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都市防災研究会 議事録 (2003年度)

第4回 都市防災公開研究会 議事録

日時:2004年3月1日(月)18:00〜20:00
場所:(財)日本建築総合試験所大阪事務所 第1会議室
参加:15名
記録:樋本圭佑

(1)「同時多発火災に対する最適消防力運用効果の評価」
   (消防活動支援情報システムを用いたケーススタディ)
     東京大学関沢研究室・研究生 川村聡

(2)「安全計画のための煙流動・避難行動連携モデル」
   (大規模建築物および高齢者施設の避難安全計画のあり方に関する検討)
     東京大学関沢研究室・助手 海老原学


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(1)「同時多発火災に対する最適消防力運用効果の評価」

○火災の延焼シミュレーションモデルと、消防力の配置による被害抑止効果評価モデルを連成.消防力運用に関する意思決定の支援・訓練が可能

○モデルの概要:
延焼速度式には東消式(1989)を使用.建物の燃焼継続時間が40分.階数や建築面積から建物構造を決定.延焼の経路は距離等から算
出.非木造は燃焼しない.放水により隣接する建物への延焼がなくなると判断.

○入力データ:
建物→ゼンリン「ZMAP-TOWNU」
道路→三井造船システム技研「道路地図25000関東版」
消防力→各市消防本部より提供された消防署所、消防水利リストと位置図

○出力:
延焼拡大とそれに伴う必要消防力(水量や部隊数)
実際に使用可能な水量や駆けつけ可能な部隊数

○T市を対象としたケーススタディ
消防力を分散させた場合と集中させた場合の結果を比較.同時多発火災(3〜7件).双方とも5点以上の出火に対しては消防力が分
散されて消火がうまくいかないが、消防力を集中した場合には未着手火災が増える.


※質疑:

○火災の時々刻々の性状変化などの情報をフィードバックすることでリアルタイムの消防力運用モデルへの発展も可能なのではないか.消防車に搭載されているGPSと道路情報を連動させれば部隊の移動に関する情報が得られる.

○モデルの検証はどのように行うのか?
難しい問題ではあるが過去の事例を参考に計算結果の検討を行うことは可能ではないか.

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(2)「安全計画のための煙流動・避難行動連携モデル」

○新しい避難性状モデル
・行動能力の異なる不特定多数の避難者
・建築物の内部空間の複雑化(迷路化)
・高齢者等に対する避難戦略(介助避難)
をふまえると従来の安全計画の考え方では対応が不十分.
これらの要因を反映できる新しいモデルの開発.

○避難シミュレーションモデルの構成
空間(内部空間の特性)・人間(避難シナリオ)・火災(火災シナリオ)の3者の関係をモデル化.
各サブモデルを独立した形で開発(オブジェクト指向).
アルゴリズムの複雑さの回避.人間個人の属性の反映.

○超高層建築物の全館避難問題
・避難行動特性の異なる避難者の混在の影響
・建築物高さの影響
・階段室合流制限の影響
・避難誘導の効果

○高層建築物の安全計画に対する提言
・在館者全員を地上階まで避難させる考え方を見直す
・階段内が高密度にならないようにする配慮
→ただし,附室での待機時間が長くなるため,附室の安全性の向上の必要性
・階段室内への煙の流入を防ぐ対策の重要性
→対策が適切に奏功しないと,避難行動による扉の開閉等で階段内に薄くとも煙が流入する。
・建物規模にも依存するが適切な避難誘導戦略の設定
(階別時差避難,階別階段利用避難)

○大平面建築物の階避難問題
・通路設定が避難に及ぼす影響
・煙の拡散が避難に及ぼす影響
・水平避難方式が避難に及ぼす影響

○大平面建築物の安全計画に対する提言
・階段利用がバランスよくなるような通路計画
・防煙区画や面積区画の形成,ならびに初期消火・排煙の強化
→区画が形成された場合には,方向感覚を失う可能性もある(かえって,迷路化する)点には配慮が必要
・歩行速度が遅い等の弱者への対応の必要性
→従業員教育の必要性
・水平避難方式は有効となりそうである
→区画へ逃げ込むまでの距離の設定には配慮が必要

○高齢者施設の介助避難問題
・防火設備対策の違いの影響
・居室から直接利用可能なバルコニー設置の影響
・介助者と要介助者の比率の違いの影響
・入所者の初期配置の影響

○高齢者施設の安全計画に対する提言
・平面形態の違いによる防火設備対策の導入を検討
→防火区画が形成された場合に,初期消火が失敗すると早期に介助行動を継続できなくなる可能性がある
・居室から直接利用可能なバルコニーは,入所者の人命安全の確保,介助避難に有効となる
→バルコニーへの在館者の搬出を優先させる戦略も有効となる
・単に介助者数を増やすのではなく,分散介助避難などの戦略の導入が必要
・入所者の初期配置条件も介助避難の効率を上げるのに影響しそうである。


※質疑:

○他者への依存性を考慮できるのであれば、群集パニックなども再現できる可能性がある.

○エレベーターを利用した避難などの新たな課題にも取り組んで、その有効性を評価することも検討してはどうか.

○いくつかある避難者属性のうち避難時間に影響が大きいものは?
歩行速度.ソフト的な対策に比べて、廊下幅を広くするなどのハード的な対策の効果が大きくなる結果が得られた.

