No. 10
YKK50ビルBSIオフィス
再生を続けるオフィス
【提案者】 | YKK株式会社+株式会社プランツアソシエイツ | 【提案年月】 | 2005年11月 |
- 【概要】
- YKK50ビルは、1984年に創業50周年を記念して建てられたYKKの本社機能を持つ施設であり、以後20数年に渡って時代の流れと共に発生する組織や用途の変更に対し改装を行ってきた。
2005年から2006年にかけYKKグループ内業務受託企業としてYKK BSI (YKKビジネスサポート社)の設立を機に、設備の老朽化やIT化にともなうワークスタイルの変化にあわせ、次の時代を見据えた建物として再生することを目的とし、全面的な改修を行った。
また、オフィスの更新だけでなくリノベーションという現代に相応しい価値ある手法、並びに新しい提案による再構築を実現することで、この建物を、グローバルな視点を持つ企業の社会に対するメッセージを強く表現する基幹施設に位置づけることも大きな目的であった。
なお、YKKでは本年8月よりスタートした「産業観光」という新たな試みに企業全体として参画することを決定し、製品を実際に生み出す工場ルートはもちろん、リノベーション後のBSIオフィスでの企業活動も含め、この建物を社会に開かれた施設として一般に公開している。
- 【空間(WORKSPACE)】
- オフィス空間のあり方
-
元のオフィスの抱えていた様々な諸問題を個別に解決することだけを目的にするのではなく、このオフィスのもつ2層吹抜けの豊かな空間の質を最大限に生かし、全く新しい空間を創り出すことを目的とした。インフラシャフトを核とした新しい骨組を導入することで、空間に基本的なルールを与え、フレキシブルでありながら、当初の開放的なイメージを保持し続けることができるような在り方を構築した。
- BSIオフィス

- 会議室

- 役員ラウンジ

- 【道具(WORKTOOL)】
- ドキュメントブース

- 将来につながるインフラ整備
-
元のオフィスにおける最大の問題であった情報インフラの不足は、新しく3ヶ所にインフラシャフトを設けて将来への充分な容量を確保した。
- 情報セキュリティへの対応
-
オフィスへの不法侵入・ソーシャルエンジニアリングによる犯罪防止対策として、ICカードを利用した入室管理システムを採用し、そのドアを通る入退室を24時間記録する監視カメラシステムを導入した。また、停電や断線等の障害対応として、ネットワークの2重化、情報機器用電源のUPS化も完備した。
- 【働き方(WORKSTYLE)】
- ユニバーサルなオフィス
-
"Non discrimination"(差別のない)というYKKの企業理念のキーワードをもとに、バリアフリーに対する配慮や、言語を問わないピクトグラム、テーマカラーによるVI計画を導入し、誰もが快適に利用できる施設として再生した。
- 環境への取組を視覚化
-
資源の再利用を目的としたリサイクルステーションの設置や、リサイクル可能な環境素材「再生木材」の積極的な活用など、目に見える形で実現していくことで、社員の意識を高めることを意図した。
- リサイクルステーション

- WC

- コミュニティラウンジ

【受賞暦】- 第19回日経ニューオフィス賞 日経ニューオフィス推進賞
【紹介文献】- 日経アーキテクチュア 2006年6月12日号 「YKK50ビルリノベーション」 発行:日経BP社
- 新建築2006年12月号 「YKK50ビルリノベーション2006」 発行:新建築社
- e床専科 ゆかmonthly 2006年11月号 「これからのオフィス」 発行:インテリアタイムス社
【その他】
- 立案から完成に至るまで協働した設計者と、「リノベーションに対する考え方」や「企業理念の理解」といった基軸の共通認識を創る事から始まり、それを具現化する作業を積み重ね実現することが出来た。設計者とは、今後も同じ視線で改善に取り組むパートナーとしての関係を築いている。
-
オフィスの運用ルール等を検討する「ファシリティ委員会」を設立。この委員会は月1回開催され、オフィスの使用状況や不具合等の意見を蓄積し、問題解決とルールの遵守状況を確認検討している。
- 総務、経理、人事というデスクワーク中心の業務にもかかわらず相互コミュニケーションが円滑になり、世代を問わず社員のモチベーションが高まり、自信を持って業務を行うようになった。
- オフィス使用開始から4ヶ月足らずに組織変更があり、約30人を増員した。ワークユニットとサービスユニットを追加し、ファイリングを含めて充分に対応出来た。今後も増えるだろう人員を迎えるだけの余力は、このオフィスレイアウトに備えられていると確信した。
[目次に戻る]