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都市防災研究会 議事録

第6回 都市防災研究会 議事録

日時:2003年3月27日(木) 18:00〜20:30
場所:大阪市消防局鶴見消防署

記録 吉田(市大)
参加者:田中、宮野、北後、草部、森田、坂田、進士、薗頭、崔、中尾、樋本、生田、吉田
資料:6−1 地震における人体被災計測ダミー開発のための一連の研究に関する報告
  :6−2 第5回議事録

■「地震における人体被災計測ダミー開発のための一連の研究に関する報告」
  <報告:大阪市大院生生田さん>
1)地震時における倒壊家屋等による人的被害の軽減戦略として人的被害の発生メカニズムを、人体被災計測ダミーの開発及び大規模構造物破壊実験において解明する事を目的とする。
2)研究方法として、(a)阪神・淡路大震災における建物被害、人的被害データの統合と分析 (b)重傷者発生世帯に対する聞き取り調査 (c)有限要素法を用いた人体被災シミュレーション を行う。
3)3種類のデータベース(建研・検察庁データ、監察医データ、阪大医学部データ)の統合・分析により、(a)死者の大部分は家屋による胸部圧迫  (b)重傷者の半数は家具による腹腰部・下肢骨折が原因である事が判明した。堅牢建物においては、建物被害が比較的軽度でも家具による重傷がみられる。
4)データベースでは分からない詳細の調査を目的とした、重傷者およびその同居者を対象とした聞き取り調査により、(a) 2階に比べ1階は3〜4倍、死傷危険度が高い (b)部屋の面積が大きくなるほど危険度が高い(c)負傷原因家具の寸法は奥行き50cm、高さ180cm付近に集中している事が分かった。
5)有限要素法を用いて人体被災シミュレーションを行っている。現在までに大腿部の骨折シミュレーションと胸郭の圧迫シミュレーションを行った。
<議論>
1)転倒家具の質量は聞き取り調査では分からなかったのか?→記憶が不明瞭なので家具の種類・寸法から推測するしかない。
2)この研究ではダミーのコストが高くなってしまうので、もっと簡易なものにしてはどうか?→自動車用ダミーの改造も視野(下肢のせん断方向に対するセンサー等の改良)
3)開発されたダミーは、圧死を主とする様々な事故に応用が利く。(明石の歩道橋事故等)
4)どのようなセンサーを何処にどのように付けるのか?→データベース統合・分析により、胸部に圧迫センサー、下肢に加速度センサーを付ける事が合理的である事が分かった。
5)ダミー作成の意義は?→被災時の姿勢が及ぼす影響、建物の破壊のされ方が及ぼす影響を明らかにする。
6)繰り返し破壊実験を行うとコストが高くなるのでそれを最終目標とせず、シミュレーションを最終目標とすればどうか?→シミュレーションと破壊実験は、相互に補完する関係となる。シミュレーション:様々な条件に対応させる事ができる。破壊実験:詳細が分かる。
7)人体(筋肉・骨等)の物理的なデータの入手、死亡に至る外力の程度の検討が今後の課題。


■次回は2003年5月1日(木)18:00から鶴見消防署4階市民相談室で開催する。内容は施設見学と韓国の地下鉄火災事故(崔さん)。

第5回 都市防災研究会 2003年2月24日(月)18:00〜20:30(大阪市消防局会議室)

記録 福本
参加者:田中、宮野、草部、大西、北後、小泉、板田、生田、吉田、中尾、樋本、福本
資料:5−1 都市火災避難時における危険度の推定手法に関する研究
     5−2 函館大火における火災気流による危険度を考慮した住民避難性状に関する研究
    5−3 善光寺地震における稲荷山宿火災
    5−4 International System on Protection of Cultural Heritage Buildings from Fire
       (文化遺産建築物の火災からの保護に関する国際シンポジウム)
    5−5 第4回議事録