○避難モデルを一般の利用に供することは考えないのか?
今は利用環境がユーザフレンドリではないので、IOインターフェース等を整備した後に考える.

その他 次回は4月5日〜9日で調整する。
第3回 都市防災公開研究会 議事録

日時 2004年2月12日(木) 18:00?20:30
場所 ドーンセンター5階 セミナー室1
記録 秋月有紀

参加者 田中哮義、大窪健之、角谷三夫、樋本圭佑、中尾美穂、秋月有紀、北後明彦、雀榮和、樋口大介、鄭軍植、藤本幹也、増田昌彦、板田昌彦、小泉真一郎、越山健治(計15名)

配付資料 12-1報告概要
12-2上水修復地域および各役所修復の年表

【1】内容 公開研究会「震災の復興過程を考える?安政江戸地震の場合について」
講師 国立歴史民族博物館 北原糸子先生
1. 歴史災害について定義を説明され、歴史地震研究の資料的制約を踏まえながら安政江戸地震の概要や被害分布、さらに震災から復興への過程などについて報告された。
2. 歴史災害は、計測機器による観測体制以前の自然災害を対象とし、災害研究(自然科学者)と歴史研究の協同を意義とする。また現在は災害科学と歴史研究の共同作業成果としての災害展示などの新しい動きがある(2003.7.8?9.21の期間に国立歴史民族博物館主催で開催された『ドキュメント災害史1703-2003地震・噴火・津波そして復興展』など)。歴史地震の資料としては「新収日本地震史料」「日本詩人史料」などがあり、また行政史料も多く(近代地震学形成期以来の歴史資料の編纂により作成されたもの)、一般市民の個人日記などの豊富な記録なども資料として活用される。
3. 安政江戸地震は1855年11月11日(安政2年10月2日六四つ時)に発生し、同時に火災発生、翌朝10時に鎮火している。この地震研究の問題点は、地震学的分析(震度推定)や歴史社会学的分析(被害発生)は多いが、復興に関する被害分析が不足している点にある。元禄・安政・関東震災については地震の性質が異なっても地盤の脆弱性により被害は共通している。
4. 安政江戸地震の被害分布は対象によって把握結果が異なる。大名屋敷の被害は任意の届け出(幕府による役人派遣または大名の謁見による確認)により700戸の内の60%について把握されているが(死者2000人)、旗本・御家人の人的被害の記録は家督相続の関係で死亡通知をしたがらない例が存在するなどの問題もあり死者が不明である。町人地では確認されたもののみ算出され(死者7000人)ているが、母数はもっと多いと想定され、被害率は算定できない。これらデータ精度の不均一さは歴史地震研究の資料的制約による。
5. 安政江戸地震では、震災後の最初の1年間に応急的抜本的修復体制をとられた。復興責任者は幕府によって震災2ヶ月後(安政2年12月)任命され翌年12月に解除されている。江戸市中の給水体系(玉川上水、神田上水)の整備と復興については、普請銀・水銀による上水使用料および修繕・管理維持費を復興費用にあて、本管を暫定的に修復した後、末端と本管を交互に修理を組織的に行った。幕府施設の復興は、まず役宅(老中・若年寄・寺社奉行)、火消屋敷、町会所、町奉行所などを早期に実施し、修繕費は無利子で配した(貧しい武士には実質的に返却不要で貸し出した)。また常時発生していた火災における災害マニュアルを適用し、町会所中心に町人への復興救済活動を行った。

【2】議論
(1)一時避難場所は各住戸(屋敷)の庭を利用し、池や用水は火鉢などの火元消火にも利用されていた。
(2)上水は木管が利用され、地中に埋められたが、衛生面で常時修繕を行っていた。その修繕費(普請銀)は武家の石高によって決定されており、武士は町人の分も負担していた。
(3)上水の復旧活動は震災2ヶ月後だが、全く機能不能だったわけではなく、自然流下で上水利用できていた(破損箇所からのもれ水の修理を基本的に行っていた)。
(4)地震火災の延焼が少ないのは、火消し活動が町内や屋敷単位で行われていたことにもよる(防災組織が大名屋敷毎に存在していた)。
(5)都市のハード的な防火対策として、火人の処刑による防火防止の啓蒙、塗り込め倉や瓦屋根に対する補助金制度、穴蔵による財産の保管などがあった。
(6)幕府は「軽い政府」体制をとっており、町内の管理等は町会所中心に行われていたため、復興時にも町会所が活躍した(備蓄米の配給、修繕費の貸し出しなど)。
(7)この震災後に「地震で世直り」という思想が流行った(なまず絵が出回る)但しこの頃ペリー来航などもあり時代の変化が激しい時期でもあったことも起因する。

【3】その他
次回は2004年3月1日(月)18:00?20:00、(財)日本建築総合試験所4階会議室にて、東京大学関沢研究室海老原助手(安全計画のための煙流動・避難行動連携モデル:大規模建築物および高齢者施設の避難安全計画のあり方に関する検討)と川村研究生(同時多発火災に対する最適消防力運用効果の評価:消防活動支援情報システムを用いたケーススタディ)が報告される。

