建築社会システム分野の概要建築社会システム分野は、建築の社会的、経済的システムの2つの側面の諸問題にかかわる研究を行う領域であり、学際性・業際性に富む多様な内容を包含している。
このうち、後者の経済的側面では、建設活動の合理的推進や建築の合理的運用・管理・政策に関する研究領域、つまり建築活動、建築管理、建築生産、建築コスト、建築の経済的効果、家計、財政などに関する諸課題を扱う。経済的要素は建築のあらゆる分野に発生し、建築の諸局面で大きな役割をもっている。建築活動・建築管理を合理的に行うためには建設生産や建築要素の性質を解明し、合理的に構成することが求められる。建築経済の大きな領域の一つは、生産技術や建設活動、管理運営などの分野で、経済的視点から理論的、実証的な研究を行う分野である。
前者の社会的側面としては、生活者の諸条件・生活要求の需要把握から建築・住宅の企画・供給・管理に至るプロセスのシステマティックなアプローチ、それらの政策形成と効果測定・評価、建築産業・労働力構造、技術者教育、資源とその循環などを扱っている。これは、いわば経済社会のなかでの建築の位置づけに関する領域と言うこともできる。この点から、建築経済は、建築を取り巻く社会・経済環境と建築との重要な接点と位置づけられる研究分野でもある。その一つは広範な経済活動との関係として、建築に対しては労働力や多様な資源の大規模な投入が行われるが、その仕組みを解明し計画化することが課題となる。あるいは建築による経済的・社会的効果の問題もある。建築の利用者は建築の存在によって社会的・経済的利益を含めさまざまの効用を得る。その効果・価値を明らかにするとともに、建築を利用する立場の要求や意欲をも踏まえて計画化する研究領域である。その一つとして、住宅・地域施設のように、個人・家計、あるいは地域社会にとっての価値や問題を明らかにすることもある。
建築社会システム委員会の概要 建築社会システム委員会は、建築経済・住宅問題分野に関する常置調査研究委員会として、この分野における学会の諸活動が効率的に実施されるととともに、その成果が会員および社会に有効に還元されるよう努めている。そのため、傘下の小委員会等の運営に対して責任を負い、その活動内容の承認・調整を行うとともに、これら小委員会等と協力して、大会におけるこの分野の学術講演会のプログラムの編成や研究協議会・パネルディスカッション等の行事企画、学会の各種委員会への委員推薦、各種公開行事や、社会への提言などを実施している。
建築社会システム委員会の下には、特定分野を対象とした小委員会や研究会が設置されており、さらに、小委員会および本委員会の下には必要に応じてワーキンググループ(WG)が組織されている。こうした小委員会等は、調査研究活動の基礎単位として範囲と目的を明確にして調査研究活動を実施するとともに、活動成果に基づいて各種公開行事や成果資料の発刊などの情報発信を行っている。小委員会等の構成は、新しい課題や状況に応じて改組が行われてきているが、現在、12小委員会・1ワーキンググループが設置されており、これらは、ハウジング分野、建築生産・建築企画・経営分野に分類することができる。
建築社会システム委員会の委員は、小委員会の主査および、地域性や専門性を代表する委員等から構成されているが、建築の社会的・経済的システムの多様性を反映して、学際性・業際性に富み、幅広い年齢層による構成となっている。