■ 「都市火災避難時における危険度の推定手法に関する研究」について
<報告:京大院生中尾さん>
1) 都市避難を考える上で、市街地を覆う火災気流の問題が重要であり、過去の大火について火災気流の影響による危険範囲を推定する方法論を確立することが目標。
2) 延焼動態線図に示された時々刻々の延焼範囲に基づき、その火災が生ずる火災気流による風下側地域の温度上昇の推定を行う。
3) 都市火災の燃焼範囲推定法として、(a)延焼範囲の先端座標の計算、(b)市街地のメッシュ情報、(c)延焼先端の範囲内か範囲外かの判別、(d)延焼状態区分の計算、の手順によることが紹介された。
4) 火災気流による温度上昇の推定法として、(a)発熱速度、(b)無風時の熱源上の気流軸上温度、(c)火災気流軸の方向ベクトル、(d)単数の熱気流による上昇温度、(e)複数の熱気流による上昇温度の手順によることが紹介された。
5) 酒田市大火の事例が報告され、上記の手法によりコンピュータによる計算・解析結果が示された。
6) 今後の課題として次の点について言及された:(a)市街地構造の影響を考慮、(b)火源を面熱源とした気流軸を考慮、(c)温度上昇の時間的有効性、(d)燃え尽きた状態のその後、(e)飛び火や複数出火の疑い。
 <議論>
1) 気流軸の角度は、風速に相当きいてくる。
2) メッシュの大きさの決定方法(どのくらいが適当か?誤差が最小になるか?)について、今回は、PCの計算時間等で決定したが、学術的根拠が確立できればなおよいが、それはなかなか難しい。
3) 耐火造家屋の情報をどのように発熱速度に反映するか?今回、市街地に均一に木造家屋が存在するとしたが、実際は道路など均一ではないので、そういった市街地情報を組み込むことが必要である。

■ 「函館大火における火災気流による危険度を考慮した住民避難性状に関する研究」
<報告:京大院生 中尾さん>
1)函館大火の特徴が紹介された。平均20m/sの強風で避難者は海岸線に避難したが風向が急変したため海岸線に追い込まれ多数の方がなくなったとの事。
2)広域避難モデルの理論として(a)避難空間モデル、(b)危険度ポテンシャル、(c)避難行動モデル、が紹介された。
3)上記の理論に従い函館大火のシミュレーションが示された。(上述の酒田市大火の結果より、火災危険度=温度上昇=20の時に避難開始するとしている)
4)今後の課題として次の点について言及された:(a)火災危険度はその温度をどれだけの時間感じるかによって危険度を決定する必要がある、(b)実際の都市火災では火災気流以外にも人間に危険を与える要素があるのでそれらも考慮に入れる
<議論>
1)上昇温度≧50℃の時に危険度=100とするのは問題があるのではないか。
 2)犠牲者が多くでた事に関して風向が大きく関係しているが、輻射も考える必要もあるのではないか。
3)火災危険度について、上昇温度=危険度としてもいいのか。例えば、冬と夏の外気温の違いが影響するはずである。
4)3)に関して、酒田よりも気温の低かった函館の方が同じ温度上昇でも早く避難した可能性があるのではないだろうか。
5)火災性状+都市構造の避難経路計画において、安全側に延焼速度等をとる事により、この手法(理論)はリアリティがあるのではないか。
6)風速に応じてどの程度火災気流による危険が反映されるのか、また、輻射と比べた場合、どの程度の比率でどちらによる危険が反映されるのかを検討することが、避難命令を出す際に有用になるのではないか。

■ 善光寺地震における稲荷山宿火災
1)善光寺地震の紹介と善光寺地震により起こった稲荷山宿火災の紹介がされた。
2)3Dシュミレーションによる善光寺地震当時の稲荷山宿の様子と稲荷山宿における火災延焼状況の再現が示された。

■ 案内
1)遺産建築物の火災からの保護に関する国際シンポジウムの案内
 日程:4月6日 (7日は、京都ツアー)
 場所:京都市国際交流会館
 参加無料
2)都市防災公開研究会「京阪神の地域防災の地域性」
 日程:3月3日 13:30〜16:30
 場所:大阪市大文化研究センター(大阪駅前第2ビル)

■ 次回について
 次回は2003年3月27日(木)18:00から大阪消防局6F階会議室(いつもと違うので注意してください)で開催する。発表は大阪市大院生の生田さんにお願いする。

第4回 都市防災研究会 2003年1月27日(月) 18:00〜21:00(大阪市消防局会議室) 記録 樋本

参加者: 田中、宮野、大西、大窪、北後、
       草部、増田、板田、小泉、土橋、
        生田、吉田、崔、福本、中尾、樋本
資料:4−1 地震火災から木造都市を守る環境防災水利整備に関する研究開発
     4−2 第3回議事録

「地震火災から木造都市を守る環境防災水利整備に関する研究開発」について
<報告:大窪委員>
1)恵まれた自然水利を活用し、伝統的な木造都市を守る「環境防災水利」を整備する必要がある。
2)各地の消防水利の事例調査結果が紹介され、それらをデータベース化した水利整備の指針が示された。
3)地震時の京都市の被害想定結果が示された。結果より、公設消防力の及ばない地域があることが想定された。しかし、堀川を水利として活用することで、その範囲は小さく抑えられる可能性があることも示された。
4)京都市内の(a)大報恩寺、(b)産寧坂地区、(c)二条城、を対象として、地域ごとの水利特性を考慮したケーススタディーの結果が報告された。また、これを通じて策定された、水利整備の計画支援システムが紹介された。
5)今後の課題として、次の点について言及された:(a)計画の実現に向けた制度・行政的な調整、(b)被害評価手法の更新、(c)誰にでも使える水利設備の開発、(d)限られた水源を有効に利用できる消火技術の開発