第2回 都市防災公開研究会 議事録

日 時:2003年12月15日
時 間:18:00〜20:30
場 所:京都市景観・まちづくりセンター 第4会議室
参加者:計18名

■講演タイトル「文化財建造物の保存活用と防災対策」
 <講師:文化庁文化財部建造物課長 苅谷 勇雅 氏>

内容の概略:
 1. 文化財建造物の保存活用の概要について
・ 文化財保護制度は、明治4年より開始された。明治30年には「古社寺保存法」が制定され、内務省と宮内庁がそれぞれ行ってきた文化財保護政策が一本化された。
・ 昭和4年には「国法保存法」が制定される。社寺以外にも公共団体や個人が所有する物件についても保存処置を講じることとなる。
・ 昭和25年に「文化財保護法」が制定され、幾度かの改正を経て現在に至る。最近では、平成8年の改正により、「文化財登録制度(建造物)」が導入され、指定に比べてより柔軟な所有権のサポートを実施することが可能となった。
・ 個々の文化財保護に加えて、町並みのような群を保持することを目的として、伝建物群保存地区が市町村により指定される。このような伝建物群保存地区は、現在までに62地区(56市町村)選定されている。
・ 文化財の価値、性能及び安全性を保持するために、2種類の保存修理方がある。
   1.維持修理:屋根の葺きかえ等(約30〜40年周期で実施)
   2.根本修理:一部解体や半解体修理(約100年周期で実施)
 さらに修理には、材料や工法等について在来の仕様とする現状維持から、学術的又は芸術的所産として価値が高かった時期の姿へ復元する復元修理、構造補強や防火設備との連帯等が挙げられる。
 2. 文化財建造物の防災対策について
・ 防火設備の3本柱として、火災報知設備、消火設備、避雷設備があり、火災が発生した場合でも早い段階で消火できるような対策が重要となる。
・ 伝建地区の防災対策としては、面的な防災計画が必要で、かつ、ソフトウェア面での防災対策が特に重要と考えられている。ソフトウェア面の例として、コミュニティーの力(防災計画や避難計画等)が挙げられ、防災対策を考える上で重要な要素の1つである
・ 耐震性能については、各文化財の活用の状況に応じて要求が異なる。通常、文化財も一定の耐震性能が必要とされ、保存修理工事に併せて耐震工事を実施することが多い。
・ 火災や地震の他に、倒木による被害対策や、地滑り対策なども必要となる。

質疑:
・ 京都府の文化財データより、国宝、有形文化財、府や市指定の文化財を比べた場合、府や市指定の文化財の方に重要物が多いように見受けられるが?
→登録有形文化財は、国の指定ではないので所有者の考えによるところが大きい。今後の考え方として、所有者の了解があれば、国及び地方の両方による指定も合って良いという意見もある。
・ 桂離宮など、宮内庁が保護している文化財については指定されないのか?
→宮内庁が保護している文化財については、宮内庁が所持し保存しているので指定しない。宮内庁が法律以上の保存処置をとっている。
・ 文化財の修理方法として、木造の建造物に鉄骨で補強する例があるが、そのような修理で問題はないのか?例えば、町屋は元来柔らかい構造体であるが、鉄骨で補強することで構造を固めることになってしまう。基準法を満足するための対応と考えてよいのか?
→補修方法については難しい問題であり、必ずしもこの方法がベストとは思っていない。ただし、木造建築についての調査研究の結果から、概して構造力が不足していることが判明している。木造での補強となると部材が多くなる欠点があるが、鉄骨ならば最小限の補強ですみ、将来良い補強工法が提案された場合に解体しやすいなど対応がとりやすい。
・ 社寺等の火災(落雷や放火による)について、現状の対策はどのようなものがあるのか?
→防災設備による対策が主である。最近は放火による火災事例が多いが、そのような場合でも、すぐに消火できることが大切であることから、感知器やスプリンクラー等の設備の充実を図っている。防犯設備の補強も考えられるが、維持管理の面からも積極的な対策としては考えていない。
・ 緩和条例が急に制定されることがあるが、国交省と文化庁との関係は?
→緩和処置は、内閣部(都市再生本部)内の研究会の結果から決定されている。
・ 国交省が景観保全に力を入れているが、地滑り対策等は文化庁が実施しているのか?
→文化庁で対応しており、件数は年に1,2件程度。基本的には各市町村が保全地区を指定する。それに対して国交省が補助金を出すかどうかは現在未定である。
・ 「みんなで文化財を守る」ということで、地域住民が文化財を保護することはわかるが、例えば観光客の様な人にも要求するのか?
→最近までは、地元の人々と文化財とのリンクすら少なかったのが現状である。観光客は防災面においては負荷となるので、具体的にどうリンクさせるかは未定である。
・ 地震火災の様な最悪の場合を想定して防火対策を練っているのか?
→防火水槽に耐震設備を設ける例はあるが、放水銃のような設備までは備わっていない。また、文化財の集中している地域では、他の場所に比べて防火性能を高める等の対策が講じられている。
・ 火災事例で、防火設備が機能しなかった例があったが、その原因分析を行い、今後の対策として具体的にきめられたことはあるのか?
→一定の分析は実施されるが、過去の事例を全てマニュアル化しているわけではない。原因分析は必要と考えている。
・ 伝建地区では、防火対策については緩和されているが、構造について緩和されていないのは何故か?
→個別の文化財とは異なり、町並みという外観を守るためには、最低限どれくらいの性能が必要であるかを考慮した結果であると考えられる。
・ コミュニティーの力が有る程度期待できる状態なので、防火は緩和されるが、建物としての構造はそうはいかないということではないか?
→現実的な効果からは推測できるが、法令面から考慮すると違うと思う。
・ 「みんなで文化財を守る」というソフト面での具体策は?
→防災設備と人間の動作(例えばコミュニティーの力)とを1つのシステムとして考えている。その人間の動作部分を強化することになる。

