支援建築会議 情報事業部会長、慶應義塾大学)
記録/吉田伸治(福井大学) ◆記録PDF版◆

■開会挨拶 秦 正徳(日本建築学会北陸支部大会実行委員長・セミナー実行委員長、富山大学)
 富山で開催された今年の日本建築学会大会のテーマは「つなぐ―継承と創生―」。シンポジウムでは住い手と作り手を「つなぐ」ことを期待。自分自身の過去の調査を思い出すと、満足度の高い住まい手はよく勉強していたと感じている。今日のシンポジウムで住まい手がより深い知識を得るのに貢献したい。

挨拶:秦正徳(富山大学)
挨拶:秦 正徳(セミナー実行委員長、富山大学)

■趣旨説明 服部岑生(住まいづくり支援建築会議 運営委員長、千葉大学名誉教授)
 住まいづくり支援建築会議は、7年前の耐震偽装問題を契機に日本建築学会から市民へ情報発信するため設立された。富山では35年前に住宅の調査をしたことがある。当時はとても寒い家に住まわれていた。温熱環境も向上し、住宅を良くする制度もできた。反面、住宅の個性・文化が失われつつある。これからは個性のある住まいをいかに作るかが課題。今回のシンポジウムが従来の住宅の欠陥の問題と将来の住宅の課題の双方を議論する良い機会となると考えている。

趣旨説明:服部岑生(住まいづくり支援建築会議 運営委員長、千葉大学名誉教授)
趣旨説明:服部岑生(住まいづくり支援建築会議 運営委員長、千葉大学名誉教授)

司会:小檜山雅之(住まいづくり支援建築会議 情報事業部会長、慶應義塾大学)
司会:小檜山雅之(住まいづくり支援建築会議 情報事業部会長、慶應義塾大学)

■第1部 基調講演 心地よいわが家を求めて
  異文化コミュニケーター マリ・クリスティーヌ(国連ハビタット親善大使、富山大学客員教授)

 自分自身の体験と理想をお話したい。
 日本で生まれ、祖父の家に住んだり、米軍住宅に暮らした後に、ドイツへ行った。ドイツでは、ベランダに花を植え美しく保つのが半強制的で、大変に感じることもあった。しかし、皆が守っていたから風景は良くなっていた。外からどうみえるのか、社会からどう思われるのかを強く意識する国だった。
 外国に行くときれいな街並みと思うことがあるが、それは皆がそう見えるような家作りをしているからだと思う。
 次に暮らしたアメリカでは、山や川など自然に囲まれた丸太小屋の家だった。日本人の母は小さい空間を上手く使っていたので、お客様は快適と喜んでくれた。DIYショップが多くあり、手作りの生活を楽しんだ。文化として自分のことを自分ですることが根付いていた。
 イランでは、噴水のある大理石の家に住んだ。暑くても大理石から涼をとることができた。噴水から涼しい風がふいていて、大勢が集まれるスペースがあり、人との交流を大切にする空間づくりがなされていた。多く集まれる家が良い家だった。
 タイでは、川沿いの高床の家に引っ越した。現地のチーク材がタイの気候にあっていて、板張りの家は涼しいと感じた。その後日本へ戻った。
 このような各国に移り住んだ経験から、各国の家を比較するようになった。日本家屋は、自然に近く、特に縁側文化が好きである。 日本では古い日本家屋に住んでいた。設備は近代的なものを入れつつ、季節と共に生活ができ、風が吹くと感じることができる家だった。
 日本家屋のすばらしさは、季節とともに生き、家族のつながりをもてるところだと思う。日本家屋のよさを保ちつつ近代的なアメニティを盛り込み、且つ、人とのつながりがもてる家が良いと思う。また、ライフスタイルの変化に合わせて間取りなど変更していくことも重要である。
心地よいわが家を求めて:マリ・クリスティーヌ(異文化コミュニケータ)
心地よいわが家を求めて:異文化コミュニケーター マリ・クリスティーヌ(国連ハビタット親善大使、富山大学客員教授)


■第2部 シンポジウム 家づくりに必要な知識とは〜プロが教える住まいづくりのツボ〜
コーディネータ:住まい作りへの備え:荻原幸雄(建築よろず相談主宰者・翔建築設計)
 家をもつということ、「居を構える(定める)」とは「じっくり構える」ことに他ならない。
 「変化に構える」ことができる家が重要であり、建築主は変化に対応した住まいの整理をし、変化に対応できる良い設計者の選定することにある。

荻原幸雄(建築よろず相談主宰者・翔建築設計)
荻原幸雄(建築よろず相談主宰者・翔建築設計)

パネリスト:住まいの機能について:山本洋史((財)ベターリビング)
 耐震性能の確保では、土地選び、リフォーム時の壁の量・配置、建設年代に注意が必要である。住まいの温熱環境整備は、安全につながる。高齢者は、冬季室内全体を暖かくすることで活動を促し、浴室・脱衣所の温度差が少ないほど事故は少ない。居住者は成長・変動・加齢し、住まいも加齢する。人生の節目ごとに住まいの見直し、リフォームを行うことを想定していただきたい。

山本洋史((財)ベターリビング)
山本洋史((財)ベターリビング)

パネリスト:ライフプランから考える住まい計画:橋本頼幸(建築よろず相談員・こま設計堂)
 なぜ家が欲しいのか? 家の所有を目的にせず、所有の先にあることを考えてほしい。長く大切に使って欲しいし、思い描く家族のあり方を実現して欲しい。住宅ローンを返済し、消耗品とせず、できれば次の世代にまで使ってもらいたい。

橋本頼幸(建築よろず相談員・こま設計堂)
橋本頼幸(建築よろず相談員・こま設計堂)

パネリスト:作り手と作り方を知る:近江吉郎(富山県建築士事務所協会会長・おおみ設計)
 依頼先の大工・工務店・ハウスメーカ・建築設計事務所の特徴を知ること。自分の望む家はどんな家か具体的にしておく。 つくり手の考え方を理解し、信頼できる自分に合ったパートナーを見つけること。家の完成は「おしまい」ではなく「始まり」であり、メンテナンス力のある業者を選ぶことも需要である。

近江吉郎(富山県建築士事務所協会会長・おおみ設計)
近江吉郎(富山県建築士事務所協会会長・おおみ設計)

閉会挨拶:白山 徹(日本建築学会北陸支部富山支所長)
閉会挨拶:白山 徹(日本建築学会北陸支部富山支所長)
白山 徹(日本建築学会北陸支部富山支所長)

会場の様子
会場の様子


住まいづくり市民セミナー@富山
「楽しく、やりがいのある住まいづくり〜住まい手とつくり手をつなぐ〜」


◆セミナーちらし◆

デザイン:原 和平(東京電機大学 未来科学部 建築学科 渡邊朗子研究室)


Web制作:中村友紀子(新潟大学)

日本建築学会住まいづくり支援建築会議 情報事業部会
お問い合わせ:日本建築学会住まいづくり支援建築会議事務局 TEL:03-3456-2053 E-mail:sumai@aij.or.jp
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