<議論>
1)施策としての実現性を増すには、防災を単一の目的とするのではなく、環境や景観といった面からも総合的に捉える必要がある。
2)市全域をカバーするような規模の大きな計画だけでなく、地域レベルの水源も有効である。例えば、防火水槽を各所に設置するだけでも、住民の防災意識は喚起される。
3)水利は日常的に使用され、常に存在を認識されている必要がある。
4)消防用に水路を整備することで得られる安全性と、水害をもたらすかもしてない危険性をどのように両立させるのか課題が残る。それに伴う、行政の管理責任の問題も解決する必要がある。市民が主体的に参加し、行政はそれを補助する仕組みを作って
いくべき。
5)「文化財は絶対に燃やさない。一般の市街地の被害はある程度許容する。」、というように、重要性・必要性に応じて防火戦略に幅を持たすことも必要なのではないか。
6)新たに機能を設計するだけでなく、上水道や地下鉄といった既存のインフラに貯水機能を持たせ、非常時に消防水利として活用することも可能なのではないか。
7)初期費用だけでなく、維持・管理も含めた費用対効果を考慮して計画を立案する必要がある。
8)消防水利を整備した後のマネージメントも視野に入れるべきである。火災は地震直後に起こるとは限らない。(出火後に使用するのか?予防的に注水するのか?)

次回について
次回は、2003年2月24日(月)18:00から、大阪市消防局7階会議室で開催する。発表は京大院生中尾さんにお願いする。

第3回 都市防災研究会 2002−12−9(月) 18:00〜21:00(大阪市消防局会議室) 記録 土橋

参加者 田中、北後、宮野、大窪、草部、小泉、土橋
     樋本、中尾、崔、吉田  
資料 3-1 密集市街地や老朽木造住宅地域の分布
    3-2  避難路・避難場所の整備
    3-3  広域避難場所一覧表
    3-4  広域避難場所及び避難路
    3-5  地区レベルの防災まちづくり計画
    3-6 防災性向上重点地区
    3-7 生野区南部地区整備事業概要図
    3-8 第2回議事録(案)

大阪市の防災まちづくり広域計画について
<報告>
草部委員から上記資料をもとに以下の報告があった。
・大阪環状線の内側については、不燃化が進み、延焼のおそれはなくなってきている。しかし、環状線の東側及び南側に老朽木造住宅密集市街地が分布しており、それらの地域で肝心な広域避難場所が少ないことが問題である。
・広域避難場所の指定は、昭和50年代に実施され現在に至る。広域避難場所一覧表の20番以下は、原則である25haに満たない箇所もあるが、震災後に新たに加えられた。
・避難圏域の設定を概ね周辺2〜4km以内としているが、そのくらいの距離を避難してもらわないと対応できないのが現状である。
・防災性向上重点地区の防災まちづくりとして、約1km四方を1つのユニットと考え、その周囲を延焼遮断帯として大きな道や不燃化された沿道とする。延焼遮断帯の内側は、防災拠点を設け、老朽化した建物の建替。オープンスペース・耐火建築物郡で延焼をブロックするといった面的な不燃空間を形成する。狭あい道路の解消といったことを対策項目としている。
<議論>
・広域避難場所が偏る傾向にあるので、他とのネットワークが大切であると思われる。
・広域避難場所の数の問題として、基本的に減少しないが、貨物駅の避難場所では用地の売却等で減少することも考えられる。
・河川敷の広域避難場所については、地震時では、津波の影響は勿論、液状化にも注意する必要がある。
・環状線の東側と南側に位置する防災性向上重点地区では、広域避難場所が少ないうえ、それらの地域が市境に近いことから、大阪市内だけで避難を完結することを考えるだけでなく、他市との連携をもっと考慮していく方がよい。
・大阪市の場合は中間人口(帰宅困難者)が多いので、それらの人をどう避難させるか検討を要する。
・広域避難場所を新たに設置するのは難しい面が多いので、沿道の不燃化を進め延焼防止を図る。いかに区画を整理し道路をつくるかが課題である。