■次回について
日時:未定
場所:大阪市消防局鶴見消防署 市民相談室
内容:未定

第1回 都市防災公開研究会 議事録

日時:2003年11月6日(木)17:00〜20:00
場所:ドーンセンター(大阪府女性総合センター) セミナー室2
参加:30名

内容:(1)「京都市の伝統的街区保存と防災」
       〜京都市伝統的景観保全に係る防災上の措置に関する条例〜
       (財)京都市景観・まちづくりセンター事務局次長 平家直美 氏
    (2)「大阪市の住宅政策とまちづくりの方向について」
       〜密集事業、地域特性を考慮した魅力ある居住環境形成等について〜
       大阪市住宅局企画部住宅政策課長 酒井裕一 氏

(1)「京都市の伝統的街区保存と防災」
   〜京都市伝統的景観保全に係る防災上の措置に関する条例〜
   (財)京都市景観・まちづくりセンター事務局次長 平家直美 氏

(内容)
1.「京都市伝統的景観保全に係る防災上の措置に関する条例」の概要
・ 2万8千件残る京町屋は年に1000件のペースで減少している。
・ 面的な対策を行わなければならない。
・ 規定を緩和するのではなく、準防火地域をはずして22条区域を強化するという考え方。
 景観に配慮した観点
  外壁:見える部分は土壁等でも可とし、その他の部分は準防火地域の規定とした。
  軒裏:不燃材料の下張りがあれば化粧張りを可能とした。
  開口:見える部分は木製建具・格子を可能とする。(ただし網入りガラス等であること)
 建築に配慮した観点
  準防火+αで強化する
・ 3階からの避難が行えるように、仕上げを準不燃材料とする。
・ 出火発見から初期消火が迅速に行われるように、火災報知器の設置。
2.新防火条例の仕組み
  適用地域について
     歴史的景観保全地区などで、地区の自主的な防火に対する取り組みが充実している地区。
  しくみ
・ 防火条例自体は、緩和規定ではない。
・ 防火条例の規定に基づき都市計画審議会の承認を得て「伝統的景観保全地区」に指定。
・ 指定と同時に準防火地域等を解除(認定建築物のみ。他は準防火と同じ基準)
  適用区域
     祇園町南側地区(H15年2月28日指定)

(質疑)
● 新築について(伝統的な意匠で作ろうとするもの)は認定できるのか?
  →祇園は建築物の形式が決まっているため、それを満たせば認定建築物になる。そもそも新築が少ない場所ではある。
● ソフトでハードをまかなうという考え方は強引ではないか?伝建以外でもいけるのか?悪意で申請された場合は?
  →理屈上は他の地域も認められる。しかし、歴史的景観保全地区をベースにしてその上に伝統的景観保全地区をかけて準防火を外しているので、困難である。
● 補助金について
  →都市景観課が形式に沿った補修に関して400〜500万/件。防火に関してはなし。
● 区域内で認定建築物でない住民の反対はなかったのか?
  →今回は地区がまとまっていたため、認定されない人の反対はなかった。

(2)「大阪市の住宅政策とまちづくりの方向について」
  〜密集事業、地域特性を考慮した魅力ある居住環境形成等について〜
  大阪市住宅局企画部住宅政策課長 酒井裕一 氏

(内容)
・ 大阪市は昭和35年までに市街地化が進み、その中でいかに住宅政策を進めるかが課題となっている。
 環状線の内側は明治20年までに市街地化し、きれいに整形された区画が現在まで残るのに対して、環状線の外側には
 多くの老朽住宅が密集している。
 現在の大阪市の人口動向をみると、若年層、中間層の減少が目立ち、都市再生の必要性にせまられている。
・ 現行の住宅施策として、「地域特性に応じた居住魅力の創出」「災害に強い安全・安心のまちづくり」の推進をテーマにおいている。
・ その中で老朽住宅密集市街地の整備は、「民間の自主建替えによる老朽住宅の更新」と
 「公共として必要最小限の投資による面的整備(モデル地区)」を併せて行っていく方針である。
 アクションエリアにおける自主建替えの補助ツールとしては、建替え相談、従前居住者への家賃補助(特に高齢者に対して)、
 建替え建築費補助、アドバイザー派遣などがある。共同建替えを特に手厚く補助している。
 モデル地区は、西成地区、生野区南部地区、福島区北西部地区がある。
・ 生野区南部地区での事業の説明。地区内は、古い木造建物が多く、道路など都市基盤が未整備で、
 公園等のオープンスペースも不足するなど、防災や住環境の面において課題がある。
 また、人口の減少や、高齢化の進展も見られる。
 地区東側は道路が比較的よい状態にあるので民間の建替えを中心とした事業としている。地区西側の特に古い木造住宅が密集し、
 狭い道路などにより防災上の課題の多い区域については、住宅地区改良事業によって、住宅の建替えや緑地、
 道路等の整備を一体的に進めている。
 地区内に従前居住者住宅を建設し、建替え期間中の住民のための居住場所を確保している。
 防災性向上のために整備された身近なオープンスペースは「まちかど広場」と呼ばれ、市民参加のワークショップを通してつくられている。
 現在のところ5ヶ所完成し、維持管理も地元主体で行われている。
・ 歴史的な建物の活用事業としては、HOPEゾーン事業と呼ばれる修景事業がある。
 現在のところ平野郷地区と住吉大社周辺地区が選定されている。
 住民を中心にまちなみガイドラインを策定し、それに準じた建物外部の修復に1軒あたり500万円程度の補助が行われる。
 また中央区空堀地区では、町屋の改修等を目的とした事業が始まっている。
 天神橋六丁目の住まいのミュージアムでは、復元された町屋や木戸門などが展示されている。

