RILEMニュース RILEM TC-NCMの概要 材料施工委員会RILEM小委員会 RILEM TC-NCM(建設材料におけるナノテクノロジー)の概要は以下のとおりである。 TC設置の背景と目標 TC-NCMは2002年5月に設置が承認され、Prof. Peter J. M. Bartos をチェアマンとするTCである。本TCの主題は、建設材料におけるナノテクノロジー(Nanotechnology in construction materials)であり、同年9月に行われた、第56回RILEM週間(マドリッド)で第1回会合が開かれた。  ナノテクノロジーは、部門によって対象とする物質の大きさが、100nmから0.1nmと広く、また、その技術アプローチも、微細加工技術を利用したナノスケール構造の解析(トップダウン型)や具体の分子・原子構造の応用技術(ボトムアップ型)と、さまざまな領域を含んでいる。本TCは、ボトムアップ型のアプローチによって作られた、分子・原子構造を応用した「理想的」な建設材料が将来的に生産されるための準備として、複合材料の原子・分子的な振る舞いについてトップダウン的アプローチによって理解を含めることを目的としている。  本TCの目標は、ナノテクノロジーの中で最先端の技術を調査し、建設材料の分野で、それら技術がどの部分で活用されているか、あるいは、活用の可能性があるかについて提示することである。例えば、建設材料の微細成分や、微破壊機構の理解をナノテクノロジーに基づく試験法によって再評価することも含まれている。このような研究の方向性を開拓するために、単に、建設部門の基礎・応用分野に限らず、非建設部門のエキスパートの支援を求めることも必要であることから、幅広い技術分野を開拓するものと考えられている。 TCの活動計画  本TCの活動期間は、ナノテクノロジーの技術展開が早い分野であることを考慮して、活動期間を3年間とし、2005年には成果を取りまとめる計画である。  2002年   TC設置・第1回会合  2003年6月 第1回建設分野におけるナノテクノロジーに関する国際シンポジウム開催 2004年 春 State-of-the-artレポートの出版 2005年 夏 建設分野に適したナノテクノロジーの適用に関する専門家ワークショップ 2005年 夏または秋 Recommendations for the applications and use of the most relevant nanotechnology-based approachesの公表 関連するTC等  下記に示す部門の新旧のTCと結びつきがあると考えられる。 (1)材料の微構造や特性に関して(167-COM、170-CSH、180-QIC) (2)物性評価および過程 (NEC、ATC) (3)設計および耐用年数(178-TMC、179-CSD、SOC、HFC) (4)性能および劣化(176-IDC、181-EAS、183-MIB、FHP、URM) また、国際的な建設・基準関連機関や一般的なナノテクノロジー研究機関との連絡や共同作業を推進する予定であり、欧州他の国際的なナノテクノロジー、建設部門の研究プロジェクトとの連携を維持することも予定している。 委員構成 BARTOS Peter J. M.(UNITED KINGDOM)、BENTUR Arnon(ISRAEL)、BRAMESHUBER Wolfgang(GERMANY)、CASANOVA Ignasi(SPAIN)、DI PRISCO Marco(ITALY)、FIDJESTOL Per(NORWAY)、GLAVIND Mette(DENMARK)、HO David W. S.(AUSTRALIA)、KASPERKIEWICZ Janusz(POLAND)、MODRY Sylva (CZECH REPUBLIC)、MULLER Urs(GERMANY)、PLACIDO Frank(UNITED KINGDOM)、PORRO Antonio(SPAIN)RAKI Laila(CANADA)、SCRIVENER Karen (SWITZERLAND)、SHAH Surendra P.(USA)、SKARENDAHL Ake(SWEDEN)、STANG Henrik(DENMARK)、TRTIK Pavel(SWITZERLAND)、van MIER Jan G. M. (SWITZERLAND)、VYNCKE Johan(BELGIUM)、ZHU Wenzhong(UNITED KINGDOM) 武藤正樹/国土交通省 RILEMニュース RILEM TC167-COMの概要 材料施工委員会RILEM小委員会 RILEM TC167-COM(修繕を考慮した古いモルタルの特性)の概要は以下のとおりである。 TC設置の背景と目標  TC167-COMは、修繕を考慮した古いモルタルの特性(Characterization of old mortars with respect to their repair)に関するTCで、Dr. Caspar J. W. P. Grootをチェアマンとして1995年に設置されたTCで、すでに活動を終結している。  本TCは、既存組石造の復元や修繕に用いるモルタルに準拠する、一般的な性能基準および推奨仕様の策定を目標とし、復元や修繕に用いるモルタルを古いモルタル同様に再生するために必要な特性の表示法、復元や修繕に用いるモルタルの基本パラメータの確認と試験方法の試験方法の標準化等について下記の視点で検討を行った。 ・モルタルの一般的な定義および分類 ・古いモルタルの化学的、物理的な特性表示 ・薬品による若齢化、硬化手法および硬化後の復元・修繕モルタルの化学的特性表示 ・モルタルの特性表示の標準的手法、特に、現場試験による性能評価 ・モルタルの品質管理手順と許容限界 本TCは、RILEMに設置された、TC 13-MR、TC 20-TBS、TC 59-TPM、TC 23-GP、TC 52-RAC、TC 128-MRCの知見を活用し、また、EUROKA/EUROCAREプロジェクト(保存と復元に関するヨーロッパプロジェクト)とも連携をして検討された。 TCの成果  TC167-COMに関連の成果は、以下のタイトルでRPSarlから出版されている。 ・PRO 12: Historic Mortars: Characteristics and Tests (ISBN 2-912143-15-2) ・Recommendations of RILEM TC 167-COM: Characterization of old mortars Quantitative analysis of historical mortars using optical microscopy, Materials and Structures / Materiaux et Constructions - December 2000, VOL. 33 - N° 234 (出版物の情報は、http://www.rilem.net/で確認できる) 武藤正樹/国土交通省