次回について
 2003 年 1 月 27 日(月)18:00 から、大阪市消防局 7 階会議室で開催する。
 内容は、大窪先生より水フォーラムへの発表内容からご報告いただく。
第2回 2002-09-24(火) 18:00〜21:00 (大阪市消防局会議室) 記録 北後
参加者 田中、宮野、草部、大西、増田、板田、小泉、北後
      樋本、中尾、崔         
資料2-1 第1回議事録(案)
   2-2 都市防災研究会(日本建築学会近畿支部都市計画部会)名簿
   2-3 大阪府・防災都市づくり広域計画
   2-4 防災都市づくり広域計画(骨子)について(大阪府)
   2-5 「都市防災実務ハンドブック 地震防災編」に対する意見
   2-6 現況整理図に示した「都市型広域避難地」
   2-7 災害に強いすまいとまちづくり(大阪府、資料編)
   2-8 防災都市づくり計画の計画論上の課題と提案(天田、増田)
   (参考) 災害に強い都市づくりガイドライン(大阪府土木部)
前回議事録の確認及びその後の作業の報告
 前回議事録をを確認した。前回議事録について、先月の近畿支部常議委員会への報告がなされていなかったので、今後なされるように確認する。HPは、形が出来て公開されている。議事録は研究会開催のあと、まとまり次第公開する。メンバーとして京都市消防局あるいは関係当局に参加していただくようにお願いする。
大阪府・防災都市づくり広域計画について
<報告>
増田委員・板田委員から以下の報告があった。
・大阪府の防災都市づくり計画の都市レベルの対策として「災害に強い都市づくりガイドライン」が平成9年に作成され、それ以降、その中で広域避難地の整備について検討を行ってきた。
・広域避難地に関する問題点としては、延焼危険の高い地域ほど空地がなく、広域避難地も少ないので、避難上の問題を深くかかえている。
・避難路の整備については、交通計画との関係もあるので優先順位について言及しにくい状況にある。
・10haの基準に満たないが、既存のストックを組み合わせて広域避難地となりうる場所を「都市型広域避難地」として整備する構想をたてた。
・しかし、12市ヒアリングでは、府独自基準なので、安全性に確信がもてないので、推進に否定的であった。
<議論>
・大阪府の管轄の12市と大阪市は連担しているので、もっと連携の必要があるのではないか。(→次回、大阪市の状況について発表をお願いする。)
・10haの基準の根拠の輻射熱計算は簡単だからで、実際の状況とは違うことを予測している可能性がある。実際は、風がキーポイントとなり、延焼方向と人間の行動特性をふまえた避難システムを考慮する必要がある。
・今後、いろいろなシナリオについて、どのシステムが対応しやすいか、あるいは、防災性能上の効果があるのかについて比較検討する研究課題がある。
・広域避難地を都市計画道路で結ぶのは確かに効果は高いと思われるが、交通量の多い道路について住民から受け入れられないのでなかなか進捗しないのではないか。緑のネットワーク型広域避難地とか、住民の環境へのニーズにかなったイメージが必要ではないか。
次回について
 2002年12月9日(月)18:00から、大阪市消防局7階会議室で開催する。内容は、大阪市の防災としづくり広域計画について、草部委員及び大阪市の関係の方にお願いする。
第1回 2002-09-24(火) 17:30〜21:00 (大阪市消防局会議室) 記録 北後
参加者 田中、宮野、草部、村上、中地、大窪、大西、北後
      土橋、増田、板田、小泉
資料1 都市防災研究会(第1回)議事予定(案)
   2 都市防災研究会 設立趣旨
   3 日本建築学会国際交流基金申請書
   4 都市防災研究会名簿作業用紙
設立趣旨及び研究会の位置づけについて
 資料2の通りの設立趣旨を確認した。当面は、都市計画部会の下に設置した研究会とする。
活動の内容について
 以下の内容について活動を行うこととなった。
1.情報、研究内容の交流・討論(実務及び研究)
2.トピックスについて勉強会
3.実務からの要請のある課題についての議論
4.シンポジウム、見学会などの開催
5.他の関連団体との連携
6.参加呼びかけ、HPなど
 また、例会では、以下の4つのテーマから順次1つ取り上げて、情報、研究交流、勉強会などを行う。
1.緊急対応(被災者の救出・救急、消火・延焼防止、住民避難)
2.被災家屋・市街地などの復旧・復興
3.防火・防災都市計画など
4.伝統や環境に配慮した対策
活動体制について
 座長室崎、副座長田中、幹事北後とする。委嘱状が必要な場合、事務局にお願いする。ホームページも事務局と相談して立ち上げる。
 議事録は、都市計画部会の主査に提出する。
その他
 文化財建築の火災からの保護に関する国際シンポジウム(2003年4月、京都)に協力する。