(質疑)
・ 住宅地区改良事業地区をどのように選定しているのか
⇒自主的な建替えが困難な地域を対象にしている。他の地区のモデルとなるよう期待している。
・ 道路拡幅の際の幅員は?
⇒道路事業では8〜12m、自主的に建替える際には狭あい道路整備事業により4mまで拡幅する。
・ 戸建住宅の耐震改修の補助金はいくらくらいか?
⇒全体の15.4%か床面積あたり32600円を上限としている。
・ HOPEゾーンの平野郷地区と住吉大社周辺地区はアクションエリアにも入っているが、防災面ではどうなっているのか?
⇒まだまだこれからの状態である。
⇒本来なら防災性の向上が問われるのではないか?
⇒伝統的様式になると、どうしても防災面が弱くなってしまうのが現状で、防災性と修景性の両立を目指している。現在は修景面での補助のみで、構造、防災上の改善には繋がっていない。
⇒修景という事に補助金をだすべきなのか疑問がある。個人の資産に対してそこまでしていいものなのか?本来は個人でやるべきではないか?
⇒まちづくりの気運のある所に限っている。
・ 生野区南部地区について、コミュニティはどうなっているか?新たな入居者が入ってくることで、コミュニティ力の低下の恐れもあるが…
⇒基本的にはコミュニティが発達しているのではないだろうか。まちなみ広場事業への住民参加にともなって、コミュニティが育ってきている。
・ アクションエリアを外れた地域での取り組みはどうなっているのか?それ以外の所でも改善が必要なのは同じではないか?
⇒基盤が整備された地域では、自主的な建替えが可能ではないか。財政面でも限りがあるし面積的にも広大であるため、とりあえずアクションエリアについて進めていくという方針である。
・ これからの大阪市が目指す姿は?(住宅サイドとして)
⇒現在の低い「住む場所」としてのイメージを改善していくこと。住む側のことを考えた施策が必要で、地域特性を考慮した魅力ある居住環境形成を目指す。

第11回 都市防災研究会 議事録

日時:2003年10月2日(木)18:00〜20:30
場所:大阪市消防局鶴見消防署
記録:土橋

参加者(敬称略):田中、北後、大窪、草部、増田、小泉、板田、岡田、角屋、樋本、中尾、生田、吉田、東、油野、難波、土橋

■「江戸の火災と防火対策」について
<報告:京都大学 防災研究所  田中哮義教授>
・当時の建物の特徴や生活習慣について
当時は特に江戸前期では、「火事と喧嘩は江戸の華」といわれたように、大火の事例が多く、火事を防ぐといったことよりはむしろ火事は起きてしまうものと考えられていた。
・江戸の大火は春先や冬場に多くみられ、延焼域も季節風の影響を受けて拡大する傾向にあった。
・当時の消火(火消し)方法は、放水による消火ではなく破壊消火が主であった。
・都市的防火対策として、「明暦の大火」以降は以下のような対策が講じられた。
@江戸総図の製作
A城郭内の武家屋敷の郭外移転
B江戸城付近の寺社移転
C火除け地、広小路、防火堤の設置
D下町の道路拡幅
E避難路としての両国橋の架設
・建物単体での防火対策
@町屋の2階、3階立ての禁止
A屋根の瓦葺き(江戸初期は禁止であったが、後に奨励される)
B蔵造りの奨励

<議論>
・古来よりの木造技術が発達していたことや地震大国であることから、西洋の石造りのような不燃化は考えられていなかったようである。
・土塗りや漆喰を塗るといった防火対策はあってもよさそうである。ただし、コストの面で問題があったのか?
・延焼速度が速かったことや、避難経路の問題があったために、人口が少ない割には火災での死者が多かったようである。「明暦の大火」後は死者の数が段階的に減少しており、防災対策により避難経路が整備されたことが大きな要因のひとつと考えられる。
・さん瓦の登場によって瓦葺きが促進され、防火性能が向上したように、当時は建築技術的に試行錯誤していた段階ではなかったかと推測できる。

■次回について
日時:2003 年 11 月 6 日(月)17:000 〜20:00
場所:ドーンセンター5階 セミナー室2  (地下鉄谷町線天満橋・京阪天満橋下車、1番出口から東へ350m)
内容:公開研究会  北山氏、平家氏に下記内容についてご講演いただく。
「京都市の伝統的街区保存と防災」京都市景観・まちづくりセンター 平家直美 氏
「大阪市の密集市街地整備」大阪市住宅局理事 北山啓三 氏
なお、その次の定例の研究会は、12月4日(木)18:00から鶴見消防署で行うこととなった。発表者は次回までに調整する。

