■2006大会 農村計画部門学術講演会「一押し」講演■

 2006年度日本建築学会大会(神奈川)農村計画部門学術講演会(9/1-3)においては、97題の発表が行われ、各セッションでは活発な意見交換が行われました。各セッション司会者による講評と一押し講演として推薦された16件を以下に掲載いたします。


『一押し』講演 (16件


講演番号:6002 金俊豪
「大規模地震災害による住民移転が行われた中山間集落の再生に向けた実態と課題の考察」
 
  
今後の自然災害・復旧復興をふまえた農村計画のあり方として新規性のがあると評価した。
 特に,集落からの撤退後の都市農村交流等を取り入れた,土地利用管理の可能性等のあり方が評価できた。


講演番号:6006 小林智哉(日本大)
「災害時から復興期における自治的組織の地域社会対応能力と住民の依存意識に関する考察」

 
  
自治組織に注目して、自然災害期での活動・役割の変化、その組織に対する被災住民の依存意識を詳細にまとめて、
 農山村地域における自治組織の役割と重要性を明らかにしている。


講演番号:6025 新山奈緒(和歌山大)
「和歌山市雑賀崎集落における路地形態とコミュニティ単位の関係性」

 
  本梗概は、和歌山県の1漁村集落における路地形態の特徴について、”丁”と呼ばれるコミュニティ単位との関係性から論じたものである。
 空間構成の把握とともに、ヒアリング調査結果に基づくコミュニティ単位に関する考察を行っており、結論に説得力が感じられたので一押しする


講演番号:6031 浅野正裕(フリー)
「疎住地域における地域生活交通に関する研究」
 
  6029も新しい視点で推薦したかったが、若手への奨励という主旨から、また市町村合併が進み中山間地域の公共交通の再編が課題と
  なるなかで時宜を得た課題であることから推薦した。


☆講演番号:6038 不破正仁(筑波大)
「つくば市の農家における伝統的屋敷林の樹木構成パターン」

  独創的な着眼点と説得力のある方法論を備えている点。すなわり、つくば市の農村住居の屋敷構えについて、
  明治期の銅版画と現状とを比較することにより、通時的な分析をしている。
  そして、これにより、屋敷構えの要素の失われたものと守られてきたものを把握し、歴史的に価値のある景観資源を明らかにしている。


☆講演番号6044 重山翔(琉球大) 
「南風原町の集落における綱引き行事に使われる空間の実態」

  とくに研究の着眼点はおもしろく、またとてもわかりやすいプレゼンテーションをしていただいたため、ご推薦いたします。


☆講演番号6047 中田悟(武蔵工業大)
「近畿地方2府4県における古民家の転用に関する研究その2」


  近畿地方の具体事例を検討し、古民家の公共性に着目して利活用に関する詳細な調査結果をまとめたものである。
 今後も継続されることが望まれる。6046と連続している。


☆講演番号:6052-6055 鴨川木綿子,殿井直,大槻政洋,計文浩(北海道大)
「北海道農村住宅の変容課程に関する研究 その2〜5」

  1950年に始まる半世紀を超えた調査研究プロジェクトの一環であり、過去に遡った豊富な資料にもとづいた報告は基調である。
  断面的な分析が欠落しているという指摘があったが、分析・整理の仕方に改善の余地はあるが、貴重な報告である。


☆講演番号:6057-6058 六槍嘉人,齊藤利佳(足利工大)
「農産物非系統出荷のための拠点施設に関する研究1,2」

  用語の定義など課題はあるものの、地域活性化に寄与し得る農産物流通と直売施設について、
  経路や運営状況について詳細に調査し、有意義な示唆を得た報告であった。


☆講演番号:6072 市川尚紀(近畿大)
「インドネシア・テンペ湖における水位変化に対応し快適な微気候つくりだす家屋の移動とつくりの研究」

  先進的なテーマとはいえないが、インドネシアにおける水上生活居住の様々な形態が報告され、研究への意欲や情熱が伝わった。
  発表時間が短かったが、すぐれたプレゼンテーションがなされ、完成度も高かったと評価できる。
  しかしながら、快適な微気候をつくり出しているとされる家屋にビニールカーペットが敷かれるなど、
  体感的に良く分からない面もあり、更なる追求の必要性が感じられた。


☆講演番号:6076 門永琢(長谷工コーポレーション)
「雑賀崎における住居変容と親族ネットワークに着目した集落持続性」

  和歌山市雑賀崎を対象に、居住者のライフサイクルや集落内に散在する親族とのネットワークという点に着目して、
  日常生活から発生する様々な住要求がどのように住居形成に影響してきたかを分析した研究である。
  詳細なヒアリング調査から得られた情報を手際よくまとめ、家族の変遷と住居変容や、親族による相互扶助の実態に
  触れつつ有用な知見を導いており、“一押し講演”に相応しいものと考えられる。


☆講演番号:6086 清水肇(琉球大)
「那覇市首里金武地区における細街路整備の経緯と意義」

  沖縄県那覇市の景観保全地区における、細街路において石垣を保全しつつ、インフラを整備するための
  都市計画決定がなされた事例が紹介された。今後、都市計画区域内での農村的景観を保全しうる計画事例であり、
  多いに参考になる。是非、より多くのメディアに掲載して、普及すべき事例であると考える。


☆講演番号:6094 山田悟史(日本大)
「フラクタル次元解析を用いた景観認知による可視化モデルの類型的特性」

 ・複雑系理論の観点から集落景観と認知の構造を類型化した新規的・精力的な試み。
 ・フラクタル次元が高いということはどういうことを意味するか。
 ・圏域図示法によるアンケート調査結果が認知の内容だとしてよいか。これは主に分かりやすさを問うものになっていないか。多義性は何から出てくるか。
 ・そうだとすれば、山と海に囲まれた漁村のような事例はよいが、平坦でランドマークの少ない地域に対しては有効に使えそうか?
 ・要するに、この結果でもっと具体的に地域を説明できるとなお良かった。とはいえ、十分に高度な研究で脱帽


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