更新日: 27-Jul-2012

(社)日本建築学会 環境工学分野における震災対応の提言
 環境工学分野では、地震による直接的被害(振動問題やライフラインの復旧など)だけではなく、被災地の復興に向けた中長期的対策を考えると共に、電力供給不足による間接的被害を受けている現状を鑑みて、ライフスタイルそのものの見直しも含め、今後の居住環境のあり方について広く提言していく。
環境振動運営委員会:既存建築

地震時の高層建物における長周期の揺れに対する評価指針の検討

 近年、長周期地震動による建物の揺れが問題となっている。今回の東北地方太平洋沖地震においても、高層建物における長周期の揺れが長時間にわたり観測されている。高層建物における長周期の揺れに関しては、構造安全の面からの検討が主に行われているが、危険回避,苦痛および恐怖感・不安感解消,避難行動等において、環境振動の観点からの研究活動が今後重要である。また、地震酔い(地震でもないのに揺れている感じがする,目まいがする,吐き気がするといった症状)への建築的事前対応も検討すべき課題である。すなわち、
・危険回避,苦痛および恐怖感・不安感解消,避難行動という面から評価基準を検討し、長周期地震動に対する設計の見直しに資する資料を作成する
・地震酔いを発症させないため、感覚評価の観点から長周期地震動に対する設計の見直しに資する資料を作成する
といった活動が重要となる。
また、近年では、免震,制震システムを導入している高層建物も多く見られるが、長周期の揺れに対する振動感覚に着目した制御については十分な検討が行われていない。いままでに記録されている応答波形を分析し、免震,制震システムによる高層建物の揺れの特性を検討し、振動制御に対する振動感覚に着目した知見を提示することも必要と考える。

 幸い、当運営委員会では、これまで、環境振動に関する居住性能評価指針を作成してきた。この指針における評価基準には、風による水平振動の性能評価曲線も示されている。その周期帯は0.2秒〜10秒であり、いま問題となっている長周期地震動による高層建物の揺れの周期帯と重複する。また、揺れが比較的長時間続く点も、共通している。よって、これらの成果をもとに、長周期の揺れの評価に関して、検討をしてゆくことも可能である。

【トピックス】
 ・高層建築物の揺れ居住性(動揺居住空間内での諸現象変化)pdfファイル

関連情報  
  2012.3.1,2 日本建築学会:シンポジウム「東日本大震災からの教訓、これからの新しい国づくり」
【A6】耐震改修・今後の構造設計
 人の心理・感覚を考慮した耐震性能評価法の提案
 濱口弘樹、竹中工務店技術研究所
  2012.3.16

日本建築学会、構造委員会、長周期建物地震対応WG
長周期地震動対策に関する公開研究集会
 家具類の被害と揺れに対する生理的・心理的影響
 金子美香、大崎総合研究所

  2008.3.7 日本建築学会、構造委員会、高機能社会耐震工学WG
長周期地震動対策に関する公開研究集会
     
    気象庁:長周期地震動に関する情報のあり方検討会
第1回2011.11.14,第2回2011.12.21,第3回2012.2.14
     
    文科省:地震調査研究推進本部
 ・南海地震(昭和型)の長周期地震動予測について(2012年試作版)
 ・想定東海地震、東南海地震、宮城県沖地震の長周期地震動予測について 
  (2009年試作版)
     
    建築研究所:建築研究資料 No.127号(2010.12)
 長周期地震動に対する超高層建築物等の安全対策に関する検討
建築研究所:H18講演会テキスト
 長周期地震動による超高層建物の室内安全性
     

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