第10回 都市防災研究会 議事録
 
日時:2003年9月2日(火) 18:00〜21:00
場所:大阪市消防局鶴見消防署
記録:樋本

参加者:田中、北後、草部、小泉、増田、板田、越山、近藤、崔、中尾、樋本

資料:10-1 災害復興公営住宅団地コミュニティ調査報告書(要旨)

■「災害復興住宅の現状と個々人の復興意識」について
<報告:人と防災未来センター 越山健治 氏>
@震災後に建てられた復興住宅の現状に関する総括的な調査の概要報告。調査は住民が感じている「復興感」を定量的に示すことを目的に行われた。報告書は兵庫県のホームページからダウンロード可能。(全復興住宅48000戸のうち、27400戸を対象。うち回収された17079戸分。アンケート+聞き取り。)
A居住者の回答を因子分析し、「生活復興感」を表す「生活満足度」、「からだのストレス」、「こころのストレス」、「生活再適応感」の4指標とコミュニティに関する諸要因との関係を分析した結果が報告された。分析の結果明らかとなった事柄のうち、特徴的なものをまとめると次のようになる:
 a)復興住宅の立地条件は「復興感」に影響を及ぼさない(例えば震災前の住居が復興住宅から離れている場合など)。
 b)公的支援者(LSA: Life Support Adviser, SCS: Senior Citizen Supporter)の有無は「復興感」に影響を及ぼさない。逆に、支援者が居ることで「からだのストレス」、「こころのストレス」の値が高くなる。「ストレス」が高いコミュニティに支援者が配されている。
 c)入居申し込み回数の少ない居住者は「生活再適応度」が高く、「ストレス」も少ない。
 d)自宅への訪問者の存在や、被災後の重要他者との出会いは「生活復興感」を高める。
B因子分析の結果を総合的に考察した結果、「くらしに対する姿勢」、「年齢」、「住宅被害」、「重要他者との出会い」などの15の要因が「生活復興感」に大きな影響を与えることが明らかになった。
C団地コミュニティの分析を行った結果、次の事柄が明らかとなった:
 a)団地規模が大きく、郊外の団地の方が活動度が高くなる。規模が大きくなるほど掃除当番などの決まりごとが多くなるのが理由の一つと考えられる。
 b)LSA等の公的支援者がコミュニティづくりに果たす役割は大きい。
その他、復興住宅全般の問題として、
D当初は、公的に約8万戸、民間により約4万戸の住宅が供給されるとの見積もりがなされた。しかし実際には10万戸を超える住宅が供給され、供給過多の状態となった。
E必ずしも震災前と同程度の住宅が建てられ、住民にあてがわれたわけではない。
震災前後の家賃にミスマッチが生じている。

<議論>
@民間により供給される住宅戸数は実際より過小に見積もられていたため、公的に準備する住宅戸数は低く抑えられた可能性がある。効果的な資源配分を考える上でも、妥当な推計手法を整備することは大きな課題。
A復興住宅の立地条件は「復興感」に影響を与えなかった。住居の移転は最初は精神的な負担を伴うものの、移ってしまえば比較的早い段階でなじむことができるのかもしれない。
B公営住宅は維持管理費などの費用が掛かりすぎるが、公営住宅に代替する(例えば分譲住宅の供給)ような行政的手段は存在しないので整備する必要がある。また、公営住宅を民間や居住者に払い下げることも一つの手段となる。
C分析結果によると、行政が「復興感」の向上に直接的に貢献できる事柄は少ない。そこで、待遇の十分でないLSA等へのサポート体制を整えたり、地域活動を活発にさせる仕組みを作るなどの別の支援方策を模索する必要がある。
D良好なコミュニティ活動の形成にはLSA等の外部支援者の役割が大きいことが明らかとなったが、今後はNPO・NGOなどコミュニティ活動を高めるノウハウを持ったグループと連携した支援を強化していく必要がある。

<その他>
次回は、2003年10月2日(木)18:00から、大阪市消防局鶴見消防署4階市民相談室で開催する。発表は、日本における大火の歴史についての報告を田中哮義先生にお願いする。
第9回 都市防災研究会 議事録

