■2007年度大会 農村計画部門学術講演会「一押し」講演■

【各セッション講評】


 ):司会者,下線:講評者


中越地震・復興>
6001-6006 (徳田光弘・水ノ江秀子)

災害と防災>
6007-6010
 (金俊豪・羽賀義之)

地域環境の特性>
6011-6017
 (澤田雅浩・佐藤義則)


景観の構成要素>
6018-6023 (栗原伸治・菊池迪恵)

  「景観の構成要素」のセッションで、6題中5題の発表がおこなわれた。
 土蔵、伝統的民家、水路、生垣景観、心象風景、神社という構成要素に着目し、
 それらに対して独自の視点から考察をすすめた研究発表で、いずれも興味深かった。
 が、セッション名があらわすとおり、景観を構成する要素に着目しているからこそ、
 今後、それらの構成要素をいかに景観全体のなかへと位置づけてゆくのか、
 そしていかにひろく景観(計画)論へと発展させてゆくのかが気になった。


<地域資源の変還>
6024-6028 (宮川智子・本塚智貴)

  民家の周辺に存在する屋敷林や融雪池、里山などの屋外空間に関する発表が行われた。
 これらは、気候や風土に対応し、考え出された工夫によるものであり、文化的景観の見地からは
 景観構成要素として各地域の特徴を表す存在として今後も評価が高まることが予測される。



集落の空間構成> 
6029-6034 (藤川昌樹・不破正仁)

  本セッションでは、阿蘇カルデラ内の農村集落における葬送儀礼に関する研究2編、
  伊根沿岸域集落の空間特性に関する研究4編の計6編の報告が行われた。いずれの報告に
  関しても多くの質問が出され、議論は活発であった。若い研究者による報告が多く、
  今後のこの分野の展開が大いに期待される。



集落の景観(1)> 
6035-6039 (秋元一秀・中村美奈子)

   6035と6036は阿蘇郡南小国町の景観を論ずるもので現存する蔵に着目しているが、
  その特徴の報告だけに終わっている。6037は滋賀県高島市海津の併走する二本の道に沿った
  集落の成立とそれぞれの特徴を論じている。6039は継続研究で、集落景観における視認性と
  環境認知の関係からイメージの構造を論じている。今後、類型化されたタイプと自らの実際の
  認知との比較・考察を通し、更なる展開を期待する。



<集落の景観(2)>
6040-6042 (川口友子・山内要)


  本セッションでは、集落景観の特色と変化を土地利用から論じたもの(2編)、
 文化的景観保全の評価基準について現状の建物の特色から考察したもの、などが発表された。
 いずれの結論でも図表や写真に重きが置かれていたので,それらのボリュームを考えると,
 ポスターの大きさにもう少しゆとりがあってもいいのではないかと感じた。


<地域資源の活用>
6043-6046 (神吉紀世子・金谷真由)

  有志の主体によって実働されている施設・建築物の活用事例の3報告が発表された。
  一定の用途を想定してつくられた地域施設の柔軟な利活用に関する研究が6043、6044、
  空き家民家の活用を通じた諸主体の連携や地域活性化の試みについての報告が6045である。



<地域福祉>
6047-6050 (乾康代・鈴木克彦)

   地域資源を活かした健康保養型ツーリズム、地域包括支援センター、障害者の農業経営への
  受け入れ支援に関する興味深い4題が報告された。しかし残念ながら、朝一番ということで、
  最初の講演2題を聞いたのは司会だけという寂しい状況で始まった。そのため、質疑応答も1、2題の
  講演に対する質疑が会場からは出てこず、3題目でようやく出るという状況であった。
  朝一番の講演への参加者が集まるような呼びかけがほしい。



<都市近郊の変容>
6051-6054 (山下仁・北澤大祐)

    都市近郊農村の人口増加と住宅外観の変容に関するもの2編、土地区画整理事業による空間変容に
  関するもの1編、住民の就業構造に関するもの1編の計4編の発表があった。
  6051、6052に関しては、住宅外観の変容に対する供給側の要因、既存の景観の概要、住宅(屋敷)
  規模の影響について、6053に関しては、区画整理事業による地域の農業経営への影響、大規模農道開発
  による変容との相違などについて質問があり、質疑が行われた。

