第2回 男女共同参画に関する懇談会
日時:2009年7月27日(月)15:30〜17:00 会場:日本建築学会会議室
話題提供:古賀靖子(九州大学,本会男女共同参画推進委員会委員)
司 会:相良和伸(大阪大学), 記 録:安武敦子(駒沢女子大学)
出席者:定行まり子,中島明子,穐本敬子,江川紀美子,小伊藤亜希子,榊原潤,
柴田いづみ,中村晃子,西出和彦,松川淳子,八藤後猛
第2回男女共同参画に関する懇談会では,男女共同参画推進委員会 古賀委員(九州大学)による九州大学における男女共同参画の取り組みの現状報告と,意見交換を行いました。
●講演概要●
九州大学には、現在、男女共同参画推進に関して2つの組織がある。1つは男女共同参画推進室で、男女を問わず教職員・学生全員を対象としている。もう1つは高等研究機構女性研究者支援室 (SOFRe)で、女性教員・ポスドク・博士人材を主な対象としている。
九州大学における男女共同参画推進の基本方針は、男女共同参画の意識の醸成、修学および就業環境の整備、教員の男女比率の改善である。教員の男女比率について、平成18年7月の女性教員数は約200名で約9%であり、平成22年3月までに1.5倍の13%とすることを目指している。なぜ女性研究者だけに支援するかというと、ロールモデルの不足、採用の機会の不均等、評価の不公平があげられ、男女比率の圧倒的格差が生じている現状改善の経過措置として、当面の間、女性に特化した支援を実施するというスタンスである。
九州大学の女性研究者が利用できる支援制度には、@「Hand in Hand」による研究補助者の派遣(女性研究者支援室SOFRe)、A女性研究者支援プログラムによる出産・育児期研究助成制度(男女共同参画推進室)がある。そのほか、B女性医療人きらめきプロジェクト(平成19年度文部科学省大学改革推進事業)による休職後の復帰支援・働きやすい職場環境作り、CP&P(九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト)における女性研究者枠の設置などを行っている。
女性研究者支援室は、平成19年度文部科学省科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」事業により設置されたもので、九州大学では『世界へ羽ばたけ!女性研究者プログラム』(平成19年度〜21年度)を実施している。ここで「女性研究者支援モデル育成」事業とは、女性研究者が研究と出産・育児などを両立し、研究活動を継続するための支援を行う仕組みづくりの模範となる優れた取り組みを支援するものである。この事業は平成18年度に開始され、以降、毎年約10件ずつ採択されている。九州大学では平成19年度に採択された。
この事業とは別に、九州大学では平成18年度〜20年度に総長裁量経費による女性研究リーダー養成支援を行った。人文科学・人間環境学・歯学の研究院と応用力学研究所の各1名に対して、特任助教や非常勤講師の雇用費が支給された。
平成21年度には、文部科学省科学技術振興調整費に女性研究者支援システム改革プログラムが組まれ、「女性研究者支援モデル育成」に加えて「女性研究者養成システム改革加速」が予算付けされた。平成21年度女性研究者養成システム改革加速には5大学が採択され、九州大学も含まれている。そのほか、京都大学、東京農工大学、東北大学、北海道大学が採択されている。女性研究者養成システム改革加速の目的は、女性研究者の採用割合等が低い分野(理・工・農学系)の研究を行う優れた女性研究者の養成を加速することである。採択されると、3年目の中間評価時や5年目の課題終了時に、提案時の人数が計画通り採用・養成されていることや女性研究者比率が目標値を下回っていないことが求められる。
多様性(diversity)の時代と言われ、格差是正目的ではなく、企業の競争力強化目的に女性や有色人種などを登用する動きがある。海外では、多様な人材の登用に積極的な企業は、大胆な発想が多く、好業績につながると考えられ始めている。管理職に占める女性の割合は、欧米の30〜40%に対して、日本は9%で低いと言わざるを得ない。組織の多様性を4段階に分類したとき、最上位グループに入るのはディズニーやゼロックスなどで、最下位グループに入るのが経営再建中のゼネラル・モーターズであることも多様性の重要性を感じさせる。
○参考資料
九州大学 男女共同参画 URL http://www.kyushu-u.ac.jp/university/office/danjyo/
「裏読み世界地図」(日経ビジネス人文庫,日本経済新聞社編,2009年8月発行)