日時:2003年7月9日(水) 18:00〜20:40
場所:大阪市消防局鶴見消防署
記録:中尾

参加者:田中、北後、山田、大西、草部、進士、板田、小泉、岡田、柄谷、越山、生田、吉田、崔、寺村、石村、秋月、樋本、中尾


資料:9−1 自然災害に関する認知度及び災害対応力評価―津波中心―、
        津波警報発令時における住民の避難行動に関する調査

■自然災害に関する認知度及び災害対応力評価(津波中心)、津波警報発令時における住民の避難行動に関する調査報告
<報告:樺n域環境防災研究所 山田剛司 氏>
1)危機管理体制や緊急広報システム、津波避難システムの問題点の抽出を目的として、平成10年5月4日に沖縄全域に発表された津波警報を対象としてヒヤリング調査及びアンケート調査を実施したことが報告された。
2)沖縄における過去の津波被害(チリ地震津波と明和の大津波)の被災経験が報告された。
3)休日及び夜間における危機管理体制の問題点―民間に委託した警備員一人で対応しなければならない。
4)広報手段の問題点―広報手段としての無線が完備されていない・無線を使える職員が少ない。
5)広報内容の問題点―逃げるor注意するように伝えるのか・広報内容は受け手によって異なる・当時避難勧告は市長のみ発令。
6)避難行動に関するアンケート調査結果:津波に対する経験の有無―明和体験者:避難、新住民:避難しなかった。
7)避難行動に関するアンケート調査結果:地震の揺れに依存しない場合―避難した:集落(コミュニティーの形成)、避難しなかった:市街地(仕事中での避難不可)。
8)避難行動に関するアンケート調査結果:避難手段―8割近くの住民が車で避難。
9)避難行動に関するアンケート調査結果:高齢者―近所の人は助けてくれないことが多い・徒歩で避難。

<議論>
1)住民の警報の認知度は、地域、利用目的により異なる→地域による特性を考慮した都市計画、地域避難計画が必要。
2)相互扶助が比較的少なかった→高齢者救助システムの導入。
3)明和の大津波後の区画整理→全て同じ大きさの区画・津波の影響を考慮した区画ではない・現在、避難場所までの道路整備の要望が住民から出ている。
4)小学生から行政の職員を含む人々の教育制度の確立。
5)NHKは、気象庁の広報以前にある程度の情報を得ることが出来るが、住民へ広報するのは無理→広報手段の確立。
6)誰か一人が逃げると他の人々も逃げ始める傾向がある→避難を誘導するリーダーをあらかじめ決めておく等の集団心理を考慮した住民避難計画の確立。
7)行政側としては警報及び勧告を出す判断が難しい。
8)国際間の情報ネットワーク→太平洋環帯での津波については、ハワイのセンターを通して各国へ情報が配信される・津波専門家間のネットワークも整備されている。
9)非常食→沖縄では周辺に畑や木々があるため、行政及び市民も非常食は常備していない。
10)避難時の渋滞を防ぐため、避難手段として車ではなく、徒歩で避難することを推進している。
11)観光客への対応策が不充分である。
12)津波を考慮した避難地→常に屋上を登れるようにしておく・鉄筋3階建て以上の公共施設の利用・マンション等の民間施設の利用・津波による死因は打撲が多く、船などは凶器になる可能性があるので考慮する必要がある。
13)津波の高さ○mでは、どんな状況でどんな危険があるのかを聞き手である住民が把握するのは難しい。→津波警報の内容の再検討が必要。

<その他>
次回は、2003年9月2日(火)18:00から、大阪市消防局鶴見消防署4階会議室で開催する。発表は、公営住宅の復興に関する報告を越山さんにお願いする。
第8回 都市防災研究会 議事録

日時:2003年6月4日(水) 18:00〜21:00
場所:大阪市消防局鶴見消防署 市民相談室
記録:生田(市大)

参加者:田中、宮野、北後、大西、大窪、草部、増田、板田、小泉、土橋、尾原 (UBC)、秋月、崔、樋本、中尾、生田、吉田、劉、袁、栗延

資料:8-1 個人の視認能力を考慮した明視性評価法
    8-2 第7回議事録

■個人の視認能力を考慮した明視性評価法に関する報告
〈報告:京都大学防災研究所COE研究員 秋月さん〉
1)今までの経歴と、現在の担当項目について紹介があった。
2)明視性評価構造、明視性評価に関わる5要素について述べ、「京」という8画文字を例に明視三要素の説明があった。
3)明視に関する既往研究および規格について説明があった。現在までの研究では高齢者を群として取り扱い、若年者と比較している程度で個人差に言及されておらず、本研究では「個人の視認能力を考慮した明視性評価法の構築」を主な内容としていると述べた。
4)眼球の構造、視覚の仕組み等の解説の後、本研究では視力を指標とし、若齢者・高齢者の視力の実態を様々な条件下(背景輝度・視距離)で計測したところ、視力の最大値となる条件は個人差に関わらず同じであると述べた。
5)最大視力に対する視力比や視力比を用いた保証視力の予測方法について説明があった。
6)視刺激と人間の視認能力からなる視認性モデル式を作成し、文字寸法補正や色彩の影響を考慮した評価法を本研究で確立したと述べた。
7)本研究で確立された明視性評価法に基づく明視環境の具体的な設計手法について、「視対象条件の把握」「環境条件の把握」「明視性の把握」の順に説明があった。
8)実在空間での標示物の明視性評価とCOE研究課題への適用について説明があった。

〈議論〉
○防災対策として避難用表示物の設計を考える上では、文字の読みやすさだけでなく、ピクトグラムや誘目性効果も重要ではないのか。
○「緑は安全」といったように、色の方がより端的に意味を伝えることが可能で、分かりやすいのではないか。
○分かりにくいピクトグラムもあるので、文字との組み合わせで。
○どこに標識があるのか気づかせる設計も必要。
→標識の背景輝度・輝度対比と大きさが分かれば、どの程度見えるかは評価でき、それは文字でもピクトグラムでも同じである。
→避難誘導等の標識にはまずは視認性を重視すべきで、視認性に対して実在標識に用いられる色は効果はない。色は視認性以外の誘目性等に効果があるが、それは本研究の範囲外である。今後の展開として誘目性効果等についても検討する。
→「現在地はどこか」「どちらに避難すべきか」といった情報を、観光客や高齢者に端的に伝えるためには文字を扱う必要性がある。

