***春季学術研究会***
美しい集落(沖縄編)−私のフィールドノートから−
2005年6月4日(土) 於:那覇てんぶす館
主旨
フィールドノートは集落の美しい形を記録すると同時に、その形をつくりあげてきた人々の意志と自然と共生する仕組みを解き明かす優れた手法である。そしてまた、フィールドノート自体にフィールドワーカーの思い入れと技量を読み取ることができる。農村計画分野では集落をエリアとするが故に多くのフィールドノートが蓄積されてきた。また近年は、新しい視点のフィールドノートも模索されている。本年の春季学術研究会は、集落研究の宝庫ともいえる沖縄を会場にして、フィールドノートの役割や意義、新しい視点、新しい発見、新しい展開について報告を受ける。さらに、参加者の図面やフィールドノートを持ちより意見を交換する。
それに基づき集落空間の魅力を記述する方法について共通の認識を深めたい。
司会:前田真子 (奈良女子大学)
主旨説明/伊藤庸一(日本工業大学)
農村計画分野では集落をエリアとするがゆえに多くのフィールドノートが蓄積されてきた。また近年は、新しい視点のフィールドノートも模索されている。本年の春季学術研究会は、集落研究の宝庫ともいえる沖縄を会場にして、フィールドノートの役割や意義、新しい視点、新しい発見、新しい展開について報告を受ける。さらに、参加者の図面やフィールドノートを持ちより意見を交換する。それに基づき集落空間の魅力を記述する方法について共通の認識を深めたい。
研究発表/
◇ 「集落風水土のフィールドワーク 竹富島調査を中心に」 坂本淳二(広島国際大学)
風水論理より形成される文化景観事例として竹富島調査をとりあげ、地理学的視点を組み入れながら、宅地におけるヒンプンと門及び主屋との関係の特徴を捉えた分析結果が報告された。地形分類と集落立地との対応をみる等、古くて新しい視点の必要性が紹介された。
◇「みんなでつくるフィールドノート 集落マップづくり」 清水 肇(琉球大学)
糸満市、及び南風原町における集落マップづくりを事例に、その地域にかかわる様々な立場の人々の共通語的ツールとしての地図と図面、その元となるフィールドノートの有効性が解説された。さらに、空間の記録のみならず、アクティビテをも記録することで、空間変化に加え生活行為の変化の実証の意義等が報告された。
◇「思考によってつくりなおす・フィールドワークのフィールドノート」 平田隆行(和歌山大)
フィリピンで長期間のフィールドワークを行った経験から、手動実測からハンディGPSを活用した実測データの地図化手法、家系・儀礼等インタビュー調査からの文化人類学的家族社会分析、さらにそのデータベース化手法等が報告された。スキルとして、手段としてのフィールドワーク、研究方法としてのフィールドワーク、そしてそのフィールドノートの意義が解説された。
討論/
坂本氏の発表の「ヒンプンと門及び主屋との関係」について、沖縄門中の意識と韓国風水との関係、仏壇との関係、微地形・方位と宅地の形状や集落との関係、宅地の中の軸線の考え方等について意見が交わされた。
清水氏の発表の「戦後史の記述」について、沖縄の現代的発展の中で記述を残していくことは非常に重要であるという意見が出された。
平田氏の発表の「地域住民がその生活を楽しめていないならば開発され変化していくこともやむなし」という点について、どのような状態でも存在価値があることに変わりなく、我々が判断すべきではないかもしれないという意見が出された。
また、どこかに着目してフィールドワークしていくことにより、空間原理の提示につながっていくことを目指すもの、その記述手段がフィールドノートである。フィールドワークを行い、フィールドノートを残さなければ、価値がはっきりしない様々な小さなものなどが、時代の変化におしつぶされ忘れられていくのではないか。住民が伝統を維持しきれず変化していくものも多い中で、今現在存在しているものを記述し、認めていくことがフィールドノートであるなど、フィールドノートの意義についての意見交換が行われた。さらに、フィールドノートには様々な手法(GPS・GISを活用した記述手法と表現方法,データベース化,平田氏話題提供)があり得、それぞれの地域や時代、目的に合う手法で記述していくべきである。フィールドノートの共通語的ツールとしての機能(清水氏話題提供)は、地域で継続して暮らしている人との情報の共有という意味でも非常に重要な場合がある。地域住民が共通に理解できる地図や図面を発端として、空間的変遷を明らかにすることも可能である、といったフィールドノートの手法などに関する意見も出された。
私のフィールドノート/
参加者が持ち寄った沖縄集落のフィールドノート事例の紹介と説明が行われた。渥美君,宮寺君(日本工業大学):住民が思う中心地の記述、内田氏(山口大学):場所に対する地域との意識の共有、重村氏(神戸大):内と外との関係等の記述。
また、各自、研究会に参加しての感想や意見を述べた。参加者各自がフィールドノートについて考えるとともに、全体を通して活発な議論ができ、有意義な研究会となった。
*以上、前田氏の議事録、伊藤委員長のHPを参考
http://leo.nit.ac.jp/~ito/aij/nouson/349okinawa.htm
6月5日(日) フィールドノート実践編
備瀬集落 今帰仁村公民館
名護市庁舎 久護家
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