木造建築の活用 齋藤雪彦,安田賢吾木造建築の活用>
6055-6059 (山下仁・北澤大祐) (齋藤雪彦・安田賢吾)

<屋敷構成の変容>
6060-6064 (五十嵐由利子・中野将人)

   本セッションでは、北海道農村住宅の変容を、1950年から2005年までの過去4時点における
  調査結果から分析されている一連の研究報告で、昨年に引き続き報告されたものである。
  5編の構成は、昨年度、登録の手違いから報告されなかったその1(目的と概要)と、屋敷の構成要素、
  屋敷の空間構成、景観特性、屋敷構えなどの側面から分析したその6からの4編の報告である。



<居住環境>
6065-6070 (森下満・大槻政洋)

   日本の農山漁村地域は、過疎化、超高齢化が進み、往々にしてマイナスイメージで捉えられがち
  であるが、果たして本当にそうなのか。視点を転じると、むしろ人間の生活の豊かさへの可能性を
  秘めているのではないか。本セッションの各講演梗概のテーマである民家内祭儀空間、地域の特徴
  ある住宅様式、地震被災後の生活再建、高齢過疎地域の福祉住環境システム、中山間地域の住環境整備は、
  そういう可能性へのさまざまな視点を提供している。



<地域連携とネットワーク>
6071-6076 (三橋伸夫・渡辺恭兵)

   河原(川原)町の全国的分布と各々の地域的機能特性、都市内水路の利用・管理主体の関係、
  河川河口域のNPO、行政等の連携・協働、および高密度漁村空間の住まいと暮らし、という4テーマ、
  6編の発表から成るセッションである。水(川・水路・海)と生活という共通テーマをもつが、
  内容は多彩であり、研究方法や研究アプローチも多様である。農村計画という観点から共通テーマでの
  討論を行うことが難しかった。



都市農村交流とツーリズム>
6077-6083 (平田隆行・多賀麻衣子)


   大きく2つのテーマに分けることが出来る。ひとつは世界遺産地区で、文化遺産と観光資源と
  住民の生活をどのようにバランスをとるべきか、であった。(6077,6083)これは「超有名観光地と
  なってしまった農村」がかかえているマネジメントの難しさを物語っている。もうひとつは
  「観光地ではない農村」での宿泊に関するものである。(6078,6079,6080,6081) マス・ツーリズムと
  一線を画する農村ツーリズムではあるものの、一見の都市民に来てもらい泊まってもらうためには
  一定の品質基準が必要ではないか、という提起であった。なお、すべての発表に共通するキーワード
  として「住民主体」と「持続性」が挙げられる。農村ツーリズムは住民が運営するのだ、とあらためて
  確認すると同時に、また動き始めた農村ツーリズムをどうすれば持続的なものに出来るのか、
  が大きな課題であることがわかった。

市町村合併と集落再編>
6084-6086 (川嶋雅章・小峯裕)

<集落中山間地域の維持管理システム>
6087-6092 (花村麻梨子・杉藤森将弘)

   農山漁村へのIターンに関する連報が3本、市町村合併による地域構造の変化に関する報告が1本、
  集落再生に関する連報2本が発表された。農産漁村を統計的な視点から捉えた研究と、
  事例を丁寧に分析した研究でバランスよく成り立っており、深く広く議論を掘り下げることが
  可能なセッションだったと思う。ただ、スケジュール的にセッションの事前にパワーポイントを
  パソコンに入れる準備が万端に行うことが難しく、時間が損なわれ、議論を十分に行える時間が
  少なかったことが残念に思う。それぞれ、今後の研究の発展が期待される内容であった。



コミュニティ再生と地域連携>

6093-6097 (斎尾直子・杉田昌也)

    6093-95については、行政区域の再編と従来からコミュニティ構成単位との関係、
  その影響、変容に関する事例研究、6096はコミュニティ活動人材が不足する中山間地域に
  おける広域的地域マネージメント手法、6097まちづくりへの市民参加意識が高まる時代に
  おける市民憲章を対象としたものである。
市町村合併の動きが収まりつつあり、
  自治体域が広域化する時代に、コミュニティ範域と変容と再生の動きは重要なテーマであり、
  今後の継続的な研究の発展がのぞまれる分野と捉えられる。



海外の集落研究>
6098-6103 (伴丈正志・八木健太郎)

以上


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