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Vol.56 - 2016/10/07
《from 福井支所》 特集:2016年度 日本建築学会北陸支部総会・大会 
学生による語り合いのシンポジオン2016:学内外における学生主体の建築活動(教育・研究・実践) 

野田真士(シンポジオン世話人会代表)



1.概要
 シンポジオンでは、学生諸君の精力的な活動について話題提供の場を設け、語り合いと自由討議により参加者全員で交流することを目的としている。今回のシンポジオンは2部構成とし、前半は話題提供として5チーム(4大学1高専)の学生たちによる活動プレゼンテーション、後半は会場全体での自由な語り合いと交流がなされた。
■日時:2016年7月24日(日)13:00〜15:30
■場所:福井大学文京キャンパス111M 講義室
■参加者:30名(学生22名、教員・一般8名)
■タイムテーブル
 13:00-13:15 趣旨説明
 13:15-14:15 活動プレゼンテーション
 14:15-14:30 休憩
 14:30-15:15 語り合い、自由討議
 15:15-15:30 まとめ

2.活動プレゼンテーション
 各チームからは非常に工夫を凝らしたプレゼンがなされ、動画紹介、パネル展示、模型説明など、バラエティ溢れる話題提供となった。以下に報告する。

2.1 細呂木プロジェクト 
   発表者:下中雄一、宮崎隼也(福井工業大学、下川勇研究室)
 細呂木はかつては人口5,000人ほどの村で、合併して金津町となり、現在はあわら市の北東部に位置づけされる。今回まちづくりの一環で「細呂木プロジェクト」と題して地区の活性化を考えた、とのことであり、体験スポット、コンセプトギャラリー、簡易スーパー、宿泊室を設けた複合的な機能地区を提案されていた。また歴史上の人物として、親鸞、蓮如に加えて地元の名士である多賀谷氏にもスポットを当て、施設外観も含めてプレゼンされていた。






2.2 ヴィジュアルプログラミングを活用したあかりオブジェの造形デザインと制作
   発表者:廣瀬寛騎(金沢工業大学、下川雄一研究室)
 金沢工大では、金沢市片町を中心会場にして月見光路プロジェクトを実施している。このうち、輪島においてもあかりプロジェクトがあり、これに照明器具のデザインで参加されたとのことである。氏はもともとBIM関連の研究をされており、動的に3次元の空間造形をしたり構造的・環境的な視点で造形デザインの検討を進める手法である「コンピュテーショナルデザイン」を用いてあかりの容器をデザインしたとのことである。具体的には、低コストなデザインとして、一枚の材をおりたたんで形を作る手法をあみだし、シンポジオン当日は実際に制作された照明器具をスライドで紹介されていた。






2.3 Compact Village in くりから ―中山間地域における新しい住まい方の提案―
   発表者:池尻謙太(石川工業高等専門学校、熊澤研究室)
 当該地域は木曽義仲の源平合戦の遺跡をはじめ多くの文化資産が残る地域であるが、少子高齢化、若者離れにより、集落の維持が難しくなってきている。氏は、こうした問題を中山間地域の問題としてとらえ、集落再建の1つの解決案として、「コンパクトビレッジ」構想を提案されていた。すなわち、集落消滅を待つのではなく持続可能性をどう確保するかということで、居住の仕方を中心に教育や生活などの提案について、畳一枚ほどの大きな模型を持ち込んで熱弁を振るわれていた。






2.4 子どもの遊び場と地域の関わり 
   発表者:玉村知哉、田伏正弥(Fukui Play-Studio遊房)
 「遊房」とは、子どもたちの遊び空間を提供することで生きる力を育む手助けをしている、福井大学学生による学生団体である。主な活動として、以下の3つを発表されていた。
 (1)福井大学横の雑木林にて、プレイパークを2週間に1回実施している。
 (2)汚れ遊びの良さを知ることを目的に、泥んこ祭りを年1回実施している。
 (3)トレインアドベンチャーを通して、地域の大切さを子どもに伝えている。
 また、この種の活動では、子どもにかまい過ぎが多々目立つものであるが、彼らは、以下の遊房六ヶ条を制定し、自らを律して子どもに対処している、とのことである。
@子どもも大人も素に戻る。A五感をフルに使い思いのままに動く。B「危ない」「汚い」「うるさい」でよい。C普段できないことにも挑戦する。D身の回りについても考える。E何事にも「愛」を持つ。 最後に、遊房は遊びを目的に活動しており、地域のコミュニティづくりは地域の子どもを活発化させるはず、と締めくくられていた。






2.5 知的障害者施設「ハスの実の家」での暮らしと実践
   発表者:野田真士(福井大学)、仲村春乃(福井県立大学)
 「何においても、自分らしく暮らすことが大事です。」とまず前置きされて、知的障害者施設「ハスの実の家」での活動を報告された。「自分らしい暮らし」の実現のために、自由な選択性のある暮らし方が必要であり、さらには日常的に人や地域社会とつながることが大事であることを主張されていた。また、自身が携わってきた障害福祉分野での経験をもとに、これから建築分野の技術者として巣立つ会場の学生に対して、すべての使い手、住まい手の姿をきちんと意識してほしいと訴えていた。現在の活動として、民間空き家をグループホームとして活用して利用者が地域(まちなか)のなかで居住している現場において、利用者自身の自立に向けての支援や、地域や社会とつながるための支援に取り組む様子を写真で紹介されていた。






3.語り合い、自由討議
 各話題提供者がブースを構え、参加者が各ブースに自由に出向いて語り合うシステムとした。全体で45分間の討議時間を設けていたが、15分間をワンクォーターとし、司会者が15分おきに参加者にたいしてブース移動を呼びかけ、会場全体で積極的な語り合いが進行するように働きかけた。当日の討議風景を写真で紹介する。














4.参加者の感想
●自分は環境系ですが、今回のシンポジオンを通して計画系のことも分かり、よかった。(廣瀬寛騎/金沢工業大学)
●自分の提案に対して厳しい意見も聞けてよかった。ぜひ他のグループの話も聞きに行きたかった。(池尻謙太/石川工業高等専門学校)
●いろんな問題がつながっていて、多くの方々の思いを知ることができてよかった。(田伏正弥/福井大学)
●私は社会福祉学科の学生ですが、他の分野のことも知ることができてよかった。自分と共通することが多々あることが分かった。(仲村春乃/福井県立大学)
●小学生、障害者のまちづくりの概要が知ることができてよかった。(中島大河/福井工業大学) 

5.まとめ
 最後に、石川工業高等専門学校の熊澤先生からご挨拶いただいた。「若いときこそ、チャレンジできる。大人になるとチャレンジの機会が少ない。ぜひ、経験を重ねていってください。」と参加した学生諸君を激励された。



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