〈その他〉
次回は2003年7月9日18:00から、大阪市消防局鶴見消防署市民相談室で開催する。発表は地域環境防災研究所の山田さんにお願いする。(山田さんの都合のよくない場合は、田中先生から地震火災の歴史について報告して頂きます)。
第7回 都市防災研究会 議事録

日時:2003年5月1日(木) 18:00〜21:00
場所:大阪市消防局鶴見消防署
記録:中尾

参加者:田中、宮野、北後、草部、森田、増田、板田、小泉、土橋、生田、吉田、チェ、カン、樋本、中尾

資料:7−1 大阪市消防局鶴見消防署施設紹介パンフレット
    7−2 地震における人体被災計測ダミー開発のための研究に関する報告(第6回)の追加資料
    7−3 韓国地下鉄火災の惨状
    7−4 大邱地下鉄中央路駅平面図
    7−5 大邱地下鉄火災の概要及び問題点
    7−6 地震火災から木造都市を守る環境防災水利整備に関する研究開発(第4回)資料CD
    7−7 第6回議事録

■大阪市消防局鶴見消防署の施設見学
大阪市消防局鶴見消防署の施設見学を行った。ヘリポートスペース、屋内訓練場、体育訓練室、市民相談室、待機室など隊員及び市民の利便性、また緊急時や災害時の迅速かつ安全な対応を考慮した施設であった。

■前回議事録の確認及び追加資料の報告
前回議事録の確認をした。死傷率を1階と2階の各広さ別に表示したもので、1階の死傷率は2階の死傷率のおよそ1.5倍であることが追加報告された。

■大邱地下鉄火災事故に関する報告
<報告:神戸大学 崔さん>
1)大邱地下鉄火災事故の発生日時、発生場所、人命被害、事故駅の周辺状況などの概要について報告された。
2)以下のような事故当時の時間の流れ (a)9時53分35秒:放火により火災発生(b)9時55分:司令室から119通報(c)9時55分30秒:対向車へ注意運転指示(d)9時56分45秒:対向車到着(e)9時58〜59分:司令室と機関士の交信(f)10時10分:事故案内が紹介された。対向車へ、乗客への正しい情報伝達がなされなかった。
3)死亡者と負傷者に分類した被害者分布から、死傷者の約90%が対向車内で被害を受け、地下1階では負傷者のみで、地下2階の改札の外側(プラットホームから見て)で死者が出たことがわかった。
4)実際に事故に遭遇した人が撮った写真など事故当時の現場写真が紹介された。換気口からの煙がひどく、3、4番出口より1、2番出口の煙がひどかった。この時、人命救助が先に行われ、消火活動はその後に行われた。
5)事故以後の現場写真の紹介がされ、避難誘導灯が焼け落ちた様子、南側のスプリンクラーはあまり作動しなかった、防火シャッターのくぐり戸の位置がわかりにくかったことが報告された。事故後の対策として、現場検証が十分に行われていないのに現場を整理したことが大きな問題となっていて、その指示者は不明である。行方不明者の捜索として、携帯電話GPSが有効であったことが報告された。
6)事故から得た教訓として、(a)危機管理対応マニュアルの重要性(b)情報伝達系及び防災訓練の重要性(c)避難誘導設備の位置選定、について言及された。
<議論>
1)避難経路の明確性について?→煙の中での避難誘導が必要である。例)lighit line
2)なぜ人命救助が先に行われたのか?→目の前に助けを求めている人がいる。地下3階の出火地点にはたどり着けない。消火活動は隣の駅からトンネルを通って行われた。
3)日本の地下鉄におけるスプリンクラーの有無?→店舗があるところのみ。必要ないとの判断から消防法による規制もない。感電する恐れがある。
4)消火栓のしようについて→乗客に消火栓の使用を求めるのは無理があるのではないか。駅の職員は使用できるようにしておくべき。いたずら防止の為目立つところに消火栓をおいていないが、今後、配置する位置を検討する必要がある。
5)防火シャッターのくぐり戸の位置が、商店街と地下鉄との段差によりわかりにくかったので、表示をする必要がある。
6)今回の火災事故は、車両内、地下街との防火シャッターによる二重の密室空間での火災事故であり、接続空間の複雑さによる避難の難しさが指摘された。
7)防火シャッターは、商店街側から地下鉄側へ避難することを想定して設置されたものであるが、地上への避難を考慮するべき。
8)南側のスプリンクラーが作動しなかったのは?→消火栓と同じ配管による水不足。100個以上のスプリンクーを一つの水タンクで補うには無理がある。

■電車における火災実験ビデオ(大阪市消防局鶴見消防署)
1)地下鉄車両の下、ガソリンを染み込ませた新聞紙→あまり燃焼しない
2)地下鉄車両内の座席、ガソリンを染み込ませた新聞紙→3分後出火。12分後鎮火し、煙が発生し、座席シートの中まで燻製された状態
3)地下鉄車両内の吊り広告、ライター→60秒弱後鎮火。広告が燃えただけで他への延焼はなかった。

<その他>
次回は、2003年6月4日(水)18:00から、大阪市消防局鶴見消防署4階会議室で開催する。発表は京大COE研究員秋月さんにお願いする。