■2025年度

AIJ日本建築学会農村計画委員会公開委員会・ARP農村計画学会農村計画セミナー(共催)
「集落復興の現場からみたリアル―能登半島地震・農山漁村地域における復興ステージの展望(3)―」

 

1 公開委員会の概要

  2025(R7)年12月7日(日)AM9-12時にオンライン上で開催された日本建築学会農村計画委員会公開委員会は、農村計画学会農村計画セミナーとの共催で行った。参加者は約30名であった。記録を磯村和樹(秋田工業高等専門学校)が行った。
 本公開委員会では、能登半島地震の復興まちづくりに多くの課題が生じる中で、まず現在優先して進められている被災者の生活再建の現場の声を聞くべきではないかといった問題意識から開催された。
 プログラムは以下の通りである。司会を柴田祐(熊本県立大学)、林和典(近畿大学)が務めた。

●主旨説明:齋藤雪彦(千葉大学/日本建築学会農村計画委員長)

●報告
(1)行政からみた生活再建の現場:三上豊子(珠洲市)※公務のため動画による報告
(2)珠洲市における住まいを中心とした生活再建支援の現在地:江崎太郎(特定非営利活動法人YNF)
(3)輪島市南志見地区における生活再建のリアル:白尾友一・白尾真紀子(南志見地区白米集落住民)、広田純一(岩手大学名誉教授)

●総合討論
 モデレーター:鈴木孝男(新潟食料農業大学)、林和典(前掲)
 コメンテーター:岡田知子(西日本工業大学名誉教授)、山下良平(石川県立大学)

●まとめ:斎尾直子(東京科学大学/農村計画学会長)

 

2 報告・総合討論の概要

 三上氏より、石川県珠洲市での生活再建支援について下記の報告がなされた。
「珠洲市では災害で、多くの人や建物、各種インフラ等が被災し、その影響で生活面に多様な問題が生じた。
 市は地震直後の2024年1月に被災者支援本部を立上げ、支援に向けた全戸訪問を開始した。市内複数地区での意見交換会や、住まいの意向調査も継続的に実施した。
 その支援では多様な連携が進んでいる。珠洲市ささえ愛センター(市社会福祉協議会内)や後述するYNF等の被災者支援NPO、弁護士・建築士の団体など、幅広い団体が行政と連携した支援が行われている。」
 次に江崎氏より、同じく珠洲市で生活再建支援を担うYNFの取組等について下記の説明がなされた。
「YNFは多くの被災地で活動する被災者支援の専門団体であり、主に住まいの再建に関する個別訪問を行っている。訪問で被災者の声を聞き、それを踏まえた提案やサポートを行っている。
 能登では珠洲市と能登町の支援をしている。災害関連死の発生しやすい在宅被災者を訪問し、ケアが必要な被災者は市の福祉課に繋ぐといった支援をしている。今後も幅広い支援を継続予定である。県等の補助事業を活用し活動している。現地スタッフは地元在住者が中心で、地元中心の事業展開をしている。」
 次に白尾両氏、広田氏より、石川県輪島市南志見地区やその一部である白米集落の生活再建等について下記の報告がなされた。
「南志見地区は日本海に面する集落である。震災前は約300世帯であった。地震や豪雨で家屋や道路、農地等に大きな被害が出た。人口が減り地区内の集落での無住化や疎住化が進んでいる。集落に戻るための道路に不通となったままのものがあるなど、多様な生活再建課題がある。
 遠方に移った元住民と地区を繋ぐための新聞として「なじみつうしん」を発行し、地区の復興状況などを伝えている。
 白米集落にあり国の名勝等である白米千枚田も被災しておりその復興が望まれる。」
 
 総合討論では、能登の生活再建に関するコメントや質問が登壇者へなされた。
 登壇者からは、@生活再建に関する様々な分断の発生(主に仮設⇔在宅、現地⇔遠方[金沢等])、Aその対処としての被災者支援の継続や祭り等の絆づくりの必要性、B農業・農地など能登の地域環境の重要性と、そのための通い・二地域居住支援や災害公営住宅付近での農の場づくり等の可能性などが指摘された。
 最後に、斎尾氏によるまとめがなされた。自然と共に暮らす農山漁村地域の当たり前を考慮した復興計画の重要性や、建築・農林漁業・環境等の総合的な専門性の必要性等が指摘された。

作成者:農村計画委員会/磯村 和樹(秋田高専)


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